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第10話 町に入る

誤字報告ありがとうございます。



その夜は野宿。野宿と言ってもボルトなんかはいつも通りなんだろうし、シルビアはオレが宿泊タイプに(カスタム)(チェンジ)するから快適な夜を過ごしてるよ。

快適と言えばオレに乗ってるとほとんど揺れないらしい。もうオレって言っちゃてるわ。

シルビアが言ってたけど、あまりに揺れないから動いてることがたまに分からなくなると言ってた。

自分ちの馬車とは比べ物にならないくらい快適だって言ってた。

自分ちに馬車があるんすね、お嬢様。さすがっす。


移動はいいんだけど問題はトイレと風呂なんだよな。トイレは馬車から余り離れないようにして隠れてやってもらっている。こればっかりは人間の自然現象だ仕方が無い。オレは目を閉じれないが気分は目隠しをしてやってる。ボルトには辺りに気を配ってもらってる。オレの影の中から周囲の気配に集中してたから【気配感知】と【魔力感知】を取得してたもんね。それはシルビアも同じで、ずっと馬車から魔物の気配を伺ってるから【感知】を取得しちゃったよ。


風呂はどうにもならない。大甕に水を出してボルトかシルビアに火魔法でお湯にしてもらえばできなくはないが、もう少し辛抱してもらおう。町には入れれば宿があるだろうから、そこでゆっくり入ればいいだろう。


そうなんだ、町なんだよ。ボルトを従者にしてから5日目、町が見えた。


出発した時の心配点はこうだった。

ボルトが虎の魔物でデカすぎる。シルビアが小さい子供で1人だという事。


フフフフ、拙者も5日間遊んでいた訳ではござらぬでござるのござる。

難しいわ武士言葉。ホント遊んでいた訳では無いのだよ。


今はいくつかパターンが選べるのでどれにしようかと迷ってるぐらいだ。

まず【御者】。ずっと出し続けた事で今はレベルも上がり見た目は人間と変わらなくなった。【御者】がレベルがMAXになって【馬車役】に進化したからだと思う。ずっと出し入れしてるからね。


御者台から30メートルまでなら離れられる。言葉は挨拶と返事しか話せない。ホントどういう設定なんだか分からないが御者を馬車から離して目線はオレの画面でリンクして見れる。っていうかオレが見ながら操作しないといけない。自分では行動できない使えない奴だが【冒険者カード】を見せれば町に入れるかもしれない。もう少し時間があれば言葉のパターンも増えたもしれないな。これが1つ目。ただ、この【冒険者カード】が怪しい。本物を見たわけでは無いし、レベルアップボーナスで普通出すか? オレの中では偽物疑惑が消えない。


2つ目は【召喚魔法】の『使い』。これが結構使えた。レベル1ではネズミの魔物だったが2ではネコの魔物、3で小型犬系、4で大型犬、5が猿系、6は小鳥系、7は大型鳥系、8は岩場を得意とする大型ネコ系、9がイルカみたいな水系魔物、なんと10が人型だったんだ。もちろん召喚だから用事が終われば消える。でも町の入門という命令で召喚すれば入門までは消えることは無いんだろう。こいつともリンクは出来るが操作は出来なかった。ただ、初めに細かい命令を与えればそういう行動が取れる。今回は初めての入門だから、どういう命令をしていいかわからない。

もちろん、戦闘なんかはできないよ、本当にお使い。伝言役とか偵察だな。


3つ目、これが最後の選択肢だ。ボルトが召喚する雷系魔物に人型に変身できる奴がいた。ヴィネという魔物でライオンに似た2メートルぐらいの魔物なんだが女の人型に変身出来た。その時は変身をしろという命令で帰って行ったが、名付けをするか変身して町に入る手伝いをしろと命令すればできそうだ。名付けに関しては『馬車の従者』という称号の名前さえ我慢すれば中身は良い物だという事はボルトで実証済み。


後は引く魔物だ。これをボルトを小さくした奴で行くか、ボルトが召喚した奴で行くか。まだ迷ってる。雷系で鹿型の魔物がいるというのでそれも考えたが、それこそ名付けをしないと町に入った途端消えてしまう。召喚は命令が遂行されなくても使用したMPが少なければ1時間も経たずに消えてしまうらしい。多く込めても最大1日、一晩で町から出ないとオレは町で放置になってしまう。その時にまた召喚すればいいって? ボルトが出て来なければ召喚できませんねー、町中で急に現れる虎型魔物、人間の敵認定される可能性が高いよね。


考えに考えた結果、1番にしようと思う。ダメなら別の町に行ってまた考えればいい。1番ダメそうだけど、行ければ今後が楽になる。なので、牽引役もボルト自身が小さくなって引っ張ってもらう。【冒険者カード】も偽物なら早めに分かった方がいい。

【馬車役】なら消せばいいし、少しだけ離れた所から行かせて幌馬車バージョンで待機してダメな時は荷馬車にカスタムチェンジして御者を消す。ボルトに雷系鹿型のフールという魔物を呼んでもらって引っ張ってもらおう。オレの【使い】で召喚できる奴は力仕事は出来ないんだ、伝令程度。ホント使えないんですよー、上げて落とすんですよー、ナビ子さんってSだよな絶対。


対策も万全で町に近寄って行く。

思った通り、門兵達がオレ達を発見して動きが活発になって行く。

オレも【ズーム】で確認する。ズームアウトで全体像を確認して、動きの中心にズームインして行く。すべての門兵に『人型LVなんとか』と付いている。大体レベルは12~20だった。

1番高いレベルのおっさんがここのリーダーかもな。


幌馬車のオレがシルビアを幌の荷台に隠したまま2メートル超えのボルトに引っ張られて更に町に近づく、もちろんゆっくりと。【馬車役】は出している。


門兵がズラズラーっと出て来た。中央にはLV20のおっさん。やっぱりこの門兵達のリーダーのようだ。


おー!? もう目立っちゃってるよ、遠くに馬車を置いて行く作戦終了ー。

ここで引き返すと怪しまれそうだから、もう行くしかない。


門兵まで30メートルぐらいまで近づいた時、中央のおっさんが大声で話し掛けて来た。

「その馬車! そこで止まれー!」

ボルトに止まるよう指示してオレは止まった。


「よーし、よく躾てあるようだ、お前はこの町に入る気か!」

「はい。」

「そいつは虎は魔物のようだがお前の従魔か!」

「はい。」

「人を襲う事は無いのか!」

「はい。」

「従魔証はあるのか。」

「・・・・。」

「無いんだな?」

「はい。」

「ではこっちの詰め所で発行手続きをしてもらおう、付いて来い。」

「はい。」


意外と『はい』だけで行けるもんだ、この【馬車役】で行けるかもしれないな。


詰め所に入るとさっきのおっさんに質問された。

「まあ、座れ。」

と、椅子を勧められた。

「名前は。」

「・・・・。」

「名前は?」

「・・・・。」

おーっと、早くも想定外だ。名前は無いし、あっても名前はしゃべれるリストには入って無いし。

「ん? なんだ冒険者カードを持ってるのか、それを見せてみろ。」

細かい動作はできないので、初めから【馬車役】の手に持たせていた。

おっさんは冒険者カードを取り上げ確認する。

「うん、問題無いな。アーゼルという名前か。それじゃこっちの水晶に手を置いて。」

なんとか水晶に手を置けた。


「よし、反応無し。あの獣魔の従魔証についてだが、ここでやれるのは仮発行だ。正式な発行は冒険者ギルドか役所で行なってもらう。仮発行手続きを希望するか? ま、しないとあの獣魔を町に入れる訳にもいかんのだがな。」

「はい。」

よし、行けたな。

『シルビア、打ち合わせ通り出動だ。【馬車役】の事はアーゼルと呼んでくれ』

『わかったわ』


「あの虎の従魔の名前はなんて言うんだ?」

「・・・・」

んー、それはしゃべれるリストに入って無いですねー。下を向き思い出す雰囲気を出させる。


「ん? 覚えて無いのか?」

「・・・・」

そこにシルビアが入って来る。間に合った。

「アーゼルさん、遅くなりました。」

「おや? 連れか?」

「はい。」

「アーゼルさん、私はカードを持って無いから一緒に行って仮発行をしてもらうって言ってたでしょ。」

「はい。」

「すみません、私の入門の仮発行をお願いします。」


「なるほどな、この子の護衛(ガード)依頼ってわけか。先にこの子の入門手続きを済ませるから従魔の名前を思い出したら言ってくれ。」

「あの従魔なら名前はボルトです。」

「お、嬢ちゃんが知っててくれたか、そもそもあんな凄い魔物の名前を忘れるわけがないんだがなぁ。言いたくなかったのか? ボルトっていい名前だと思うがな。ま、名前付きの従魔なら問題無いだろ。嬢ちゃんもこの水晶に手を置いてくれ。」

シルビアは水晶に手を置いた。


「よし、嬢ちゃんも問題無しだ。嬢ちゃんの名前は?」

「シルビアです。」

「シルビアっと。おい、これを頼む。」


おっさんが部下に指示を出し、部下はおっさんの書いた紙を持って奥の扉を開けて入って行く。

部下はすぐに出てきて、おっさんに判を押した紙を2枚手渡した。


「これが仮入門証と仮従魔証だ。さっきも言ったが正式な従魔証は冒険者ギルドか役所で行なう。お前さんは冒険者のようだから冒険者ギルドでやってもらうんだろ?」

「はい。」

「嬢ちゃんも何かのギルドに入れば町への入門はタダになるが、今回は仮発行だから銀貨10枚になる。そっちの冒険者の従魔は銀貨5枚だが、依頼人の嬢ちゃんが払うのか?」

「はい、私が支払いますが、銀貨ってなんですか? 私は金貨しか持って無いんです。金貨ならありますが、金貨15枚って事ですか?」

そう言ってシルビアが金貨15枚出した。


「おいおい、銀貨を知らないって? どこのお嬢様だ。銀貨100枚で金貨1枚だから、これ1枚でいいんだ。」

おっさんはそう言って金貨1枚を取って部下に渡す。

「そうなんですね」と言ってシルビアは残った14枚の金貨を下げた。

部下がお釣りの銀貨85枚を持って来たので、それを受け取った。

「これが銀貨ですか。」

銀貨をまじまじと眺めるシルビアにおっさんが話し掛ける。

「おいおい、本当か? 本当に銀貨を見るのが初めてなのか?」

「はい。これが銀貨なんですね。」

「参ったね、金貨は持ってるのに銀貨を知らないって。ま、それぞれあるからな。そういった詮索はうちの管轄じゃないからしないが、気を付けることだな。他にも悪い奴はいるから気を付けた方がいいぞ。ま、あんな従魔を連れたガードが付いているんだから心配はないだろうがな。」がっはっはっは。

おっさんは豪快に笑っている。

「はい、ありがとうございます。」


シルビアとボルトの入門手続きも無事終わり、門を通れることになった。

「これが従魔の仮発行書と嬢ちゃんの仮発行書だ。お前さんは冒険者なんだから冒険者ギルドに行って、従魔証の手続きを済ませるんだぞ。お前さんは初めての町だったな。」

おっさんは冒険者ギルドの場所も教えてくれた。


「はい。」と「さようなら。」

「ありがとうございました。」


無事、入門もできて馬車で町に入った。


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