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第1話 馬車って何?

メインは続行中ですので不定期で投稿する予定です。

 気が付いたら見慣れぬ森の中ので立っていた。

 遠くには木が生い茂っているようだけど、目の前は雑草が生えている程度で特に障害物もない。


 オレはただ立っていた。オレは誰? 名前が思い出せない。ここはどこなんだろう?

 今日は学校にいた気がするんだ。学校って? どんな学校だった? 思い出せないな。


 視線は前は見れるが左右を見ることができない。身体が動かないんだ。

 耳は聞こえる。耳から聞いているという感覚でもないんだけど、聞こえているのは間違いない。


 視線もおかしい。

 テレビの2画面映像みたいになっていて、1つは正面の風景が見えているんだけど、もう1つは板の間の床が見える。

 目を瞑る事もできない。


 全く動く事ができなかった。

 手も足も首も、どの部分も動かす事ができないというか、身体の感覚がない。


 拘束されている感じもないんだけど、身体の感覚がないからわからない。


 目の前には風景が見えていて、身体が動かない。


 何が起こってるんだ? 起きたまま金縛りにでもなった?

 でも見たことの無い風景なんだよな。いつ来たんだ? 1人でこんなとこに来た覚えはないんだけど。


 日が暮れてきても何も変化無し、動く事もできないし視線を変えることもできない。


 たまに鳥が飛んで行くのを見るぐらいで本当に何も変化無しだった。


 夜になり、周囲が暗くなったとき変化があった。


 カシャッ! オート暗視(ナイトビジョン)


『なんですかこれは!  昼間の様に明るくなって凄くよく見えるんですけど』


 でもそれだけだった。

 逆に、暗い森って見えない方が良かったと思う事の方が多いような・・・。

 ほらぁ、犬の遠吠えが聞こえるじゃないですかー。他にも鳥か蛙かわからない鳴き声も聞こえてくるしー。


 あそこ!  野犬がうろついてるじゃないですかぁ。

 マジ勘弁してくださいよー。


 野犬が近づいて来る。

 どんどん近づいて来る。

 でも動けない。声も出せない。

 目の前まで来た野犬は凄くデカかった。2メートル以上あった。

 目もつぶれない。


 デカい野犬は目の前を通りすぎると、横でモソモソやってるような気がする。

 目というか画面の端に少し見えている。

『えー! オシッコをかけられてるんじゃない~?』


 匂いはわからないけど、何かが掛けられている感覚はあった。

 感覚がある?


 どこに? 足か?

 足の方に集中してみる。


 やっぱりわからない。


 次に変化があったのは1時間後、1メートルちょっとぐらいの奴らが5人近づいて来る。


 子供かと思ってたらボロボロの布を纏ったキモい顔した奴らだった。

 何かギャーギャーとしか聞こえない鳴き声なのか叫び声なのか分からないが、意思の疎通はできてるようで、纏まって近づいて来る。


 目が閉じれないし動けないから見てるしかない。


 5分ぐらい1人の奴に集中しただろうか、目の前の2画面の左画面に文字が表示された。


 種族:ゴブリン(魔物)LV4


『え? 何か出た。ゴブリン? 魔物? え? え~?』


 ゴブリンって映画で見たゴブリンに似てるとは思ったけど、このキモイ奴らって本当にゴブリンだったんだ。

 でも何この文字。3D眼鏡でも付けてるのかなぁ。身動きが何もできないんでわからないよ。

 そういう記憶はあるんだよなぁ。何で名前が思い出せないんだ?


 他の奴も見ていると今度はすぐに出た。その文字は小さくなりゴブリンから線が出て【ゴブリン:LV4】という文字が、奴らの動きに合わせて文字も付いて行く。

 これは実際についているのではなくオレの画面にだけ表示されてるんだろうな。


 ゴブリン達を見ていると2匹のゴブリンがオレの片手ずつを持ち引っ張っていく。

 手? 手を持たれてる感覚はあるぞ? やっぱり動かせないけど神経は生きてるんだ。

 目のっていうか画面の下に見えるのは棒を持ってるゴブリンなんだけどな。オレの手じゃないのか?

 お? お? オレの後ろを1匹、両サイドを1匹ずつが押しているのもわかる。


 動けないオレを5匹のゴブリンが運んでいく。ゴロゴロ言ってる。

 ゴロゴロ? 何が? 


 オレはこのまま運ばれてこいつらに食われるんだろうか。

 動けないから抵抗もできない。声も出せない。

 ゴブリン達はオレを方向転換させ1時間ぐらい運んだところでゴブリン達がオレの前に集まった。

 ギャーギャー言ってるが意見は纏まったようだ。


 あー、下り坂ね。全員でオレがこけないように支えてくれるんだ。餌だから丁寧に扱ってくれてるのかな。

 もう動けないからどうしようもないね、このまま食われてしまうんだろうか。


 2匹でオレの手を引っ張り、3匹でオレを前から支えてくれる。

 坂道に差し掛かり、少しずつスピードが増していく。


『お、お、おお、おおおお! 早えーって。こっちは目を瞑れないんだ、怖いってー。』


 まずオレから見て右側の奴が耐えきれずオレの足に踏まれていった。それを助けるようにして真ん中の奴も巻き込まれた。

 2匹いなくなってスピードが更に増し左側の奴もオレの足に踏まれていった。

 そうなるとスピードももっと上がり、前の2匹もすぐにオレの足に踏まれて行った。


 なんかゴメン。オレは何もしてないからね。動けないんだから。

 坂を下り切った所から少し行った所で何とか止まった。障害物も無くオレは助かった。


 チャラチャラチャーン

《戦闘経験値が上がりレベルが2になりました。銅の剣を出すことができます。各ポイントがアップしました。》ゴトン!

《【フェロモン】が2強化されました》

《スキル【ハーネス】を取得しました》


《戦闘経験値が上がりレベルが3になりました。銅の槍を出すことができます。各ポイントがアップしました。》ゴトン!

《【フェロモン】が2強化されました》

《スキル【ウィッシュ】を取得しました》


 ピロピロピーン

《移動経験値が上がりレベルが2になりました。どれを選びますか?》

 ナビゲーター

 右画面

 左画面

 後方画面

 上画面

 下画面

 ハイアングル画面


 綺麗な女性のアナウンスだった。


 なになになにー! レベルアップってなにー! 誰がレベルアップしたの? オレ?

 で、誰? 話してくるのは。


 誰も答えてくれない。

 目の前の画面には選択肢が表示されたまま。


 ナビゲーターってあるし、これが何か教えてくれるかもね。

『ナビゲーターを選ぶ』


《ナビゲーターが選択されました。ナビゲーターをゲットしました》

《自走時間1分獲得しました》


 ピロピロピーン

《移動経験値が上がりレベルが3になりました。どれを選びますか?》

 右画面

 左画面

 後方画面

 上画面

 下画面

 ハイアングル画面


 なんなのーこれはー。ここは聞くべきだろう。『ナビゲーターさん、教えてください。』

《質問内容を教えてください》


 おお! 返事が来たよ~。ナビゲーターを選んで正解だったな。

『この選択に出ているものは何?』

《画面の種類です。今持っている画面は正面のメイン画面と荷台画面です。右画面は右側が見れます、左画面は左側が見れます、後方画面は後方が見れます、上画面は上方向が見れます、下画面は下方向が見れます、ハイアングル画面は自分を上空から俯瞰的に見ることができます》


 画面の種類の前に言われた言葉が気になったけど、まずは選んでから聞いてみよう。

 今の状況も知りたいし『ハイアングル画面を選ぶよ。』

《ハイアングル画面を選択されました。ハイアングル画面をゲットしました。》

《自走時間2分獲得しました。自走時間は合計3分になりました。》


 目の前の画面が三分割され左に上空からの画面、真ん中に正面の画面、右に板の間の床に剣と槍がある画面が見える。


 ピロピロピーン

《移動経験値が上がりレベルが4になりました。どれを選びますか?》

 右画面

 左画面

 後方画面

 上画面

 下画面


 説明はさっき聞いたからわかるぞ。前方の視野を広げるか、いや、後ろも気になるな。

 まずは左かな。『左画面を選ぶ』

 なんで普通に選んでるのかぁオレって。もういいや、選んでから考えるぞ。


《左画面が選択されました。左画面をゲットしました》

《自走時間3分獲得しました。自走時間は合計6分になりました》

 目の前の画面が4つに増えた。



 ピロピロピーン

《移動経験値が上がりレベルが5になりました。どれを選びますか?》


 え? まだあるの? いや、嬉しいけどいいの?

『じゃあ、右画面を選びます』


《右画面が選択されました。右画面をゲットしました》

《自走時間4分獲得しました。自走時間は合計10分になりました》

 画面が5つに増えた。


 ピロピロピーン

《移動経験値が上がりレベルが6になりました。どれを選びますか?》


 まだ? そろそろナビゲーターさんに聞きたいんだけど。

『じゃあ、後ろを選ぶよ』

《後方画面が選択されました。後方画面をゲットしました》

《自走時間5分獲得しました。自走時間は合計15分になりました》


 パパッパッパッパパー

《速度計測25キロが計測されました。自走速度、時速2.5キロを獲得》


 ……。終わったかな? 終わったみたいだな?

 じゃあ、早速聞いてみよう。


『ナビゲーターさん、教えてください』

《質問内容を教えてください》


『まずオレは誰? 名前も覚えて無いんだけど』

《あなたは馬車です。名前はまだありません》


 えーーーー!! 馬車ってなに? 生き物じゃないじゃん! なんで考えてるの? 生きて無いし。なんでレベルまで上がってんの。せめて馬にしてくれよー。さっきの荷台画面ってのも気になってたんだよー。

 そうだ、考えてるじゃん! 馬車じゃないって、絶対ウソだよ。


『オレは馬車なの? 本当に?』

 上空からのハイアングル画面が真ん中に大きく表示される。

《これが貴方です。馬車です》


『・・・・・・。止どめですか、確かにどこも動かせないからおかしいとは思ってましたよ。でも馬車は無いって。あり得ないって。なんでこんなことになってんの?』

《貴方は転生者です。今は転生直後で記憶が戻っていないようです。間違いなく馬車です》


 転生者って何? 生まれ変わったって事? ならなんで馬車?

 しかもグサッグサッっと来ますね。さては機械じゃないな? ナビゲーターと聞いてカーナビを連想したけど、生き物っぽくないか?

『ナビゲーター! お前機械じゃないな?』

《ナビゲーターはこの馬車をナビゲートする者です。機械ではありません》


 よくわからない存在だなぁ。でも、いてくれないと困るから怒らさないようにしよう。

 まだまだ色々聞かないといけないし。



 確かにナビゲーターの言う通り記憶が少しずつ蘇って来る。

 時間はたっぷりある。動けないし目を閉じれないし眠れないんだから。

 馬車になったっていうのも納得はできないが、少しだけだが理解はできた。


 まずさっきのレベルアップだ。

 あの有名な本の中の世界だ。

 こんなことまで忘れてたのかと思ったぐらいだったが、記憶が少しずつ蘇る事で思い出して来た。という事は、レベルアップする毎にオレって無敵になって行く?

 チートってやつじゃない? 馬車が? 馬車がチートになって何するの?

 これってもう1回やり直せないの? どうやったら死ねるの? 壊れたら死ねるの? 


 気にはなってたけど、画面が6個に増えているがそれは選択したから分かる。

 上に3つ下に3つ並んでいるし全部同時に理解できる。この6画面を同時に分かるって事だけで、もう人間じゃ無いって感じもある。残念だけど。


 それより、正面画面の下にレベルバーが3本出てきている。デジタルで00っていう数字もある。LP、MP、SPって書いてあるけど蘇ってくる記憶ではライフポイント、マジックポイント、スタミナポイントだよな。00のデジタルは分からないけど、いつ使うの? どうやったら減るの?


 あー、なんで馬車なんだよー。オレが何したってんだよー。馬車に転生した奴って今までいるの? いたってわかんねーか、伝えられないんだから。

 馬車に転生って意味わかんねーよ、転生って勇者になって魔王を倒すってのが定番なんじゃないの? 馬車でどうやって魔王を倒すんだよ!


 ! もしかして、レベルアップして行ったら人間になれるとかあって、それで魔王を倒す的な? うん、前向き過ぎるね、今の却下。


 じゃあ何するんだよー、レベルは上がったけど何も動かせないんだぞー。

 でもさっきゴブリンが手を触った感覚はあったよな。


 手と思われる画面下の2つの棒に注目した。

 良く見ると棒の先に紐の様な物が付いている。

 なんか自分の身体の一部の様な気がする。『動けー』紐が少し揺れた気がした。

 『今揺れた? 風か?』もっと念じてみる。

 紐が振り子の様に少し揺れた。


『おお! 揺れたよー。なんか嬉しい。』

 初めて自分で動かせる身体が出来たので嬉しかった。

 たかが紐、されど紐だ。

 身体の他の所もハイアングル画面で確認してみる。馬車なのが非常に残念だ。

 しかも農業用馬車だろこれって、荷台と御者台しかねーじゃん。


 んー無さそうだね。でもよく気が付いたよ。もっと動かせないかな? 人が来たらこれで手を振ってる感じを出して連れて行ってもらうとか? 気味悪がって余計に近づかねーよ。


 紐を揺らしてみた。

 さっきと同じぐらい少し揺れた。振り幅で5センチぐらい。


 ピンポーンピンポーン

《【ハーネス】の熟練度が2になりました》


 おー? ナビゲーター来た! 熟練度? ハーネス? この紐がハーネスっていう名前で動かすと熟練度が上がる?


 紐をまた動かしてみた。

 さっきより振り幅が大きくなった。10センチぐらい。


『おお、いいじゃん。でもこれで何するの?』


 暇だからハーネスをずっと動かしていた。

 かなり自在に動かせるまでになった。熟練度が上がる毎に長さも変えられるようになって、今では右手のハーネスを左手に少し巻き付けられるぐらいまでになった。手って棒だけど。


 熟練度は8になっていた。暇ですること無いし。


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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。タイトル見て思わず笑ってしまったので1話読んでみたのですがなかなか面白そうな雰囲気。完結しているので読んでみようかと思います!
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