第24話 ギロチン
柊花「今度は・・・。」
迅「何だ?」
水があった。向こう側まで水があった。
迅(マグマの次は水かよ。)
水の中には鮫が居た。背ビレを出して泳いでいた。
「私が行ってみる。」
袖を捲り準備体操をしていた。
「よし!」
水に飛び込んだ。
「ぺっ!ぺっ!しょっぱ!」
「俺も水泳得意なんだよな。」
女性に続き男性が飛び込んでいった。背ビレがこちらに向かって来た。急いで泳いだ。だがやはり鮫は早かった。2人を丸ごとゴクリだった。そして迅はある事に気付いた。
迅「水のかさが増している。」
柊花「え?あっ!本当だ!」
迅「つまりこうしていたら溺れて死ぬ。だから、行くなら今だ!」
迅はバシャンと水の中に飛び込んだ。他の人達も飛び込んで行った。柊花は大勢に押され飛び込むというより、落ちるという形で水の中に入った。一瞬にして水は赤くなっていった。迅はドアの所まで泳いだ。横から鮫が来た。
迅「うっ!!」
サッと避けた。だが水流によって少しドアから離された。ここで息の限界が来た。水面まで上がり息を吸った。
迅「柊花?おい!!柊花!!」
バシャン!柊花が水面から顔を出した。真っ赤だった。いや柊花ではなく水が真っ赤だった。当然血で赤くなっていた。
迅「一体残りは何人居るんだ?」
柊花「行こう!早く!」
迅「そうだな。」
2人は水の中に潜りスッと鮫を避けた。そしてドアまで辿り着けた。2人は同時に頷きドアを開けた。2人は吸い込まれる様に部屋に入った。迅はドアノブにしがみ付き必死にドアを閉めた。
「うわ!水が入って来たぞ!」
「何だ?何だ?」
突然水が入ってきた事に当然驚いた。
迅「はぁはぁ。助かった。柊花は大丈夫か?」
柊花「うん。何とか。」
壁が開き始めた。そして向こう側を見るとギロチンの様な物が上から下がったり上がったり、逆に下から上がったり下がったり。横から出たり戻ったりしていた。するとTVが
TV「これで障害物競争ゲームは終わりで御座います。」
「要約終わりか。」
「いける!いける!ここまで生き残ってきたんだ!!皆いけるぞ!!!」
ドドドドド!!スクランブル交差点の様な光景だった。皆が固まっていた。恐らく「俺が!俺が!!」という気持ちなのだろうが、当然一斉に全員の体、手足、首、等が切れたり、下から真っ二つになったりした。柊花は迅の腕に掴まり顔を腕に付けた。
迅「行くぞ柊花。」
柊花「お兄ちゃん?」
迅「行かなきゃ結局は死ぬ。だったら行って死ぬんだ!」
迅は壁に指を指した。指した方向にはタイマーが付いていた。迅は走った。
柊花「お兄ちゃん!!」
柊花も走った。横から刃が襲いかかってきた。スライディングで避けた。柊花は滑り込みで避けた。上から刃が降ってきた。止まり上まで行くと
迅「よし!」
走り出した。休む暇は無かった休むと時間切れで殺される。柊花も何とか付いてきていた。すると
柊花「あぐ!!」
迅「柊花!どうした!?」
下から襲ってくるギロチンに足を切られた。足から血が出ていた。このままだと大量出血で死んでしまう。迅は柊花の場所へ戻ろうとしたが、タイマーはもう30秒だった。気が付けばドアが直ぐ後ろ。市香の時と全く同じ状況だった。だが今回生き残っているのは自分だけだった。
迅「柊花ぁぁ!!早く来い!!来てくれ!」
柊花「お兄さん無理だよ。私動けない。」
迅「じゃあ俺が行く!」
柊花「駄目!来たら駄目!お兄ちゃんまで死んじゃう!!」
タイマーを見た。残り5秒だった。
柊花「今までありがとう。お兄ちゃん。」
迅「待て!柊花!」
後ろから刃が出てきた。
迅「しゃがめ!しゃがむんだ!!!」
柊花「バイバイお兄ちゃ・・・。」
刃がこちらに向かってきた。迅はしゃがんだ。だが柊花の言葉は途絶えた。雨が降ってきた。血の雨が降ってきた。前を見ると、顔がない柊花の体があった。顔は床にコロコロと転がっていた。迅にとってはどんな死に方よりもショッキングな死に方だった。迅は腰を下ろした。ドアに凭れ少しずつ立ち上がりドアを開けた。入って直ぐに倒れた。TVが点いた。海南斗が映っていた。
海南斗「おめでとう迅。君だけだよ。MRGから生き残れたのは。」
そんな言葉は迅の耳には届かなかった。
海南斗「何だい?喜ばないのかい?まぁ良いや。君の望みを叶えてあげるよ。俺の部屋に来な。」
TVの画面に数字が映し出された。迅は立ち上がったが、直ぐに倒れた。足に力が入らなかったのだ。それから何十分かはそのまま泣いていた。
〜海南斗の部屋〜
海南斗「楽しかったな。このゲームは。」
手下「現在新藤 迅様は移動部屋の前で泣いております。」
海南斗「まぁ妹を失ったんだからな。まぁ何時かは来る。待ってやろうじゃないか。新藤 迅を・・・な?」
手下「はい。」
海南斗「ところで日本は迅だけだったが、世界の生き残りは何人だ?」
手下はコンピュータで調べた。1分も経たないうちに結果が出た。
手下「0人です。アメリカも、ロシアも、1番参加者が多い国中国でも生き残りはいません。」
海南斗は爆笑した。笑顔でワインを回しながら呟いた。
海南斗「そうとう凄いんだな。あの迅は。」
手下「はい。これが神に選ばれし者・・・というのでしょうか?」
海南斗「さぁな。俺にはわからねぇ。」
手を止めワインを口にした。
海南斗「あれ?ワインじゃねぇなこれ。」
海南斗が飲んでいたのは、普通のグレープジュースだった。
 




