第12話 押し潰し
延長戦第1回戦目
この延長戦で本当に終わる。今この部屋にあるのは、手下が急いで書いた紙が入っている箱と、迅、辰馬、手下2名の4人である。チャンスは3回。早くて、たったの2回で終わる。そんな勝負・・・。さっき迄の戦いでわかった事は、1回1回の勝負が早い。恐らく全てが終わるのに、2時間・・・いや、3回戦なら1時間も掛からないかもしれない。辰馬が先攻となった。
辰馬「それじゃあ早速行くぞ。3だ。」
引き当てたのは、4。外れたが、いきなり強い数字を引いた。迅は神に祈る他無かった。箱に手を入れた。
迅(今回ばかりは・・・運・・・。)「2!」
引いたのは1。
辰馬「ハハハハ!!やっぱりお前付いてねぇな!」
迅「・・・けだ・・・。」
辰馬「あ?何だって?」
迅「負けだ。」
迅の言葉を聞いてもっと笑い出した。
辰馬「そうだよ。お前の負けだ。諦めたか?」
迅はニヤッとして、上目遣いで言った。
迅「てめぇがな・・・辰馬。」
辰馬「あぁ?」(こいつ・・・何言ってんだ?)
手下「それでは10分間の休憩・・・。」
迅「いらねぇ。」
笑顔のままで言った。続けて言った。
迅「折角の運が逃げてしまうからな。」
意味不明だった。こんな状況で頭でも狂ったかと思った。だが、迅の自信満々のあの顔、何かがある。
延長戦2回戦目
辰馬は箱に手を入れていた。何もわからない。いくら紙を触っても曲がった所なんて無かった。まあ手下が急いで用意したのだから、仕掛ける暇は無かったのだから当然だ。一体どういう事なのだろうか。
辰馬「2。」
引いたのは5。やっぱり今の俺は勝てる。唯のハッタリと思った。暫く箱に手を突っ込んで3分程経つと
迅「そうだな・・・1。」
引いたのは1だった。1は唯一5に勝てる数字。それを引き当てた。
辰馬(偶然だ・・・。そうだ偶然に決まってる。今度は絶対に勝つ!)
また休憩時間無しで、延長戦が開始された。
延長戦3回戦目
ここ迄で一勝一敗。これで全てが決まる。辰馬は最初の頃と違って、余裕が無くなっていた。冷や汗が一気に出てきた。迅の余裕の顔、言動、全て見てわかった事。迅はこの戦いの必勝法を見つけている。しかし、辰馬にはわからない。
辰馬「3。」
引いたのは、また5だった。2回目の5。これでまた1が出れば奇跡だ。でも迅にはそこまでの運は無いはず。迅は余裕の表情で、また3分経ってから
迅「1だ!」
箱から手を出し、床に手の平をバン!!と叩きつけた。手を離した。1枚の紙がひらひらと、手の平から落ちてきた。紙にはこう書いてあった。1。これで決定した。勝者は、新藤 迅。そして敗者は、橋下 辰馬。迅は立ち上がり、辰馬に背を向けた。
辰馬「何で・・・わかったんだ・・・。」
迅「よ〜く紙を触ってみろよ。」
言われた通り紙を触った。すると、数字の書いてある部分が、凹んでいて、その裏側が浮かんだ様だった。
辰馬「これは一体何だ?」
迅「此奴等が急いで紙に数字を書いたんだ。だから紙に数字を書く時に力が入り、跡が残った。ノートとかに力強く何か書いてみた事があるか?その時文字を触ると、書いた所が凹んでいるだろ?それでわかったんだよ。」
喋り終わると迅は手下によって、部屋の外に連れて行かれた。部屋の直ぐ横の部屋に入った。そこにはさっきまで戦った7人の人が居た。どうやらマジックミラーだったらしい。迅はさっきの部屋を見た。辰馬1人だけだった。
辰馬「おい!何をする気なんだ!早く俺も出せよ!!」
手下「貴方は勝負に負けました。負けた者は死。それがルールです。」
手下はドアをガチャと閉めた。迅は皆の居る部屋に入り、マジックミラーから辰馬の様子を見た。辰馬はドアをドンドン叩いていた。声は防音だった為聞こえなかったが、ドアを叩く音はここ迄少し聞こえた。手下がポケットからスイッチを出した。
手下「よし。やれ。」
手下「わかりました。」
スイッチを押した。天井が急に動き出した。どんどん天井は降りてきた。
迅「まさか!」
市香「押し潰すの?」
手下「はい。その通りです。」
天井はあっという間に、辰馬の頭の部分まで来ていた。必死に押していたが、当然押されていった。辰馬の手から血が出てきた。ドアの奥から辰馬の悲鳴が聞こえた。
辰馬「あああ!!ぐぐっ!!やめろ!!」
手から遂に骨が出てきた。市香は目を逸らした。市香以外の女性2人も目を背けた。男5人は黙って見ていた。迅も黙っていた。その光景を見て、恐怖が湧いて来た。
迅(あと一歩間違えていれば、俺があんな風に・・・・・・。)
天井が床まで行くと、上に上がって行った。床には無惨に潰れた、辰馬の死体があった。死体は綺麗に潰れており、脳みそもバラバラになっていた。心臓も肝臓も腸も全て同じ様になっていた。
手下「それでは皆様。それぞれのお部屋にお戻り下さい。」
迅含め8人は皆自分の部屋に戻った。自分の部屋の番号は、名札に書いてあった為何とか部屋に戻れた。部屋に戻りベッドに飛び乗った。
迅「疲れた・・・。」
TVを点けた。CMをしていた。
TV「この画用紙に文字を書きます!当然裏から見たら、こちらに書いた文字は見えませんね!ですが!このスプレーを掛けて、このサングラスを掛けると、画用紙の裏の文字が見えるのです!!」
ここでTVの電源を切った。
迅「しょうもねぇな。」
迅はそのまま寝た。