第10話 勝つ可能性
迅(こっ・・・これは!?)
箱に手を入れた瞬間にわかった。紙が全て折られていたのだ。真っ二つに折られた紙。角だけ折られた紙。丸められた紙。今箱の中にある37枚の紙全て、この3通りに分かれていた。
迅(そうか・・・。彼奴ら・・・。折り目を消せないなら、全て折ってしまう。そうすれば俺達は一体どれが2なのか、3なのか、1なのかわからない。くそっ!どうして俺はそんな事に気がつかなかった!)
悔しがるには遅過ぎた。もう打つ手がない。あるとしたら、自分が付けたマークだけ。こうなった場合は運勝負。運が良いものだけが生き残る。また振り出しに戻ってしまった。迅は諦めた。自分の運は今の所断トツに悪い。ここで運が一気に良くなれば良いんだが、まずあり得ない。
迅(終わったか・・・。今は・・・第6回戦目だっけ?残り5回戦。でもこれはもう終わりだから、残り4回戦。だから今ここで最下位になれば、俺は4回最下位になって他の奴らはまだ1回。つまり・・・良くても、他の奴と一緒の最下位数になって、また勝負をする事に・・・。でもそれは俺が今後負けなかったらの話だ。1度負ければ俺は・・・死。)
もう自分が負けると諦めていた。でもその話は、この勝負で負けた時の話だ。だから正確に言えば、あと2回負けたら駄目という事だ。そして、小声で2と言った。引いたら2だった。
迅「良かっ・・・た。」
ホッとしたが、まだ3回戦ある。しかし、まだ安心は出来ない。次勝てるなんて保証は無い。勿論その次もだ。しかし相手に対策された以上運に頼るしかなかった。
迅(やってやる!絶対に!)
気を取り直して前向きに考えた。そして7回戦目が始まった。7回戦目が始まる前に、清志と市香と話をした。
迅「それにしてもヤバイな。」
清志「あぁまさかその手があったとは、考えもしなかった。」
市香「どうするんですか?」
清志「もう運に身を任せるしかない。迅。お前は・・・。」
迅「運になったら俺はヤバイな・・・。」
という会話をしていた。
迅(自分を信じろよ!俺!自分を信じない者に、運が味方してくれる訳がない!!)
目を大きく開けた。
迅(今の所俺の書いた1、3、4はまだ合計で2枚しか引かれていない。ここから引かれていく筈だ。)
迅の予想通りだった。辰馬は外れで③だった。辰馬の顔を見て
迅(よしやっぱり奴らも俺等同様、紙が何なのかわからない様だ。)
そして、魁斗外れ4。比留間は何とか当たりで3。春華外れで①。敏信当たりで4。美郷外れで2。清志当たりで3。市香外れで4。迅外れで2。ギリギリ勝てた。この第7回戦目なんとか迅は勝てた。ホッと胸を撫で下ろした。
迅(良かった・・・。)
第8回戦目
辰馬「まあ俺はもう勝ち抜けた様なもんだからな。3。」
引いたのは3。
迅(俺が勝ち残るには・・・。まず1回しか最下位になっていない者がこの残り2回戦で連続最下位になったとしたら、3回。自分が最下位に1度も最下位にならないとしても、結局2人で最終戦をしなくてはいけない。だとしたら、最下位数2回の奴を狙わなくてはいけない。そして今。最下位が2回の奴は・・・。)
春華を見た。
迅(彼奴だ。彼奴しかいない。つまり俺は、彼奴を落とす事だけを考えなきゃいけないという事か・・・。それで俺とは真逆の最下位数0回の奴は勝ち抜けか・・・。清志は良いよな。勝ち抜けで。)
指を咥えながら清志を見た。
清志「どうしたんだよ。」
迅「なんでも。」
舌打ちしながら他所を見た。そうしている間に魁斗はもう引き終わっていた。当たりで数字は①だった。
迅(これで俺の仕掛けた①は無くなった。残っているのは、③④が1枚ずつ。)
この仕掛けは本当に運の仕掛けだ。しかし、最後まで残れば、必ず最後に当てる事が出来る。
比留間「2。」
引いたのは2。
比留間「っしゃあ!!」
迅は大きく深呼吸をした。そして自分の心を必死に落ち着かさせた。
迅(俺は勝てる!俺は勝てる!)
勝てるという確信は無いが、こう言っておかなければ心が落ち着かなかった。
春華「2。」
引いたのは1だった。魁斗が1を引いている為、春華は最下位確定した。これで最下位数3回。少なくとも、戦いが終わった後速攻で殺される事は無くなった様だった。でも迅も1を引いたら話は別だが・・・。敏信は当たりで2。美郷は外れで5。清志は外れで1。ここにきて始めて清志が最下位になった。市香は当たりで4。迅は外れで3。これでなんとか1の差まできた。これで春華は最下位数3回。
迅(これで良い。これで9回戦目と10回戦目の時に最下位になってくれれば。)
第8回戦目が終わり、清志と市香にこの事を話した。
清志「成る程。つまりあの春華という奴を落としたら助かるんだな。」
迅「あぁ。でも俺が落としたいのは、あの女性じゃなくて、あそこにいる3人組なんです。彼奴らは・・・。」
そんな事は不可能だ。今回は春華を落とす事にした。
迅(俺は・・・。俺は絶対生き残る!!)
深呼吸して、強く心の中で叫んだ。残り2回戦で勝つ可能性は出てきた。それを考えるとやる気が少しずつ出てきた。第9回戦目が始まった。
迅(残り2回戦は1度も最下位にならずに、終わらせてやる!)
最下位数(順不同)
新藤 迅 4回
織田 市香 1回
高野 清志 1回
松本 美郷 0回
橋下 辰馬 0回
蛭田 春華 3回
春田 敏信 1回
松田 比留間 0回
白井 魁斗 0回