第1話 生きる意味
〜朝〜
????「まさかの先生である俺が、寝坊してしまうとは。本当は生徒より早く行かなければならないというのに。」
車のハンドルを握りながら、膝を揺らして独り言をしているこの人は、高校の3年B組の担任をしている先生である。名前は副山 真治。車を走らせていると、目の前の踏切がカンカンカンと音を鳴らしていた。ブレーキを踏み車を止めると、横からゆっくりと歩いている少年を見つけた。
真治「ん?あの服は、学校の制服じゃ・・・。」
少年は骨があるのか?と疑うぐらいに、ゆらゆら手を揺らし歩いていた。
真治「おい!お前何をしてるんだ?」
??「・・・・・・・・・。」
返事をせずに、歩き踏切の線路の真ん中で立ち止まった。
真治「お前!!まずい!」
急いでシートベルトを外し、車から出た。もう電車は見える所まで来ていた。車の前に何台か車があった為、距離は少しあった。しかし車の中を見ると、誰も止めようとしていなかった。驚きの表情をしていたが、自分は関係無いという風にしていた。少年の顔をよく見ると、自分の担当している生徒だった。
真治「迅!!」
迅「・・・・・・・・・。」
依然として、ぼーっとしていた。迅は電車をジーッと見ていた。
真治「くそ!」
遮断機を乗り越えて迅の腕を捕まえて、思いっきり引っ張った。電車が真ん前を通り過ぎた。ギリギリで汛を助ける事が出来た。
真治「迅!!」
この言葉に目が覚めたのか、さっきまで本当に生きていたのかを疑わせるぐらい暗かった目が、今は普通の目に戻った。
迅「せっ・・・。先生・・・。」
真治「とにかく俺の車に乗れ。」
車に乗せてもらい、高校まで乗せていった。
真治「どうしたんだ?迅。」
迅「何がですか?」
真治「どうして線路に出たんだ?」
迅「先生には関係無いと思います。」
そこから沈黙が続き、高校に着いた。真治は準備があるからと、職員室に向かった。迅は教室の引き戸を開けた。
男生徒A「おい来たぞ。」
男先生B「人殺しがのこのこと、この学校に来るんじゃあねぇての。」
女生徒A「ねぇねぇあの男子って人殺しっていうけど、人を殺したの?」
女生徒B「そういえば貴方1ヶ月前に、転校して来たから知らないのね。」
男生徒A「お前CHGって知ってるか?」
女生徒A「あー。知ってる!あの犯罪者が殺人をしていって、生き残るっていうゲームでしょ?」
教室がざわざわとしていた。迅はそんな事気にせず、自分の机に座った。生徒達はまだ話を続けた。
女生徒C「そう。第1回CHGは知ってる?」
女生徒A「知らないわ。」
男生徒C「当然の反応だな。第1回CHGは今から20年前なんだから、18歳の俺達が知る筈がねぇだろ。」
迅はその話に耳を貸さず、教科書を机の中に入れて、筆箱を机の上に置き、鞄を横に置いて、ひたすら家から持ってきた漫画を読んでいた。
男生徒D「俺は知ってるぜ!DVDも持ってるからな!」
手を大きく広げて、手の平を前後に揺らした。皆近寄って耳を傾けた。
男生徒A「あいつはな、その第1回CHGの生き残りの2人の子供らしいぜ。」
女生徒A「え!?あの新藤 迅君が!?」
女生徒B「人殺しの子供だから、皆から人殺しって言われているのよ。」
皆は嫌な目をして、迅の方を見た。真治が引き戸を開けて、大声で言った。
真治「さあお前ら座れ!座れ!出欠をとるぞ!」
一斉に皆席に座った。授業がある程度終わり、昼食の時間がきた。弁当を出すと、皆が迅の方を見ていた。真治はそれを見ながら迅に近付き
真治「放課後教室に残りなさい。」
〜放課後〜
この時間になると、部活をしている生徒以外は誰もいなかった。
迅「なんですか?先生。」
真治「迅はいつからあんな風に、虐められてるんだ?」
迅「小学校からです。まあ今は慣れてるんで、別に何とも思ってはいないんですけどね。」
真治「何とも思っていないは嘘だろ?何とも思っていないなら、電車に轢かれようとはしない。」
迅「先生は俺の母さんと、父さんを知っているんですか?」
真治は深く頷いた。迅は俯きながら、涙を堪える様にして
迅「唯CHGの生き残りの子供ってだけで、誰にも相手にされない。高校になっても虐められる。そんな俺って生きる意味はあるんですか?」
真治「さぁな。」
椅子に座り目を瞑って言った。迅はまだ突っ立ったままだった。迅を見て
真治「だが俺が思うに、生き物に生きる意味なんて物は無いと思う。」
少し間を開けて
真治「しかし、死ぬ意味なんてのも無いと思うぞ。」
迅は真治を見た。立ちって迅の肩に手を置いて
真治「今はCHGで生き残った者の事を、英雄の様に思っている者が居るが、中にはこんな者も居る。唯の人殺しと思う者がね。ここら辺は、唯の人殺しと思っている者が多い。だから虐める者も多いんじゃないか?」
迅「どうして先生は、俺をそこまで・・・。今迄の先生は俺の事を、無視していました。俺が殴られても、見て見ぬ振りをしたりされていました。」
真治「俺は今年ここに来たばかりだ。だから、ここの先生がどんな先生かは知らんが、俺はCHGで生き残った者を別に人殺しとは思わないし、英雄とも思わない。唯それだけだ。」
教室の引き戸を開けて
真治「今日は帰っても良いぞ。」
真治はそう言った後、職員室に行った。迅も鞄を持ち、靴を履いて帰った。