精霊ちゃん再び
ものっそい遅れました。。。
ほんっとすみません。。。
仕事が忙しいんです。。。(´・ω・`)
6話 - 精霊ちゃん再び
「成形」
俺の手の中にある一握りの砂が想像通りのメガネのフレームになっていく。
形としては、一般的なセルフレームのメガネ。
材質は練習なので、細かく砕かれ、砂状になった石。
成形が終わった石のメガネはつるつるとした感触になり、顔にかけても違和感がない。
あ、はい。
魔法、使えるようになりました。
メガネに関するものだけどね!!!
魔法を教えて欲しいとお願いしてから製作の合間に、魔力の検査をしたのさ。
そしたらまぁびっくり。
魔力許容量だけは人一倍どころか宮廷魔術師クラスがあるとのこと。
え、これ魔法使い的な生き方もありか?とか思ったら、一度に出力できる魔力量が子供並みらしい。
たとえていうなら、MPが9999あるのに、MPを10しか使う魔法しか使えないという。
火弾みたいな属性系の攻撃魔法なんかは一回でMP30くらいは最低でも使わないと発動しないと。
えぇ、ぬかよろこびでした。
ただ、成形や調整はギリギリつかえるっぽい。
やはり俺はメガネのために生きていくことが宿命なのだ。。。!
その魔力量がわかってからというもの、練習で魔力が尽きることはなく、思う存分メガネを作れた。
シェレスさんやセレンに成形や調整を教えてもらってから約一週間。
ありとあらゆるフレームを作った。
フルリムやハーフ、アンダーやツーポイント、オーバルやラウンド、スクエアやフォックスなどありとあらゆる形状のを。
石や木、鉄なんかに始まり、魔法銀コーティングなんかも作った。
シェレスさんの工房にかけらっぽいのがあったのでいただいて作った。
澄んだ青銀の色は綺麗だった。
普通、魔力はなくなると気持ち悪くなったり身体が動かなくなったりする、いわゆる魔力欠乏症になるらしいんだけど、そんな兆候は一切出ない。
便利な身体や。。。
まぁそんな便利な身体を使って黙々とフレームの生産をしているわけです。
水晶の加工はまだうまく精密性が出せなくて苦戦している。
そこはシェレスさんがうまく加工をしてくれるのであまり問題はない。
そして狙い通り、貴族や研究肌の魔術師なんかがすでに数人買っているらしい。
うまく普及してくれればいいんだけどな。
この世界に来てから今日ですでに10日。
あと10日で元の世界に帰らなくてはいけない。
それまでにベストメガネストを探さなくてはならない。
ちなみに助手のセレンは、俺が作ったフレームを持って街を練り歩き、美形な青年に声をかけ、着用してもらいそれを見てハァハァしてるらしい。
警備兵よ、俺だけじゃなくこういう奴も捕まえろよ。。。
あ、ちなみに俺も同じようにやったら女の子達に激しく拒絶された結果、また警備隊のオセワニナリマシタ。ハイ。
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「レンズよ、ちょっといいかい?」
新しいフレームのデザインを考えながら紙に起こしていると、出先からシェレスさんがお客さんを連れて帰ってきた。
年のころはそうだな、15くらいかな?
薄いピンクの髪の毛をした、動きやすそうな白いワンピースを着た、知的なお嬢様といった感じの女の子。
もう少し年齢が上なら条例にもひっかからないんだけどな。
あれ、異世界だから条例とかないのか?
なんてじろじろ見ながら考え事をしていたらシェレスさんの後ろに隠れてしまった。
「レンズよ、さすがに初対面でそれは好ましくないな」
「あ、はい。すみません。」
さすがにこれは謝るしかないだろう。
「こちらの方は、ここの領主をしておられる、レイラ・ダンゴール様だ。」
「レイラ・ダンゴールと申します。」
おおう、領主様。。。ってこんな若い子なのか?
「あ、レンズ・グラシールです。」
どのように対応したらいいかわからなくてうろたえていたら、シェレスさんとレイラさまが二人して吹き出した。
「なんだ、急に借りてきた猫みたいになって」
「かわいらしい方ですね」
かわいらしい。。。だと。。。
この俺を見てかわいらしいといった人はいないというのに。
なお、今まで需要がないだろうから俺の容姿については言っていなかったが、37歳、170cm/100kg。で察してくれ。
「。。。それで急に領主様がどうしたんで?」
シェレスさんの方を向いて問いかけると、にやり、といった表現がとても似合う表情で微笑み返してきた。
美人さんはなにやってもいいのう。
「こちらのレイラ様が、君が作ったメガネに興味を持っているそうだ。そこでまずはレイラ様に似合うメガネの作成を依頼したいとのことだ」
おおおおおおおおおおお
まじか!
この美少女がかけるメガネを作れるだと!
「また、レイラ様が気に入ったものを作成できた場合は、職人として認められ、店を構える権利を得られる。それで自分の店を持つといい」
「店。。。ですと。。。」
え、追い出される系メガネ職人ですか?
え?え?と動揺していると、レイラさまが、くすっと軽い笑いを出しながら「まずはテーブルへ座りませんか?説明いたします」と俺に声をかけてくる。
テーブルについたレイラさまとシェレスさんの前に座る。
あぁ、なんか面接みたいだ。。。
「当ダンゴール領では、新しい出来事に挑戦する若い職人へ、金銭的、人脈的なものを援助する用意があります。」
レイラさまがなにやらテーブルの上に資料を出し、こちらに見えるようにしてくるので手にとって見てみる。
あいかわらずこっちの文字は日本語に翻訳されて表示されている。
そこには「職人育成制度、職人認定制度のご利用について」と書かれている。
パラパラと中を流し読みすると、職人見習いから独り立ちするまでの支援制度、独り立ちした後の金銭的なものや、販路や人脈を作るための支援、特許について。などが書かれている。
店。。。ねぇ。
俺、あと10日しかいられないんだけど。
どうしたもんか。
「ありがとうございます。この支援を受けるかどうかは検討させてください。」
「いきなり支援の話をするとは、レイラ様に作るメガネには相当自信があるようだな?」
あぁ、そういやそうだった。
「メガネはこれ以上ないくらいの会心の作をご用意いたしますよ。フレームの好みはどのような感じがいいとかあれば後で聞かせてください」
「はい、期待しておりますね」
まかせておくがよい!
「というか、なんで俺にこのようないい話を?」
「ふむ。自覚していないか。このメガネ、案外爆発的に人気が出るやもしれん。それをこの工房だけでは対応は出来ない。だからちゃんと自分の店を作れ。といったところだ」
「なんと。。。」
爆発的に広まってくれれば嬉しいけど、そうするとやはり生産量がネックか。
場所も必要だしなぁ。
「まぁちょっといろいろ考えるところもあるのでその話は保留にさせてください。まずはレイラさまのメガネの詳細を詰めましょう」
めんどくさいことは後回し!
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その後3時間ほどかけて、レイラさまのメガネのデザインと機能が固まった。
フレームは細弦のツーポイント。色は赤。レンズには近視補正と、少しの乱視補正。
金属アレルギーみたいなのはないみたいなのでフル魔法銀製にする予定。
数年前に領主を受け継いで以来、書類仕事が多くてどうも視力が落ちてきているみたい。
書類仕事が多い=かけっぱなし。といったことを考慮して軽いフレームを。
というか、作ったフレームをいくつもテーブルの上に出して見せたら即決でこれに決まったんだけどね。
あとはレンズか。
いつものように水晶製じゃなく、もっと軽くしたいよねぇ。
珪砂とかソーダ灰があればガラスを作るのを試すのもいいんだけど探している間に期限がきちゃいそうだ。
しょうがない、今回は水晶でやるか。
出来る限り薄くして軽くすれば大丈夫かな?
その後、シェレスさんには作業部屋に篭りますと伝えて製作に集中する。
用意してもらった魔法銀の粉末を手に取り、フレームを作成する。
出来るだけ細く。軽く。美しく。
魔法銀の輝きを損なわないように。
青銀色がもっとも美しく見える形状に。
おっと一番大事なことを忘れそうだ。
レイラさまに似合うこと。
可愛さ、美しさを引き出せるメガネ。
そして萌えを感じさせるもの。
そんなものを想像し、妄想し、作り上げる。
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集中し始めてから3時間。
フレームは出来た。
気に入らなくて途中で潰したフレームの数はすでに20にも及ぶ。
あとは。。。レンズだ。
休憩として、蛇口から水を汲み一気に呷る。
やっぱ水がうまいなぁ。
どうすっかなぁ。薄くしつつ曲面加工か。
『くすくすっ。手伝おうか?』
。。。出たな妖怪声だけお化け。
『妖怪じゃないよ!!精霊ちゃんだよ!!』
やかましい。
というか実体ない奴になにが手伝えるんだ。
『くすくすっ。これ、薄く削ればいいんでしょ?』
まぁそうなんだがな。
「まぁんじゃやってみてくれ」
テーブルの上に水晶のかけらを置いて、ためしにやらせてみる。
『くすくすっ。それを何か水を入れた桶とかに入れてくれるといいなぁ』
注文が多いな。めんどくさい
木の桶を用意し、蛇口から水を半分くらい注ぐ。
その後にメガネのレンズの大きさに切り出した水晶を二ついれる。
『くすくすっ。じゃあいっくよー』
桶の中の水が洗濯機の様にぐるぐる回りだす。
でもなんだろう、桶の上下で別回転で動いている気がする。
レンズが水の真ん中くらいで浮き上がり、動かない。
そうして待つこと15分ほど。
水の回転が遅くなりやがて止まる。
浮き上がっていたレンズは自重で桶の底の方に沈んでしまっている。
水に手を入れ、レンズを手探りで探す。
なにかが手に触れた感触があったので気をつけて取り出す。
薄い。
確かに薄い。
「っつーか、薄すぎるだろ、これ!!!!!!!!!」
取り出した水晶は厚さ1mmにも満たない薄さ。
さすがにこれはないわー
こんなのに穴あけしてフレームにはめた瞬間、ぱきっと割れちゃうわ。
『くすくす。贅沢だなぁ』
「いや、そういう問題じゃねぇだろ、これ」
『くすくす。その3倍くらいの厚さでいい?』
「それくらいならちょうどいいかも。」
『くすくす。了解。』
新しい水晶をまた水桶の中に入れ、先ほどと同じようにしてもらう。
すると今度はきっちり3mmくらいの綺麗なレンズができあがった。
「すげぇ。。。」
精密加工もまっ青の精度で作り上げていたフレームにぴったしはまるものが出来た。
『くすくす。どう?』
「最高だよ。」
作ってあったフレームとあわせて、ネジ。。。はないので加工であけた穴に金属を通して上下をリベット止めのように潰す。
動かない様にきっちり固定されたのを見て、とりあえずの完成、と一息つく。
「最高だ。これをあの子がかけたらどんだけかわいくなってくれるのか」
『くすくす。顔が変態ですね』
「なんとでもいえ。あぁ、そうだ。さっきのは俺には使えないのか?」
『くすくす。無理じゃない?』
「ですよねー」
『くすくす。では精霊ちゃんはこれで帰るっ。』
「あい、おつー」
あとはフレームに軽く装飾でも入れてみるかな。。。
ゆっくり着実に進めていきます。
ただ今、ものすごく忙しい時期なので相変わらずの不定期更新となります。
ブックマークをしておいていただけると更新がすぐにわかる。。。かも?(笑