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同好の士

遅くなりました!

5話です、どうぞー


5話 - 同好の士


宿へ向かう途中で紙やペンなどの筆記用具と、屋台の串焼きを買い込んで宿へ向かい、宿泊手続きをして部屋へ篭る。


メガネを売るプランかぁ。


んー。

まずは正しい使い方としての視力補正。

術士や研究者みたいな書物と戦うような職業向けの近眼鏡としての使い方。

老眼の補正なんかもできるように老眼鏡も用意したほうがいいんだろうな。

弓師なんかだと、激しく動くところで使うのは危なかったりするだろうから形状の研究が必要だろう。


次はおしゃれアイテムとしてのメガネ。

度数は入れない伊達めがねのようなものも用意して、とにかくいろいろな種類のメガネを用意。

その日の気分だったり服だったりにあわせて変えられる程度の金額に抑えないとダメだよな。


後一個。。。

なにがいいんだろう?


取り扱いは裏ルートになるだろうし、シェレスさんに受け入れてもらえるかわからないけど、定番なのは透けるメガネとかか。

男の浪漫でしょう!!

医療用とかってごまかせばいけるかな。

あとは鑑定メガネみたいなマジックアイテム的なもの。

ルーペっぽい鑑定アイテムはさっき見つけたけど両手で持って鑑定できないのって意外とめんどいよね。


ふむ。


デザインなんかをいくつか考えておこうか。

あの魔法、俺にも使えたらフレームだけでも自分で作れるのになぁ。


----


翌日、朝までメガネのデザインや魔道具としての使い道なんかを纏めた文書を持って宿を出る。

そ、空が黄色い。。。

北街に向かう途中で、屋台に寄り、買った肉串やパンを食べながら歩く。

いや、この肉串、ほんとうまいわ。

なんの肉なんだろう?


検問所も首飾りを見せたらしぶしぶだけど通してくれた。

なんもしてないのに。。。


店の前に到着するころには腹もちょうどよく満たされていて目もしっかり覚めている。

鞄には昨日作った提案書も入っているし、デザイン画も入っている。


これで納得させなくては!


「こんにちわー。。。はいりますよー。。。」


ドアをスライドさせて店の中に入る。

入り口の段差に躓いてちょっと前かがみになる。

その瞬間何かが光った気がしたけど気のせいだ。

うん。

後ろの扉に刺さってるナイフなんか気のせいに違いない。


。。。死ぬかと思った!

あっぶね!あっぶね!


「ちっ、避けたか」


シェレスさんとは違う声がテーブルの裏から聞こえた。


「避けたかじゃねぇよ!危ねぇじゃねぇか!!」


声の聞こえた方を良く見ると、うっすらと半透明な女の子が見える。

。。。幽霊?


「幽霊がなんで俺のこと殺そうとするんだよ。。。呪われるようなことはまだしてないぞ」

「まだ、なのね。(あるじ)にかかわる害虫め。ここでくたばれ」


半透明な女の子がナイフを持って飛び掛ってくる。

あ、やばい。これ死んだ。


間合いを一瞬で詰めるようなダッシュで一気に近寄ってくるその瞬間、「伏せ!」という声が聞こえた。

半透明の女の子は地面に叩きつけられ、身動きできない状態になっている。

そう、まるで昨日の俺みたいに。


ってことは。


「シェレスさん、おはようございます」

「あぁ、おはよう」

「で、これってなんなんですかね?手荒な歓迎ですか?」

「あー、いや、すまん。これはうちの弟子でな?」


足元でもぞもぞ動いている物体を見ながらこの物体についての情報を貰おうとする。

どうやらシェレスさんの弟子らしい。


「おい、なんで突然襲い掛かってきたんだ?」

(あるじ)に近寄る男はすべて滅んでしまえばいい」


物騒な。


シェレスさんにどうしましょう?と聞こうと顔を上げてその瞬間時間が止まる。


メガネをかけてる。。。だと。。。


やべぇ、すっげぇ似合う!

めっさ美人さん!

美人度120%増しだよ、これ!

ふは!キタコレ!!(たぎ)る!!!


「どうした?」


シェレスさんが問いかけてくるが、言葉が出ないで見とれている。

頭の中はものすごいお祭り状態だがな!

仕事で嫌なことがあっても顔に出さないポーカーフェイススキル。便利やろ?


「なにがどうしたのやら。まぁいい。セレン。」


足元の物体がビクッっとなった。

こいつの物体名はセレンなのか。


「私の客に何をしているのかきちんと説明してもらおう」

「え、いやです」

「セレン?」

「。。。(あるじ)に近づく男を排除していただけです」

「こいつはこれから私の仕事のパートナーになる者だ。その心積もりでいろ。」

「。。。はい」


ものすっごく不満そうな声で返事してるけど、すぐにナイフを投げてきたり襲い掛かってくる子なんて俺も嫌だわ。


かけられていた重圧がなくなったらしく、起き上がり、頭の上からかぶっていた布を取ると、半透明だった物体から普通の人間に戻る。

透明マントか、あれ。


相変わらず俺のことを睨んでいるが、服装を直し、埃をはたいて姿勢を正し、シェレスさんの方を向いて挨拶をする。


「おはようございます。(あるじ)さ。。。。ま。。。」


下げた頭をあげ、シェレスさんの顔を見た瞬間、セレンが固まる。

口をパクパクさせ、唖然としている。


おまえもか。

シェレスさんはため息をついてそういいたげに肩を落とす。


「あぁ、これか。お前たちには不評だったみたいだな。やはりこのようなものは私には不要だ」

「「ダメです!!!」」


かけていたメガネを外そうとするシェレスさんに向かって二人の息がぴったりあう。

大声で言われてびっくりしたのか、メガネを外そうとしていた手が宙を舞う。


「なんで似合ってるのに外しちゃうんですか。もったいないです。美への冒涜です」

(あるじ)様の知的さが増してとってもいい。。。あとその恥ずかしがっている顔もナイスです。ごちそうさまです」


言い切った後、セレンと二人で目を見合わせ、その後は心で通じたかのように自然と握手をしていた。

がっちりと。


「急になにがあったのかはわからないが、意気投合したのならよかった。」


シェレスさんは微笑ましい目で俺らを見るが、こちらの気持ちはものすごい(よこしま)なものですよ。


----


「さて、昨日の宿題はできたかい?」


作業室のテーブルに囲むように置かれている椅子に3人で腰掛け、一息ついたあとにシェレスさんが満開の笑みで問いかけてくる。

やばい。見とれる。


「あ、え、と、これです。」


頑張って書いた企画書をまずは3枚テーブルの上に出す。

シェレスさんが発表して。と目で言っている。

プレゼンか。。。


「まず一つ目の案です。おしゃれメガネです。さまざまなデザインのメガネを作って、服やその日の気分で変えられるように。男女問わず好かれる物を目指します」

「ほう。」

「デザインの案としてはこちらをご覧ください」


そういってテーブルの上に出したのはメガネのデザインと装着イメージ。

イメージに登場いただいたのは当然シェレスさん。

きりっとしたメガネから丸みを帯びてる優しい感じになるのまで5パターンくらいの絵を見せる。


セレンがハァハァ言ってて危ないが、絵を食いつくように見ている所はまぁ問題ないだろう。

シェレスさんもほうほうといいながらデザイン画を見ている。


「今回モデルにはシェレスさんを使わせてもらいましたが、ターゲットは当然のことながら、女性、男性、子供、大人、老人全てです。」

「ふむ」

「人族だけではなく、販路さえあるのであれば、獣人族や魔族だろうとなんだろうと提供出来る様にしたいところです」

「デザインのパターンが複数あるのはよい。だが価格が高いものを複数抱えることになる。また、気分によって買い換えられる額でもなくなるが?」

「そこはあくまで『おしゃれメガネ』なので、水晶を使う必要がありません。フレームにガラスをはめるだけで十分なので価格も抑えられるかと。このフレームを使用して視力矯正を行いたい場合は別費用で請け負えばよいかと。」

「なるほど。ではこのフレームは何種類用意するつもりだね?」

「最初は5種類くらいからで考えています。年に一回デザインコンテストみたいなものをして公募するのもありですね」

「ふむ、それはこのメガネが普及し始めた後なら盛り上がりそうだな。その辺はまた後日検討しよう。よし、次」


第一関門突破!

ふぅ~。いつやってもプレゼンはドキドキするぜ。。。


「次は通常の視力補正用としてのメガネです。デザインはそこそこに、はめる水晶の性能を重視したものとなります」

「ふむ。」

「ターゲットは魔導師や研究者などの文書を扱う職の人。細かい文字なんかを見続けているとやはり衰えてくるのでそれを補正する道具ですね」

「なるほど。今私が作っているモノクルと同じようなものだな」

「はい。モノクルは味があっていいんですが、やはり片目のみ、というのは使用用途が限られますし、下を向くと落ちてしまうことが多いことから研究者達には好まれないと思います」

「それはモノクルの欠点だな。」

「その欠点を補う意味でもありかとおもいます。また、はめる水晶には、近距離優先、遠距離優先などの補正をつける事により、人それぞれあった物が作れると思います」

「ふむ」

「また、弓師や、物見塔の見張りさんたちにも望遠とまではいかなくても遠くの物がはっきり見えるようになれば好まれるものと思います」

「なるほど。わかった。メガネが売れるとモノクルが売れなくなりそうだがそれはこちらで考えよう。では次」


第二関門突破!

さぁ最大の山場だ!


「最後に魔道具としてのメガネです。鑑定機能を持たせたり、医療の補佐としての透視だったり、暗闇を明るくするような機能を持たせるものです」

「ふむ。」

「露天などで見かける鑑定アイテムは手に持つ単眼のものばかりで、両手に持ってじっくり見るには向いていません。これをメガネにすることで両手が使えるようになります」

「ふむ」

「透視のメガネは、骨折など体の中で起こる異常が細かく観察でき、適切な治療が出来ると思われます。過剰にヒールをかけるとかもなくなるので魔力の節約にもなるかと。」

「なるほど。」

「暗闇を明るくする物も想定にもぐる冒険者や坑道で採掘をする鉱山関係者です。明かりをたけばいいのでしょうが、それだとどうしても魔物を呼び寄せる原因になります」

「そうだな」

「明かりを焚かずに道を進めて、なお採掘まで出来る。ダンジョンの奥までいける。というのであれば需要はあるかと思います」


よし!言い切った!

不自然なところはなかった。。。はず!


「以上です。ご質問などあればお願いします」


シェレスさんが考え事をしている隣で、さっきからシェレスさんが書かれた絵を食い入るように見ているセレンから声があがった。


「ねぇ、あんた。このメガネっていうの、デザインは私にまかせなさい。」

「へ?」

(あるじ)さまだけじゃなく、世の美男美女に似合うメガネを作るのよ!!!!」


なんかものすごい熱く語っているが。完全に自分の趣味だろう。

まぁやってくれるというのであればまかせよう。


「あ、あぁ。頼む」

「あ、あんたは除外ね」


うわ、なんかむかつく。


そんなやりとりをしていると、シェレスさんが顔をあげ、質問をしてくる。

「レンズくん。ちょっといいかな」

「はい」

「デザイン重視、機能重視、のものは問題ない。いくらで売るか、というのは材料費なんかと相談になるがな。」

「はい。そんなに高くならないように、また適度に壊れにくいように金属だけでなく、木や石を使うのもありですね。」

「んむ、それでこの魔道具としてのものだが。。」


やばい、追求される!


「暗視や鑑定などを付与するのは特に問題ない。可能だ。だが、この透視が医療に役立つというところがよくわからない。説明を求む」


うわー、やっぱりそこか。


「まず、透視という概念はおわかりでしょうか」

「うむ。物を透かして見ることだろう。」


YES!透視はある!


「貴族なんかが洋服を透ける物や壁が透けて見えるのを作れと言って来るがそれとは違うのか?」


ちっ。余計な事しやがって。


「人体の構造というのはご存知でしょうか。人は身体を支えるために腕や足の肉の中に骨という部位があります。」

「ふむ」

「そこが折れてしまうことを骨折といい、痛みや発熱、また、正しく直さないと折れた部分が曲がってくっついてしまうことがあります」

「ほう」

「大工や冒険者など力を使う商売の方が曲がった状態で骨をくっつけても元の力だが出せるとは到底思えません。」


まぁ実際足を骨折してちゃんと直らなかったらそのまま引退。とかありそうだしね。


「そこで透視を使い、肉を透かして、骨を見ることにより、正しく治療することが可能になります」

「なるほど。」

「また度合いを調整して、内臓などを見ることにより病気なども発見できるかもしれません」

「ふむ。なるほど。」


通りぬけられたか・・・?


「提案は理解した。3つの提案どうもありがとう。」


よし、通った!


「しばらくこのメガネというものを主体に工房を動かそう。セレンもそれでいいか?」

「はい。(あるじ)さまの仰せのままに」


ふぅ。

おっと、そうだ。肝心のこと聞き忘れた。


「ありがとうございます。それでこちらから質問なのですが。」

「ん?なんだね?」

「シェレスさんが使っているような魔法。それは私にも使えるのでしょうか?」

「あぁ、魔力さえあれば簡単だ。後でやり方を教えよう」


まじすか!


「助かります。こちらでも試作品やらなにやらを作る際、いちいちお手間を取らせるのも申し訳ないですし」

「うむ、わかった。セレンか私のどちらか空いているほうで教えよう。」


きたこれ!

もういっそ透視メガネは自分で作っちゃうか!


「ありがとうございます。」


心の中のニヤニヤが止まらない!

表に出てないよな!?


----

こうして、俺はこの店で弟子兼、パートナーとしてこちらでの時間をすごすことになった。

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