おねいさんと異世界初のメガネの誕生
おまたせしました。
4話です。
難産でした。。。(´・ω・`)
4話 - おねいさんと異世界初のメガネの誕生
「いいか。気をしっかりとな」
「どういうことっすか」
何の説明もないとか。
とても意味不明です。
付添いの騎士がスライドドアをガラッと横に開く。
開いたドアから見える中は意外と広そう。
「おい、シェレス。入るぞ」
店の中に入っていく騎士の後ろについて同じように店に入る。
店の中は現在は無人。
壁にそってテーブルが置かれ、その上にガラスのような透明なケースが置いてあり、その中にいろいろな種類のモノクルが置かれている。
おおおおお。
モノクルとはいえ、れっきとしたメガネ。
こっちでの初お目見えを果たせた!
しっかしこのレンズっぽいのはこっちでも普通にあるんだな。
名前ミスったかなぁ。
ケースの中のモノクルをかぶりつく様に見ていると、後ろでは騎士さんと店主らしき女の人が話しているのが聞こえる。
女の人!?
急いで振り向いて騎士と話しているその女性を確認する。
薄い茶色の髪。ロング・・・・・合格。
顔の造詣は英国風女性。落ち着いている感じ・・・・・合格。
ぎりぎり手に収まらないくらいの胸・・・・・合格。
真っ白い肌でやわらかそうな二の腕・・・・・合格。
適度に肉を残しつつもくびれている腰・・・・・合格。
手に余るくらいの肉がついた尻・・・・・合格。
スリットの入ったスカートから見えるむっちりした太もも・・・・・合格。
ヒールでかかとを上げているおかげできゅっと締まっている足首・・・・・合格。
この間、実に0.5秒ほど。
体型や見た目だけでなく、着ている服装やその着こなし方、しぐさや雰囲気までもを一瞬で把握し、理解した。
その結果。
「お・ね・い・さぁぁぁぁぁん!!!!!」
瞬時に理性を飛ばし飛び掛ってしまうのはしょうがないだろう。
「おすわり!!!!」
女性から発せられた強い一言を聞いた瞬間、身体が地面に押さえつけられうつ伏せになる。
その瞬間理性は戻り、急激に落ち着く。
う、うごけない。。。
うつ伏せで顔も上げられない状態のまま首の後ろになにやら冷たいものを感じる。
うーん、これってもしかしなくても剣を突きつけられている!?
「本性を現したか、この変質者め。先ほど気をしっかりもてと言ったばっかりだろう」
「いやいや、ちょっとまって。初見で理性飛ばないほうがおかしいでしょう」
「何を言ってるんだ。確かに美人だがそこまでではないだろう」
わかってないな、このおっさん。
「メガネが似合いそうな美人を見て俺が我慢できるとでも!?」
「我慢しろや」
騎士さんに剣を突きつけられたままの状態からどうにか抜け出そうと逃げ出そうとするがまったく身体が起き上がらない。
なんで身体が起き上がれないんだろう。
やはりあのおねーさんの一言かねぇ
美人の言葉には重みがあるぜぇ。。。
「美人と言ってくれるのは嬉しいが、君は?」
おねーさんから声がかかった瞬間に身体にかかっていた重みが急に消えうせる。
やっと身体が動くようになったので床にそのまま胡坐をかいた状態で座り込み、顔を上げる。
おお、このアングル、いい!
「レンズ・グラシールと申します。貴女に会うために生まれてきました!」
「うん、そういうのはいいから。」
「あ、はい。」
「先ほど言っていた『メガネ』とはなにかな?」
「あなたが作っているようなモノクルのようなものです」
「ほう?」
おねーさんの目が光っている。
これは面白いものを見つけた時に見かけそうな目だ。
「ラン、こいつもらうぞ。」
「いや、だけどなぁ。。。」
「文句があるなら騎士隊長連れて来い。直々に論破してあげよう」
「まぁいい。隊長には俺から言っておく。こいつは性犯罪者の疑いがあるから気をつけろよ?」
「ねぇよ!!!!!!!!!」
ランと言われた騎士さんとおねーさんが俺の処遇について話していたが、甚だ遺憾である。
誰が性犯罪者だよ。
「私の名前はシェレス。この店の主人をしている。技師だ。」
「改めまして。レンズと申します。この世にメガネを布教するために来ました」
ランを放置し、お互いの挨拶をすませる。
シェレスと名乗った女性は奥の部屋、工房のようなところへ案内してくれ、そこに腰掛ける。
あ、ランという騎士はとっとと帰れと追い返されてました。ワラス
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「さて、君がここに来た理由を聞かせてもらおうか」
椅子に深く腰掛けた状態で机に頬杖をついて問いかけてくる。
「この街での身分を証明するためにメガネを作らなきゃいけないので、この街で一番のモノクル技師のあなたの所を紹介してもらいました。」
「ほう。街一番か」
シェレスさんが目を細めて俺を見る。
やばい、なんかゾクゾクする。
「訂正してもらおう。大陸一番だ」
あ、はい。
「それでメガネというのはどういうものなのだ?モノクルのようなものとは聞いているが」
「モノクルって近くのものが見えなくなったときに使うやつっすよね。メガネはその逆です。遠くの物が見えなくなったときに使う矯正道具です」
「ほう。」
「こんな感じっす」
騎士団のところでもかいた絵をこちらでも書いてシェレスさんに渡す。
その絵をまじまじと見て、いろいろ想像を働かせているようで上を向いて考え事をしたり、下を向いてブツブツいったりとして一人の世界に入ってしまっている。
美人さんは何しても絵になるなぁ。
「ふむ。とりあえず絵のようになるように作ってみようか」
シェレスさんは急に椅子から立ち上がり、工房の隅においてある道具や材料をテーブルの上に持ってくる。
「成形」
手に乗せられた金属の粉が急に粘土のようにやわらかくなり、シェレスさんの手の中で形を変える。
まずは、ということで俺の顔に合わせて、フレームになる部分を成形していく。
当然俺の顔に合わせて、なのでシェレスさんが俺の耳の形や目までの距離などを顔に装着させた状態で作っていく。
顔が近い。。。
成形しているシェレスさんの顔は真剣で、俺の顔になんかまったく興味がないように没頭している。
あまりイケメンと言える部類の顔ではないのでそこで目を逸らされたりしなくてよかった。
成形が終わったのか、フレームを顔から外し、耳の後ろなどの微修正を行う。
あっというまに出来上がってしまった。
魔法すげぇ。
「あとはそれに度を入れたガラスを入れるだけっすね」
「ガラスというものが必要なのか?モノクルでは魔法をかけた水晶を入れるのだが」
おおう。水晶か。
たっかくなりそう。。。
「あ、それで問題ないと思います」
「ふむ、じゃあやってみよう」
そういうと、さっきと同じように成形を使い、フレームにあわせて水晶を加工し、はめていく。
はめ終わったところで用意されていた青い液体にフレームごと漬け、魔法を唱える。
「調整」
青い液体が一瞬淡く光って、その光がメガネに吸収された。
これで終わりなのかな?
液体から取り出されたメガネは布で拭かれ、綺麗にされる。
それをテーブルの上において俺につけろと言ってきた。
異世界初のメガネや。。。
っていうか、俺が作ろうと思ってたけどこれは俺には無理だ。
魔法。。。使えないかなぁ。
渡されたメガネはメガネ創世記のように、瓶底メガネで重さが結構ある。
長時間付けていると疲れそうだな。
肝心の視力の方は、つけた瞬間はぼやっとしていたが、すぐにピントがあったのか、急によく見えるようになった。
おおお。
「完璧っす。さすがっす」
「ふむ。たしかに新しいものではあるな。遠くを見るための、というものであれば、弓師や魔法使いにも売れそうだ」
「なんでこのデザインのものっていままでなかったんすかねぇ」
「視界強化という魔法があるからな。それで大抵は事足りてしまう」
なん。。。だと。。。
「これを使えばわざわざ魔法を使わなくても視界が確保できる点はいいと思う。ふむ。」
「あとは、これ。デザイン性を高めておしゃれにも使えると思わないっすか?」
「ほう?」
「メガネって付けてると知的に見えるとか思わないっすか?」
懸命の努力でメガネに対するプレゼンを行う。
こういうのは苦手だけど今ここで頑張らなくては!
「ふむ。後で提案書を用意して提出したまえ。3パターンの売り方もあればいいかな」
おうふ。
提案書とかめっちゃ苦手だわ。。。
「とりあえず明日の昼頃にまたたずねてくるといい。宿はそこの通り沿いに下っていけばまた中央街に出られる。」
「あ、はい」
「再度北街へ入る際はこれを出せば通れるだろう」
といって渡してくれたのはメダルのついた首飾り。
「それはこの店の人間であることを証明するものだ。なくすなよ?」
「へい」
首飾りを受け取ると私は忙しいから、といって店を追い出されてしまう。
まじですか。。。
まぁ明日までに提案書作らなきゃいけないからとっとと宿行って案を考えないと。。。