おまわりさんこちらです
第3話書き上がりましたっ
どうぞー
3話 - おまわりさんこちらです
「総員、抜剣!!!!」
「おまわりさん、違うんです!!!」
おっと、つい反応してしまった。
街に着き、門の所で街への入場手続きを行おうとしたところ、門番に止められ職務質問タイム。
いや、そりゃいままでも見た目で職質とかされたことあるけどさぁ。。。
あれよあれよという間に騎士に囲まれこのありさま。
いきなりこれってどうなのよ。
周りじゃ門を通ろうとしている町民や商人のみなさんがじと目で俺を見ている。
「レンズ・グラシール。大人しくするなら痛い目には合わせないことを祈ろう。大人しく連行されてくれ」
「祈るだけかよ!!!」
あレンズ・グラシールっていうのは俺がこっちで使うことにした偽名な。
さっきの門のところで入場記録にあたる名簿に書いた名前。
メガネ好きならこれ以外ないでしょ。
それにしても面白いのな。書こうと思った文字がこっちの言葉に変換されてうっすら浮かび上がってるの。
それをなぞるだけだから簡単。
。。。というかなんでこんな事態に。
事務所のようなところに連行され、門の所で書いた紙をテーブルの上に出されて取り調べが開始される。
「レンズ・グラシール。37歳。人族。職業無職。街に来た目的はメガネとやらの布教。これに間違いはないか?」
「間違いないっす」
何一つ間違っちゃあるまい。
「国教である光神教に対する背信徒であることを確認した。確保する。他に遺言はないか?」
「ちょっと待てええええええええええええええええ」
なんでそんな話になってるんだよ!
「メガネってのはいうなればアイテムですよ!」
「聞いたことないから知らん」
推定無罪って言葉しらないのかよ。。。
疑わしきは罰せず。とか。
「視界がぼやける人や遠くの物が見えなくなった人に装着させると子供の頃のようによく見えるようになる魔法の道具ですよ!」
メガネの簡単な用途を説明するがいまいちよくわかってもらえない。
なんて説明すればいいのやら。
「あー、モノクルってわかります?」
「あぁ、貴族さまが付けてるやつだろう?あれがどうした」
「そのモノクルみたいに目の前に付けて、よく見えるようにするものですよ。。。」
そこまで説明してなんとなくイメージがわかってきた様子なので紙とペンを貰い、簡単な絵を書いていく。
「こんな感じで。。。こうやって目が物を見る力。視力っていうんですけどそれを補強するためのものです。」
「なんだ、そんなものか。」
そんなものだって最初から言ってんじゃないですかねぇぇぇぇ!
「まったく。紛らわしい。最初から商人なり職人なりといえば話は早かったのに」
「知らんですよ、そんなの。」
「まぁいい。放流してやるから騒ぎは起こすなよ」
警察とかもそうだけど、なんで誤逮捕とか勝手な疑いかけておいて被害者に対して謝らないんですかね。。。
解せぬ。
かくして街に入れたわけだが。
視界を埋める、赤、青、黄色や緑、紫、桃など色とりどりな髪の色。
俺みたいな黒髪はまったく見ない。
え、なに、特殊色なの?
やっべ。目立たないようにしなきゃ。
街に着くまで鞄の中に入っていた保存食しか食べてないからまともなご飯を食べたい。
あ、ご飯ってないんだっけ。
そこらへんにある適当な食堂でいいか。
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ふぅ。
意外とうまかった。
白パンやらスープやら肉の塊やらサラダやらといったボリューム満点の定食を食べて銅貨3枚。
あの定食だとまぁ1500円ってところだから銅貨は一枚500円か。
なお、10銅貨=1銀貨(5000円)、20銀貨=1金貨(10万円)らしい。
しかし、やはり米が食いたいな。
なんでもアルファミラの街のほうだと米の料理があるらしい。
カツ丼と唐揚げ丼が人気なんだとか。
おい、前任者。
で、だ。
食いすぎた腹が落ち着くまで大通りを歩いている人達を、路肩に積み上げられた木箱の上に座って眺めている。
50点...32点...お、82点。
何の点数かって??
察してくれ。
メガネが似合うか否か。だよ。
それ以外にあるだろうか!いやない(反語)
あのショートの子とかいいなぁ。丸メガネが似合いそう。
あのロングの子は細いふち無しのメガネだな。
あそこの小さい女の子は赤い縁のセルメガネがいい。
あそこの。。。「ちょっといいかね、きみ」
あ、はい。
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「お前はいったいなにをやっているんだ。。。」
俺の目の前にはさっき騎士さんがため息をついている。
場所はさっきおさらばしたはずの取調べ室。
どこでこうなった。
「開放されてから1時間程度でまたここに来るのは最短記録だぞ。」
わーい。って喜ぶ場所じゃねぇよ!!!!!!
「なんで俺はまたここに連れてこられたんですかね。。。」
「巡回の騎士が『街を歩く女性を見てハァハァ言ってる変質者がいる』とのことで事件を起こされる前に連行したそうだ」
「ちょっとまてえええええええええええ」
たしかに!女の子ばっかりみてたけど!
ハァハァなんてしてないぞ!!
。。。え、してた?
あ、はい。
「さっきも説明したと思いますけど、メガネが似合う子をリサーチしてたんですよ。。。」
「それで対象が決まったら連れ去って監禁したりするつもりだな!やはり逮捕だ!!!」
「ちげぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
なんだこの妄想の激しいおっさんは。
「とはいえ、実績も現物もない職人だからなぁ。信じろといっても無理だろう?」
いや、まぁそうなんですけどね。
なんで俺は自分でいつもつかってるメガネをかけてこなかったんだ。。。
「あー、じゃあ現物あればいいっすか?」
こうなったらしょうがない。俺が自分で作るしかないな。
「ふむ。まぁよかろう。今、手元にないのであればこれから作るということか?」
「そうなりますね」
「ではそれが完成するまで監視をつけさせてもらう。いいな?」
「可愛い女の子でお願いします」
おうふ。
睨まれた。。。
冗談ですってば。
「冗談はさておき、この街で、貴族向けのモノクルを作っている職人さんはいるのですか?」
「北街にいるという話は聞いたことがある。今いるここは南街だ。領主様の館の傍になる」
ほほう。
「おまえのような人間を領主様の傍に近づけるのは甚だ不本意だがしょうがない。監視の騎士に案内させるからそこから出てくるな」
おい、すげぇいいようだな。
どんだけ犯罪者だよ、俺。。。
まぁでもいい。
この世界に初となるメガネを!俺の手で!
作り出す!!
「なにを妄想してるのかは知らんが、この騎士についていけ。案内役、兼監視役だ」
「おう。お前があれか。とっとと行くぞ。」
むさいおっさんすか。。。
まぁ騎士なんて実際はそんなもんなんだろうけども。
くっころな女騎士なんて夢やったんだ。。。
「ほら、とっとときやがれ」
あ、はい。
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モノクル職人の所まではもうなんていうか、犯罪者の連行の様相。
腰に紐を結び付けられて前を歩かされ、後ろから次は右とかそのまままっすぐとか指示通りに道を進んでいく。
両手を縛られていないだけましか。
縛られてたら完全に犯罪者だもんなぁ。
縛られていないとそれはそれでペットや子供が迷子にならないように繋いでいる感じに見えてとても残念だが。
というか、なんでわざと大通りを通るんですかね。
大通りに出てしばらく歩いたら元の道に戻るとか。
方向音痴じゃないからそれくらいはわかるんだぞ!!
むぅ。皆様の視線がとても痛いです。。。
大通りに出ている屋台の肉の串焼きがとても美味しそうです。。。
「ねぇ騎士さん。屋台で買い物とかしちゃだめですかねぇ?」
「かまわんぞ?」
いいんかよ!!
もっと早く言えばよかった。
鞄から出した巾着から銅貨を出して屋台で売っている肉の串焼きを2本買う。
一本でも結構なボリューム。
そのうちの一本を監視役の騎士に渡す。
「いかがですか?」
「賄賂か?」
「ちゃうわ!なんで普通に気持ち受け取れないんですかねぇ」
「わかっとる。冗談だ。そんなに怒るな。ハゲるぞ」
「ハゲっていうな!!」
笑いながら串焼きを受け取り、豪快にかぶりついた騎士と少しだけ、ほんとに少しだけ打ち解けた感じで歩くことを再開する。
「ここから先が貴族街だ。通称、北街。へんなことをしたらすぐ騎士のほかに衛兵まで飛んでくるぞ」
線を引かれたように建物なんかの様子がガラッと変わった地域に入った。
「まじっすか。怖いっすねぇ」
「まぁなんにもしなければそうなることもあるまい。見た目に関してはもうしょうがない。諦めろ」
「そこで諦めないで!?もう少しがんばろう!?」
そこから少し進むと検問のようなところがあり、そこでもじろじろ見られたが騎士に付き添われているからか呼び止められたり連行されるようなことはなかった。
なんなんだ、この世界は。
俺に優しくない。
解せぬ。
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到着したのは周りに立ち並ぶ豪邸とはまた雰囲気の違う、こじんまりとした木造のお店。
なんというか、あれだな。白金台とかあぁいうセレブな街に突然現れた下町の定食屋をイメージしてもらえるとわかりやすいだろう。
扉も左右にスライドするタイプの扉でまるっきり食堂とかだよなぁ。
まぁいい。
これからここで!俺の華麗なる第一歩が!始まるんだ!!!