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酔っ払い系異世界人

2話 - 酔っ払い系異世界人


目がつぶれるほどの光が収まってきて、恐る恐る瞼をあける。


さっきまで部屋にいたというのに今は夜の森の中。

目の前にはログハウスがうっすらと月明かりを浴びて悠々と立っている。

ログハウスの壁面は綺麗でつい最近立てられたような真新しさを醸し出している。


すっごい木の匂い。


そして。。。


すっげぇ気持ち悪い。。。ううぅっぷ。。。。うおえぇぇぇ


----しばらくお待ちください----


ログハウスのある広場の端っこの方に移動して、胃の中のものを一通り出してみたがいまだ頭はフラフラ。


水が欲しいところだよなぁ。。。


地面を這いずるようにログハウスの傍まで移動して、壁を背に座り、身体と頭を落ち着かせる。

この家の中で休んだ方がいいんだろうけどなぁ。

いきなり入るのは怖いわな。


もし誰かいたらこんな状態で会うわけにもいかないだろうし。

もう少し落ち着くまでこのままここに座ってようかね。


というか、部屋の中だったから靴履いてないじゃないすか。

着ている物もYシャツとスラックスだし。

ないわー。まじでないわー。どうしてくれるのさ。


そしてまじで気持ち悪いわー。

全然気持ち悪さが取れない。

そんなに飲んだっけかなぁ。。。


あー、邦靖さんに勧められてだいぶ飲んだんだった。

こりゃだいぶ残るな。


がんばって小屋の中に入って一眠りしたほうがいいんだろうか。

うーむ。


とりあえず扉をノックしてみようか。

人が出てきたら水をもらおう。。。


扉の前までがんばって這いずって。

なんとか到着した扉を這いつくばったままちょっと乱暴に叩く。


「。。。すいやせ~ん。。。誰かいませんかぁ~。。。」


へんじがない。ただのあきやのようだ。


「誰もいないっすねぇ。。。じゃあお邪魔しますよぅ。。。へっへっへ」


なぜかコソ泥風な台詞を吐きつつ、がんばって立ち上がり扉をあける。

そのまままた這いずった状態で小屋の中に入り、扉を閉める。


小屋の中はさっきまでいた木の香りというより、古本屋のような匂い。

子供の頃は古本屋とかに入り浸ってたなぁ。。。とか懐かしみながらそのまま意識を失った。


----


腹の具合からして3~4時間はたっている。

部屋には窓がないから外の様子はわからないけどきっとまだ夜だろうなぁ。


気持ち悪さもなんとか落ち着いてきたような気がする。


小屋の中に台所らしきところを見つけたので蛇口っぽいところを捻って水を出そうとする。

が、捻る蛇口がない。

変わりに宝石のような水色の石がはまっている。


どうしろと。。。


この水色の石をまわせばいいのかな?


手を伸ばし水色の石を握って回そうとした瞬間に石の下についた蛇口から勢いよく水が流れ出始める。

まだなにもしてないのだが。。。

タッチセンサーなのか!?

むだにハイテクだな。


とりあえずこれで水は飲める。


近くにある木製のコップをかるく濯ぎ、水を汲んでいっきに飲み干す


くはーっ


うまい!

なんかカルキ臭くもないし錆とか消毒液とかそういう臭いも一切しない。


これでコーヒー入れたらものすごくうまそうだ。

どっかにコーヒーとかねぇかな。


あ、でもお湯沸かせられないか。

残念。


水も飲めてひと段落ついて、やっと小屋の中を見回す余裕が出来た。


小屋の中にはいろいろとごちゃまぜに入れ込まれている棚や乱雑に本の置かれているテーブルがある。

あとはクローゼットのようなタンスとか、今水を飲んでいた台所。

台所にはコンロや冷蔵庫のようなうっすら冷気を持っている冷蔵庫のようなものがある。


だいぶ現代的だな。


テーブルに備え付けられている椅子にどっかりと腰掛け、上に散らばっている本を見てみると、日本語で書かれた数冊の本があることがわかった。


異世界のすすめ。か。

武具編とかスキル編。まぁそんなものはどうでもいい。

アイテム編。ふむ。


アイテム編の目次のような一覧をざっと流し見る。


めがね。。。めがね。。。


ない!


きっとこの本に載ってないだけだよな。。。

たのむ。。。そうであってくれ。。。


どういうことだ!


モノクルはあるのに眼鏡がないとはなんたる怠慢!

世の技術者はなにを考えているんだ!!


うおおおおお。。。。。


俺のケモミミメガネが。。。メガネエルフが。。。メガネのおねーさまが。。。


絶望した。

メガネが存在しないこの世の中に絶望した。


----


この世にメガネがないなら作ればいいじゃない。


そう決意するまで相当な時間を要した。

扉の隙間から明かりが入ってきているところを見るとすでに外は夜があけているらしい。


そうと決まれば。


こんなことしてられねぇ!


とっととこんな場所おさらばして街へ!

街へいってメガネの似合う女の子を捜さねば!!!


勢い勇んで出口の扉が引き戸なのを押し戸と間違え、思い切り顔面をぶつける。


激しく顔面が痛いです。


おでこと鼻を思いっきり扉に打ちつけて涙目になっているのを撫でながら扉を蹴ろうとすると、扉の内側になにか紙が貼ってあることに気がついた。


「なんだ、これ?」


おでこと鼻を擦りながら紙を手に取りよく見てみる。


----


<たからさがし> や ら な い か


はじめまして。僕です。

こちら側へようこそ。


この紙を見ているということはすでに小屋を出ようとしたということかな?


だがちょっと待って欲しい。

ほんとにその装備で大丈夫か?


僕がこっちの世界で手に入れたものをこの小屋の中に置いてきた。

探せ!


探したものはあなたのこちらでの生活に有用なものでしょう。

この世界は剣と魔法といったファンタジー世界であると同時に、魔物が跋扈し、命の価値の薄い場所。


生半可な気持ちは捨てることをお勧めします。


では。

よい旅を。


----


なんだろう、このツッコミせざるを得ない文章は。

まぁもらえるものなら貰っておくおくのがいいかな。


改めて小屋の中をちゃんと見てみると、まぁなんともいろいろなものがある。

棚にあるアイテム達はきっと不思議アイテムなんだろう。

だがそんなものはいらない。


メガネさえ。。。メガネさえあればいい。


とは言えないんだろう。

さすがに剣と魔法の世界で武器も持たずに森を抜けるとか自殺行為なのはわかってる。


でも小屋の中には武器らしきもの、ないんだよなぁ。。。

どうしたものか。


お、棚にナイフっぽいもの発見。

刃渡り20cmくらいの大き目のナイフ。

元の世界なら確実に銃刀法違反になるやつや、これ。


贅沢を言えば着替えが欲しいところ。

さすがにいつまでもスーツ着てるわけにもいかないだろう。


このクローゼットにはなにが入ってるんだ?


クローゼットをあけると、よくある冒険者的なスタイルの服が入ってるのが目に付いた。

濃緑色のズボンに濃緑色のシャツ。

腰には軍帯のような太いベルトがあり、そこに先ほどのナイフの鞘が止められそう。

靴も同じくセットで用意されており、あわせて着用できそう。

ちなみに靴はハイカットのブーツのような感じで、つま先には鉄板らしきものが入っている。


お、これはいい。

趣味でやってるサバゲーで使ってる服に似てる。

うん。動きやすい。

しばらくはこれでいいか。


服を着替え、腰の後ろに横になるようにナイフを固定し、軽く前屈や身体を捻ったりして異常がないことを確認する。

棚に空っぽの水筒のような細長い金属の筒があったので取り出し、水道から水を汲んで腰にぶらさげる。


よし。


着替えが終わって再度小屋の中を散策。


んー。

さっきの張り紙のはどうしよう。


正直ここまで準備が整っちゃうと他はどうでもいい気がする。

この着替えた服とかが用意されていたもの、というのなら助かるが。

たぶん残されたものっていうのはこの棚以外のものなんだろうな。

棚に残っているのはだいぶ埃がつもっているし、真新しいものは見当たらない。


正直この瓶に入った飴っぽいのとか口に入れるのも怖いわ。

絶対賞味期限切れてる。


真新しい感じのものってあとはなんだろうなぁ。


部屋の端っこに置かれているソファーにどかりと腰掛ける。


その瞬間「ぶぅ~」というおならのような音が鳴り響く。


俺じゃないよ!?


慌ててソファーに置かれたクッションを取り除きその下に置いてある、昔懐かしいブーブークッションと言われたものを見つけ出す。

そこには「はずれ」と書かれた紙が貼ってある。


きいぃぃぃぃ

ハズレじゃねえよ!大成功だよ!!


これ考えた奴、ほんとに最低な性格だな!!


クッションをソファーに投げつけ憂さ晴らしをするがまだ憤りは収まらない。

地団駄を踏んでいると意外と揺れたのか、棚の上からなにかが落ちてきた。


落ちてきたものを良く見ると、少し使い古された感があるバッグ。

あー、ちょうどいいサイズだな、これ。

ちょっと借りていくか。


鞄の中を覗いてみると何も入っていない。

まぁあたりまえか。


でもさっきまで着ていた服を入れてみるとスポンッと入り込み、消えていってしまった。

取り出そうと手を入れてみるとどんどん奥まで手が入るがさっき入れたスーツには触れられない。

怖いので肘くらいまで入れたところで引き抜いてしまったが、これは未来道具のポケット的なものなのかね。


うーむ

スーツを取り出す。とか念じながら出せばいいのだろうか?


どうやら正解だったようで、今度は入れた手にスーツの感触が触れたので引きずり出してみると、さっきまで持っていた汚れたスーツがそこにはあった。


ふむ。

いいね。


これから森を抜けなきゃいけないという所で荷物の重さを気にしないで持ち歩けるのは助かる。


他に鞄に何かが入っていないかを確認しようとしてみる。

何が入っているのか。と思いながら手を入れてみると、鞄の中に入っているもののリストが頭の中に浮かぶ。


やはりびっくり道具だった。


鞄の中に入っていたのは以下のもの。

・お金(金貨、銀貨、銅貨がそれぞれ5枚づつ)

・手紙

・保存食(3食分)

・ランタン(魔法道具っぽく、火種がなくても明かりがつく)


お金は助かる。

これで街まで行ってもなんとかなるかな。


鞄の中に入っていた手紙は扉のところの張り紙を書いた人物のものであろう文面が書いてあった。

そこには以下の情報が書かれている。


・この鞄が扉に書かれていたたからさがしの景品らしい。おめでとう!とかでかでかと書かれているのがイラっとする。

・小屋からあぜ道を通り2時間ほど歩くと街道に出るので、さらに街道沿いに2時間ほど歩くとアルファミラという街に着く。

・街に入る際、身分証が必要になるが、なくても入場手続きをすれば入れる

・もし冒険者ギルドにいくのであれば、リオナという受付嬢のところに行くべし


小屋出てから4時間は歩くのか。。。

俺のこのぽっちゃり体型には4時間の徒歩はきついぞ。


とはいえグダグダしててもしょうがないから歩き始めるしかないか。


----


小屋を出てすでに2時間。

いまだ森の中にいる俺です。


2時間歩けば森抜けるんじゃないんかよ!!


道自体はじゃっかん下り坂だからまだ楽なんだけども。。。

そろそろ足が痛くなってきた所で適当な湧き水が出ているところを見つけたので腰を下ろし休憩をする。


「というか道はほんとにこれであってるんか。。。?」

『くすくす。街に向かう道ならこっちであってるよー。』


!?

なにやつ!?


キョロキョロしても誰もいない。

なんだ空耳か。


『くすくす。いつぞやのおにーさんと同じ反応だねー。』


!!!

やっぱり聞こえる。

幻聴の割にはしっかり聞こえすぎている。


「どこの誰かは知らないっすけどどこの誰っすかね?」

『くすくす。なんか文章がおかしい気がするけどそんな混乱するほどなのかな?』


やかましい。


『くすくす。みんなのアイドル、水の精霊ちゃんですよー。』

「。。。精霊?」


精霊ってなんぞ?

幽霊みたいなもんか?


『くすくす。幽霊扱いされたのは久しぶりだなー。』

「なんで声に出してないのに返事してるんだよ。。。まぁいいや。んで何か用があるのかな?」

『くすくす。用なんてないよー。私のところにあなたが来て呟いていたから返事してみただけー』


さいですか。。。


「で、方向はあってるということだけど、あとどれくらいあるのかわかる?」

『くすくす。おにーさんの歩く速度なら街に着くまであと3時間ってところかなー。途中で馬車とか拾えるといいねぇー』


まじか。あと3時間もか。。。


「アルファミラの街ってのはそんなに遠いのか。。。合計で4時間じゃなかったのかよ。」

『くすくす。アルファミラの街まで行くならあと一ヶ月は歩かないとつかないよー』


???


「ん?どういうことだ?」

『この森を抜けて山の麓にある街はダンゴールっていう街だよー』


なん。。。だと。。。。


「この森を抜ければアルファミラにつくと教わってきたんだが違うのか?」

『ちがうー』


手紙には最後のトラップが仕掛けられていたのか。。。迂闊であった。

もうあの手紙の主は信じねぇ!!!


『ダンゴールの街に行くならその泉の裏にあるあぜ道通っていくと少し近道だよー。』

「ほう。なるほど。助かる。」

『んじゃぁきをつけてねー』

「あ、ちょっとまって!!!」


これだけは聞かねばなるまい。


「メガネは。。。メガネが似合う子はそこの街にいるか!!!」

『メガネというものがよくわからないけどー。可愛い女の子はいっぱいいると思うー』


YES!YES!YES!!

これで勝つる。


血の涙を流す勢いで喜んでいると、

『。。。水の精霊ちゃんはなにやら身の危険を感じたので逃げます!じゃあねー』

などと言って声が聞こえなくなってしまった。


。。。

はい。


自重しないとな。。。。とでも言うと思ったか!!

自重などしない!!


むしろ街に向かう気力が沸いた!


まっててねー!かわいこちゃんたち!!!


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