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種(はじまり)【生命を内包するカケラ】

「根拠を、聞こう」

 彼は王をにらみつける。

「吾らの記憶の中でドームの失敗と生き物の絶滅、ドームを守らんがために四人が消滅したことは抜きん出て強いイメージとして残されている。

 それが四天王という形に置き換えられたとする。このような者が常に踏みつけていなければならない存在とはなんだと思う?」

「失敗による犠牲者を出しかねない、悪の根本を押えこまんがための象徴か?」

「この姿が悪の根本の象徴に見えるか? どう見てもとうの昔に力を奪われ、下僕のごとく扱われている存在に過ぎん。

 だがなぜそんな抵抗できぬ者を踏み続ける必要がある? それは逆に踏みつける者の矮小さをさらけ出しているようなものであり、仏と崇められている者がすべき行為ではない。悪であっても踏まれたままでは帰依……改心しようにもできないではないか。

 だが、天の邪鬼は最初からこの姿ではなく、歴史をさかのぼるほど変化することを知っているか? 例えば日本では古い仏閣の四方の柱の基礎石に使われているものを指す……地震の多い国の神聖な建物の重要な基礎には、揺るぎない磐石たる願いがこめられているにも関わらずだ。

 さらに中国の兵馬俑坑から出土した像は勝者を担ぎ上げて喜びを分かち合う姿……チャンピオンを抱き上げるトレーナーのような姿で表されている。

 ゆえに悪の根本などではなく。揺るぎない大きな力を持ち、すべての基礎をつくりだした存在であることが時代とともに次第に忘れさられ、すり変わり、理解し難い厄介な存在として恐れられるに至ったというわけだ」

「吾を恐れていると?」

「そうだ。踏みつけている者が立ち上がり、力を取り戻すことを……崇める者に押えこまれ、矮小な姿を与えることでひと時の安堵を得ているにすぎん。四天王は四人がかりでオマエ一人を押さえつけているということだ」

「なぜそれほど恐れる? 吾は確かに人間より多くのことをできるが、ヌシたちから見れば力など無きに等しいのではないか?」

「今でこそそうだ。月を動かすほどの精神を……命を削り落としたオマエが生きていたこと自体奇跡であり、さらに力が高まりつつありはするが、オマエが力を取り戻すことや、その力の大小に恐れているわけではない」

「では、いったい何を恐れている?」

「……ドーム失敗の後、何もしなかったこと。オマエだけがなんとかしようと立ち向かった時も何もしなかったこと。オマエのやろうとしていたことを知りながら反対しなかったこと。そして最終段階を実行したこと……。

 自らの中に隠した良心の呵責を認めることを、人間となった吾々は無意識に恐れている。それゆえオマエにすべての罪をかぶせ闇に葬ろうとした。オマエを、もう戻ってこない四人の足もとに配し、同様に二度と戻らんことを願って……戻ってこられるとバツが悪いというわけだ。

 認めるがいい。オマエの正体は吾らの後ろめたさからおとしめられた天の邪鬼だと!」

 王に告げられ、はっきりと感じる。自らの正体を。

「……そうか……天の邪鬼であったか……よかろう、吾は天の邪鬼である!」

 彼は空に向かい、大声で宣言した。

「しかし、吾が天の邪鬼ならば昔語りの瓜子姫や弘法大師の伝説のことなど知らぬぞ」

 彼は広く知られている瓜子姫伝説……詳細は各地方で違っているが、ある家の娘を殺して生皮をはがしてかぶり、娘になりすまして父母や老父母の帰宅を待ち、ケモノの肉と称して彼らに食わせてから今喰ろうたのは娘の肉だと告げ、その後、天の邪鬼もしくは娘の体が切り刻まれて田畑に蒔かれると様々な食物や価値のあるものが生えてくるというもの。

 さらに、朝までに弘法大師が橋を完成できるかどうかを賭け、完成直前に天の邪鬼がニワトリの鳴きマネをしてだましたという二つの伝説をあげると王はうなずく。

「承知している。瓜子姫伝説はやや根が深い。かつて干ばつなどによって幾度となく飢饉に見まわれた歴史があった。

 食うものがなくなり障子に張った紙や、土壁に混ぜたワラまで掘り返し、遂に最後の食べ物にまで手を出さなければならなくなった時……知っていよう? 最後の食べ物とは」

「曼珠沙華……彼岸花だ」

 彼がヒガンバナをイメージすると、周囲にまっ赤な絨緞が広がっていく。

「ヒガンバナにはリコリンという毒があるため食中毒の原因ともなり、死人花、捨て子花などとも呼ばれていた。

 今でこそ季節の風物詩になってはいるが、本来自力であれほど増えることはなかった。そのような悪評を受けながらも人の手によって増やされていったものだ」

 彼岸という縁起のよくない名前をつけ、毒があることを利用して普段の食料にさせず、いざ飢饉が訪れた最後の時になって食べ方が明かされる……天明の飢饉でも実際に生き延びた村の記録が残されている『救荒植物』だ。

 ヒガンバナを食べてしまえば、その先に食べ物は残されていない。季節はその後、冬を迎える……後は飢えて死ぬだけの彼岸への最後の食料という意味だ。

「……ここまでであれば、もの哀しき花と思えんでもないが、ヒガンバナを食べつくした後にもう一つ、本当に最期の食料がある……」

「うむ。世界各地にそれはあった……風習として行うのであれば違和感はないが、普段行わぬ者にとってはあらがい難い嫌悪を伴う行為だが、一度禁を破れば二度、三度……やがては飢饉が訪れるたびに習慣化しかねないものともなりかねない」

 天の邪鬼の言葉に王もうなずく。

「彼岸花を最後の食糧とするのもわざとかもしれん。花の色がまっ赤であるがゆえに……瓜子姫伝説は体力的に弱く先に死んだか、もしくはその手で娘を死に追いやり、喰ってしまったことを、自ら意図したのではないと置き換えたものか……生き延びた者は飢饉が去った後、普段のありがたい食糧を口にできるというわけだ。

 一人に犠牲を強いて残りの者には幸福が訪れる……これに似た伝説は世界中にあり、ハイヌウェレ型神話とも呼ばれている。まさにオマエと同じではないか。人間は、つまり吾らは昔から懲りることなく同じことを繰り返しているのだな。

 また、弘法大師にしてもまったく逆の話もある。大師にさせたのではなく、オマエが橋をつくっていたが途中でイヤになり投げ出したり、天に昇ろうとして石を積み上げていたが残りわずかなところで届かなかったりなどだが、どれも共通しているのは『完成直前で最後までやり遂げられなかったこと』だ。

 これも吾らの後ろめたさと関係する。きっかけをつくったのはオマエだが、結局、最後の仕上げを成したのは吾々だという、つまらぬ自意識からだな」

「ヌシ自身はどうなのだ? 他人事のように話しておるが、吾をおとしいれ、恐れているようには思えぬ」

「オマエが吾の知るものである限り、恐れる理由など何もない」

 鼻であしらう王に彼は苦笑する。

「各地に残る天の邪鬼伝説はどれも吾の身に覚えのないことだが、なぜこれほどまでに多いのだろうか?」

「伝説や神話は一つの出来事が姿形を変えながら民俗的に広がったもので、何より人間はアマノジャクな性格を持つ者が多い。

 一方で古事記、日本書紀などには天探女(あまのさぐめ)の名でも記載されている。また天照大神に差し向かわされた天若日子(あめのわかひこ)を『天若』(あまんじゃく)と呼んだとする説や天若日子に仕える天探女が原型であるとする説もあり、仏教では毘沙門天の腹を守る鬼面を海若(あまんじゃく)とも呼んでいた。戦において最も重要と考えられていた腹部『胆』に、なぜ嘲る者の名をつける必要がある?

 それらわけの分からんものをひとくくりにしてすべて天の邪鬼の仕業とした。本人が知らぬうちにな。まあ、それくらいは大目に見てやるがいい」

「勝手なことを。が、もとより眼中にない。吾が何ものか知ったことは喜びではあるが、知ってしまえばあっけないものだな」

「存在とはそんなものだ。自らは今ここに在る己でしかない。その自らが何を考え、何をしたかに価値がある。例え記憶を失ったところで、かつてオマエは何かを成した。そしてこれからも何かを成すだろう」

「何かを成した記憶がなく、何をすべきか分からぬ吾に、何ができると言うのか?」

「それこそオマエが次に求めるものだ」

 笑いながら立ち上がる王につられ、天の邪鬼も立ち上がる。

「名前やかつての行いは、つけられれば、教えられればそれまでだ。だが自らが成すべきことを見つけるのはたやすいものではない……いや、それすら見つけてしまえばあっけないものなのかもしれんな」

「ヌシは見つけておるのか?」

「もちろんだ」

「争いの世界の王であることをか?」

「争いの世界だけではない」

 皮肉げに笑う天の邪鬼に、王は笑みを返しながらすべての腕を広げて見せた。

「なぜ吾の腕が六本あるのか知っているか? 吾らの中には腕一本で二十五人もの者を救えるものもいるが、救えるのは天界、人間界に住む者に限られている。

 吾が担うのは一本で一人救えるかどうかも分からん世界だが、それでも地獄界、畜生界、餓鬼界、修羅界、人間界、天界に住むすべての者に手を差し伸べてやりたいからだ。

 吾が争いの世界の王であるのは、ここに住む者だけでなく、それより下の世界に住む者も救える……下から上は救えんが、上から下は(すく)えるのでな」

「なぜ救いたい? そこに住む者は自ら望んで住んでおるのであろう。無理に引き上げられれば苦痛となるだけだろう」

「気づかんところから手助けするだけで無理はせん。自転車でも最初は補助輪や手助けが必要だ。慣れて走り出すことができればその必要もない」

「救う相手に知られずともか?」

「報われんことが多い役目だ、たがいに知らんほうがいい。何より吾はこの役目を気に入っている。でなければ何百万年も続けたりはせん」

 ……争いの世界で何百万年も、修羅を餓鬼を畜生を地獄を見守ってきたのか。どれほど悪し様な物言いをしようとも純粋なのだな。それゆえ少女の姿をしているのか。

「元々すべて吾らだ。吾らが物理的な形を持ち、その時々の思いに姿を変え、形を変えて存在しているにすぎない。そして、修羅がいなければ争いが恐ろしいものと分からず、強欲、憤怒、驕り、嫉妬、大食、好色、怠惰などがあさましいものと分からず、地獄が恐ろしい場所であることが分からん。

 あやつらは自ら修羅を地獄を体現することで、手本を示してくれている。ゆえに、すべての人間の手本となる世界だ」

「すべてが役目であり、手本であると……」

 つぶやく天の邪鬼を見ながら、王は竹筒の水を飲み干す……ずっと握っていたため、少し温かくなっていた。

「これですべて話した。そろそろ吾の担う世界を見守ってやらねばならん」

「教えてくれて、礼を言う」

「オマエとは長い縁だ。今後も幾度となく巡り合うだろう。いつの日かオマエの役目が見つかることを祈ろう」

「吾こそいずれ、六道に住むすべての者が救われることを祈ろう」

「断る、吾の役目がなくなるではないか」

「ならば、新しい役目を見つけるがよかろう」

 たがいに笑い合った時、銀色の球体が頭上に姿を現した。

「いかん、咲由に戻れ天の邪鬼! 吾といたので見つけるのに手間取っていたようだが、オマエは侵入者と見なされる」

「こやつは何物だ?」

「他の世界から侵入したものに無差別攻撃を仕掛ける自動攻撃体『選バヌ』だ」

 しかし、選バヌは天の邪鬼の正面に浮かんだまま何もせず光を明滅させた。

「アナタハ抹消サレテイルガ、ココニ存在スル。何モノカ?」

 機械相手ではあったが、これまでそれを問い続け、名のることができなかった天の邪鬼に嬉しさがこみ上げる。

「よかろう。吾の名は天の邪鬼だ」

 答えを聞き、また光を明滅させた。

「天の邪鬼……記録ト一致。スデニ登録ハ抹消サレテイマス。認メラレマセン」

「吾はまぎれもなく天の邪鬼であり、ここにいる。抹消を取り消すか再び登録すればよかろう」

「一度抹消サレルト、取リ消シハデキマセン」

「よせ天の邪鬼、選バヌは侵入したものを排除する判断しかできない。それにオマエが攻撃されても手助けすることはできん。吾らには選バヌのジャマをしてはならん決まりがある」

「手助けなどいらぬ。せっかく名のることができても受け入れられぬとは」

「今のオマエは咲由の体を使っている。オマエの受ける傷は、咲由へも与えられるぞ」

 王が言うより先に選バヌの銀の棒の一本から天の邪鬼の足もとに光が放たれると、袴が焦げ、土が溶ける。

「警告。コレヨリ侵入者トミナシ攻撃スル」

「吾に攻撃とは、愚かな」

「やめろ、すぐに咲由に戻れ!」

 王の叫びを無視して天の邪鬼は選バヌと対峙する。本来、彼は無謀なことはしないが、今は引くわけにはいかない……探し続けてきた自らの正体を知った直後に真っ向から否定されたことが逆鱗に触れたのだ。

 輝きながら回転する選バヌから幾条もの光が放たれ、着物のあちこちを焦がしながらも間合いを詰める。

 選バヌはさらに輝きを増し、体当たりをかけようとする。全身にあの光を当てられたも同然だ。王の脳裏に焼け焦げる天の邪鬼の姿が浮かんだその時、選バヌの輝きが途絶え、地面に落ちた。

「な、何?」

「ふん、この世界は思うものが即、形となるのであろう」

 冷ややかに言い放つ天の邪鬼の足もとに転がる選バヌには、同じ銀色の輝きを持つ無数の鎖が絡まっている。

「いかなる力を持っていようと、自らと同じ素材に絡め取られては思うように動けまい。回転していたことが命取りとなったな」

「動けんとはいえ、なぜ攻撃をやめた?」

「したくともできぬ。こやつは今、絶対零度で凍りついておるのだ」

 大笑いする彼をしばし見つめていた王も笑い始める。

「あきれた、いや、さすがと言うべきか。選バヌの攻撃を受け、返り討ちにした侵入者は前代未聞だ。オマエに謝らねばならんな」

「何をだ?」

「戦うなと言ったことだ、オマエの力を見誤っていた」

「謝ることなどない。こやつに判断力がないことを教えてくれたではないか」

「選バヌには反撃に備え、思ったことを形にできん遮断装置が組みこまれている。それをなんなく打ち破ったことに驚いている」

「返り討ちにしたところで意味などない。吾はこの世界に受け入れられぬようだ……。どのみちこの世界での記憶がないゆえ未練も感じぬ。これまでどおり物理的な世界で暮らすことにしよう」

「……いや、まだあきらめるには早いぞ」

 王は神妙に告げる。

「何か手があると?」

「物理的な世界に咲由がいる以上、この世界にオマエがいても構わん、ということだ」

 天の邪鬼は眉をひそめる。

「しかしこやつは吾を否定したであろう」

「否定されるオマエしかいないということだ」

 王はまた問答のように答える。

「考えるほどのことではない。オマエはかつてこの世界にいたものではなくなっているというだけだ。今のオマエそのものが記録されればこの世界はオマエを受け入れるだろう」

「今の吾……か。それこそどうすればよいか分からぬ」

「かつてのオマエが本当に失われたのであればオマエは赤子の姿を選ぶ。だが、オマエはその姿を選んだ……吾らは意思のみの存在だ。姿そのものが本人の意識、記憶を表している。ならば中身が変わったとしても、受け入れられる余地は必ずあるということだ」

「理屈では、そうであろうな……」

 あきらめ気味に答える天の邪鬼に、王は冷ややかな視線を向ける。

「つまらんな。覚えていなくともオマエはもっとあきらめが悪かったはずだ。他の誰もがあきらめようとも、決してあきらめないしぶとさはどうした?」

「あきらめなければならぬこともある。永く物理的な世界で暮らした吾はそれを学んだ」

「それは惰性だ。オマエは本当にあきらめなければならないものと、そうでないものを見誤っている。仮に過去にさかのぼって自らの行いを見ることができれば思い出すかもしれんぞ……オマエに記憶がなくとも、かつてのオマエにはあったのだからな」

「確かにかつてはあっただろう。しかし、ここで言っても話にならん。過ぎ去ったものは取り返しようがない……いや、待て」

 妙に食い下がる王に、彼はふと思いつく。

「吾は過去にさかのぼることができると?」

「……望むのであれば過去にさかのぼり、自らの行いを見届ければいいだろう」

 彼の反応に、王は安堵の笑みを浮かべる。

「時は逆行できるのか? 行われた行為はやり直しがきかぬであろう。そもそも同じ時間軸上に同じものが二人いることは危険なのではないか」

「吾は以前にこの世界と物理的な世界の時間の流れを変えてきたことは話しただろう。それと同様に、過去にさかのぼり行われた行為を含め、今ここにある世界が存在しているのであれば、過去への干渉は行われるべくして行われた行為と言えよう。逆に言うなら未来から過去に干渉しなければ、その後、正確な未来にはつながらないと言えるではないか。

 そして同じものと言うが、人間ならば双方の肉体の老若の違いによって明らかに別の存在であり、意思そのものである吾らは、意識の違いそのものが二つを区別する決定的な違いと言える。それこそオマエ自身が過去の自らとどれほど隔絶しているか実感しているだろう?」

「……確かに。ならばどうすれば時間をさかのぼれるというのだ?」

「吾らは物質に束縛されない存在だ。空間の概念がないように、時間の概念を取り払えば、思いがその時へと自らを運ぶ」

「吾が記憶を失う二億五〇〇〇万年以上前にも戻れるのだろうか……」

「これは賭けだな。する、しないはオマエに任せる」

「……しかし吾を知るために残された道はそれしかあるまい……」

「月の衝突後、最初にオマエを発見できたのは、あのアフリカのムラでのことだ。万一パラドックスがあったとしても、それ以前ならば問題なかろう。安心するがいい」

 王は彼をずっと捜し続けてくれていたとの言葉に、胸に熱いものがこみ上げたが、気づかないフリをして言葉に従い心の中にある時間の概念を取り払っていく。

「難しく考えるな、永遠を生きる吾らにとって元々時間など意味を持たん。もし記憶を取り戻せず、再びここへ戻ってきたのならば裏口へ行け。そこにも自動攻撃体はいるが、多少の判断力は与えられている。上手く言いくるめるがいい」

 ……そうだ。時間など意味がないのだ。

 天の邪鬼は力を抜いて時間の枠をぬぐい去ることだけに集中した。

 やがて、天の邪鬼の姿がぼやけ始める。

「もう始まりおったか」

 王は嬉しそうに笑う。時間の概念を取り払えと言われたところで、何百万年も人間とともに生きてきた癖など簡単に抜けるはずのない彼が、ものの数分で時間をさかのぼるすべを取り戻している……おかしくてしょうがない。

「行くがいい。そしてオマエのなすべき役目を果たせ……」

 ぼやけ、ブレる彼を見ながら王はつぶやいたが、その声はもはや彼に届かない。ブレが大きくなるほど姿が薄くなり、やがて、消え去る。

「気づけ、真の己に。今はまだ天の邪鬼と呼ばれる厄介ものよ」

 つぶやく王は、ほっとため息をつき、晴れわたる空をまぶしそうに眺めた。


 光も射さぬ狭き世界で、亡者たちは絶えず他人を罵る言葉をまき散らしていた。

 ここに暮らす者にとって最も悦楽を感じる場所。罵りと悪臭と汚物が充満した世界にひと筋の弱い光が射しこむと、亡者たちは苦しみ、恐れ、怯え、泣き叫ぶ。

「このような弱き光さえ受け入れられぬか」

 自らの内より湧き出る光を弱めながら、そのものは残念そうにつぶやく。

 いつものことだが、決してあきらめない。ムダではない。何千年かかろうとも、続ける限りいずれ光は亡者に届く。何百万年も続けてきたからこそ確信している。徐々に受け入れる亡者は、受け入れる光が強くなるほど少しずつ心地いい光の世界へと自ら導かれて行くのだから。

 そんな亡者を救いたくて、たった一人この世界で救済を続けてきた。

 だが本当に独りぼっちではない。理解してくれる友もいる。この永きにわたる時間の中で、友はどれほど遠くに感じても……亡者に届けられる弱々しい光ほどに感じられても、時に弱気になりそうな心を奮い立たせてくれる支えであった。

「久しいな、相変わらずやっているな」

 背後からの声に振り返ると、友が微笑みながらたたずんでいた。少女の姿を持つ友は、いつも突然現れる。

「これがわしの望んだ役目であるゆえ、仕方なかろう」

「仕方ないか。吾らは自らの意思の赴くままにしかいられん。オマエはこの役目を担うことが自らの意思だ。仕方ないとは片腹痛い」

「なんの、おヌシこそ相も変わらず六道をウロウロしおって、少しは亡者を救う手伝いでもせんか」

「ははは、この世界でオマエの役目を取り上げる真似などしない」

 いつもの言い様に微笑む。どれほど口が悪くても友は自らを認めてくれているのだ。

「……亡者とて自ら望んで亡者となることを選んだ、その者たちをわしが一方的に考える救いという道へ導くのは自然の流れに逆らうことであろうか?」

「ほう、珍しく弱気だな。自らの行いに疑問があるなら、やめてしまえばいい。一人亡者を救えば聖者も救われる。それで世界のバランスが保たれることは知っているだろう。オマエは亡者を救い、他のものは人間を救い聖者を救うだけだ」

 あっさり言い放つ友に嬉しそうな顔を向ける。

「ふふふ……わしが弱気になった時、おヌシはいつもそうやって励ましてくれるな……最後はいつもこうだ。

 ……亡者も聖者もともに救えば、どちらも救われる。わしらの行いは人間そのものを底上げしていると同時に、吾々の成長をも促しているのだと……」

「分かっていてなぜ迷う? これは吾らが選んだ道だぞ」

「ああ……分かっている」

 ……迷いなどない。それは間違いない。ただ、時に心をよぎるこの行いのあまりの手ごたえのなさから頭をもたげる喪失感に、友の叱咤にも似た励ましが欲しかったのだ。

「それはそうと、あやつが天の邪鬼であることを自覚したぞ」

「なんと! では真の己に気づいたと?」

「いや、それはまだだ。天の邪鬼であることを受け入れただけで、真の己はまだ思い出していない。ゆえに今、過去にさかのぼり自らの行いを見届けに向かっている」

「真の己に気づきもせずに、あれほどの過去にまでさかのぼれるだろうか」

「できるだろう。自分でもそれほどさかのぼれるとは思ってもいないだろうがな。なんせ選バヌを返り討ちにしたほどだ」

「なんと!」

「次に戻ってくる時は、本来の能力を取り戻せるほど力をつけているはずだ」

「それではここへもくるだろうか?」

「あのへそ曲がりがこないはずなかろう」

「ふふふ……そうだったな」

「それを伝えたかった。では、吾は戻るぞ」

「ああ、教えてくれてありがとう」

 友は返事もせずに自らの担う世界へと消える……王であるため、長時間別の世界にいることができないのでは仕方ない。

 身動き一つ取れない狭く暗い大地のヒビのすき間で、己を省みず他人を恨み妬むことしかできない亡者。自分にとってこの世界こそが極楽であると感じている者にとって光は苦痛以外の何ものでもない。

 そのうちの一人に、先ほどよりもっと弱々しくゆるやかな光を浴びせると、ほんの少しだけ罵声が小さくなった。

 ……よい日かもしれん、今日は。

 救いようのない者だけが堕ちる世界に暮らす者たちをなんとか救おうと、自ら地獄に降りることを望んだものは、もう一人の友が記憶を取り戻す期待に心を弾ませていた。


 これまであらゆる空間をさまよっていた彼は、誤って自らとぶつからないよう成層圏まで昇っていた。地上では歴史が早回しで逆送りされていく。

 人間の始まりが過ぎ、ほ乳類の時代を過ぎ、太古の生物がかっ歩する時代も通り過ぎる。

 ……これほどまでさかのぼれるとは。

 やがて地球からまっ赤に燃える隕石が次々と赤く燃える月に昇り、輝きを増してまっ赤に光った瞬間、見慣れない少し小さな月からもっと小さい月だったものが離れていく。

 ……太古の地球の天空とはこのような姿であったか。

 初めて見る姿に感慨深くじっくり眺めようとしたその時、全身に強い衝撃を感じた。

《……動け!》

 ……なんだ? 何が……そうか! この時すでに吾が月を動かそうとしていたのか!

《……動け!》

 頭の中いっぱいに声が響く。

《……動け! 動け! 動けええええ!》

 思考を奪われ、朦朧となった。

 全身全霊をかけて成し遂げようとする声……自らであったものに共鳴した天の邪鬼も渾身の思いで念じ続ける。

《《……動け、動け、動けええええ!》》

 何かが確かに動き……意識が途切れる……。


 気がついたのはどれほどたってからであろうか……木や草も生えていない平原に、ばらばらに引きちぎられた咲由の体から天の邪鬼だけが抜け出して立ち上がった。周りを見わたすと、本当に何もない平原だったのか……たくさんのクレーター跡がある。

 ……ここはどこであろうか……?

 しばらく眺めていたが、ここが地上であり、さかのぼったよりもはるかに古い時代にいることが感じられた。

 ……うむ、約六億年前の太古に弾き飛ばされてしまったようだ。

 意思である吾はなんともないが、咲由は……すまぬことをした。だが吾の中には咲由の意思が眠っている。王の世界に戻り、咲由の体が蘇るよう強く思えば生き返る。

 ……しかし、咲由がかつてあれほど自らが失われること望んでいたのは、太古においてすでに物理的な世界での体が失われていたことを感じていたからなのだろうか……。

 元の時間に戻りかけた天の邪鬼はふと、自らの中に奇妙な感覚があることに気づいた。

 なんなのか分からないほど小さなものだったが、確かに感じられる……はるか昔、アフリカの地で目覚めて以来、決して感じることのなかった思い……自らの内から欠けていた喪失感が埋められたような感覚。

 ……二人の天の邪鬼の接近によって、いくつかの出来事が起こされていた。

 過去の自身に加担し、『動け』という純粋な思いが倍増されたこと。

 動けという思いそのものになっていたが、未来の自らが同調したことで、月の中にいた思いの一部が引き寄せられ、未来の天の邪鬼に衝突して突き抜け、地中深く埋まったこと……遠い未来で目を覚ました天の邪鬼とは、深い地の底に残された過去と未来、二人分の欠片が種となり芽吹いたものだったのだ。

 ……もしかすると、記憶を取り戻せるかもしれぬ。

 目的は果たせなかったが、咲由の体を失わせてしまった後悔と、自らの内にある記憶の種に期待を抱き、彼は時代を先に進める。


 永い時を通り過ぎ、よく知っている月や大陸や動植物が現れると、天の邪鬼はようやく安堵を覚えた。記憶を失い、目覚めてからこれまで多くのものを見てきたつもりだったが、人間が旅から帰った時に感じる思いに似たもの……住み慣れた家が一番いいと感じること……自らの人間臭さに思わず苦笑する。

 同じ時間に出くわさないため、さかのぼるよりも少し後の時間に戻った天の邪鬼は、王の指示どおり裏門から入ることにした。ここにも門番はいるが、正門ほど融通が効かないわけではない。かつて幾人かの者が門番をだまし、手なずけた記録もある。

 ……選ばれた者のみを通す『選バレシ』とはどのようなモノであろうか。

 裏門には老若男女、年齢、国籍に関わらず多くの者たちがつかえることなく中に入っていく。天の邪鬼はその中の一人に注目した。明らかにこの世界の住人ではない。誤って入ったか意図的に侵入したものだろう。

『それ』が門の境界を越えると、それぞれ細い棒が一本ずつ伸びる三つの球が連結し、中心から四本の触手が垂れ下がる銀色のモノが現れた……選バレシだ。

「警告。アナタハコノ世界ノ存在デハナイ。本来ノ世界へ帰ラナケレバ攻撃ヲ開始スル」

 だが、それが警告を無視して中へ駆けこもうとしたとたんに、細い棒から光線が発射され足もとの地面を焦がすと、足をすくませて立ち止まったところへ近づいた選バレシの触手が触れたそれは体を硬直させて倒れる……触手で持ち上げてどこかへ運んでいく選バレシ……門には新しい門番がやってきた。

 ……ふむ、装備は剣の炎と電気ショックか。

 見届けた天の邪鬼が門の中へと足を踏み入れると、選バレシが正面に立ちはだかる。

「警告、警告。アナタハコノ世界ノモノダガ、登録サレテハイマセン。何モノカ?」

「吾の名は天の邪鬼。抹消されたものだ」

「抹消データ確認。天の邪鬼、照合ト一致」

「一致したのであれば入ってもよかろう?」

「抹消サレルト再登録ハデキマセン」

「では確認してくれ。『じゃく』の文字はどうなっている?」

 先ほどは自分が何ものか知った直後であり、出鼻をくじかれカッとなったが、今度は楽しむつもりでいた。

「再確認、『邪鬼』トアリマス」

「うむ。吾は抹消登録されたものではなく、『天の咲久』だ。一致するものはおるか?」

「名称ヲ確認、一致スルモノハ、イマセン」

「ならば吾はこの世界のものであり、他に一致するものがおらぬわけだ。そもそもキサマはこの門から死者の魂を迎え入れているのであろう。天の邪鬼は抹消登録された、つまり殺されたのだ。死んでここへきた吾を歓迎せねばならぬはずだ」

 選バレシは混乱し不規則に回転する。選バヌより判断力は与えられているが、複雑な判断まではできないようだ。

「もう一度確認する。吾の名は天の咲久、それ以外の情報はすべて天の邪鬼と同じだ。登録するがよい」

「シ、新規登録、天の咲久。ソノ他データハ抹消登録サレタ天の邪鬼ト、オ、オナジ……」

 あまりの単純さに笑いを押さえきれない。なるほど、だから選バレシは人間の姿が与えられなかったのだ。それよりも王だ。こうすれば簡単に登録できることを知っていたに違いない。

 すぐさま王の担う世界へと向い、ひとこと文句を言ってやったが、王はやはり鼻で笑って聞き流した。あきらめて天の咲久は時間を超えて見たこと、咲由のことや記憶の種のことなどを話す。

「そうか……咲由の体を失わせたか。まったく、人間が成層圏から落ちて助かるはずがなかろう。地に足の着く場所でやるべきだったな」

「そう言うな。吾とてあのようなことが起こるとは思いもよらなかったのだ」

「それを事故というのだ。はっきり言って失態だな」

 悪態をつきながらも王は笑っていた。

「何を笑う?」

「吾がなぜ咲由を守ってやらねばならなかったのか……吾の世界の混乱を治めるためだとばかり思っていたが、ようやく分かったのでな」

「どういうことだ?」

「オマエが気を失って弾き飛ばされた年代はいつだと言った?」

「おおよそ六億年前だ」

「その時代に地球に何が起こったのか知っているだろう?」

 天の咲久の全身に電気が走る。

 咲由の体がまき散らされた約六億年前……五億七五〇〇万年前といえば、氷結期を終えた地球にあったゴンドワナ大陸が分裂を始めたため、栄養豊富な暖かい浅瀬ができ、生き物が爆発的に増えた時期だ。

 人間の研究のひとつに地球に落下した隕石に含まれるアミノ酸が生物の進化に影響を及ぼすというものがある……それならばその時代に人間一人分のアミノ酸や遺伝子がまき散らされたなら、その後の地球の生き物にどれほど影響を与えることになるのだろうか。

「オマエとつながっていた存在というだけではなく、地球の生き物にとっても必要不可欠な存在だったというわけだ。瓜子姫伝説やハイヌウェレ神話など、死んで埋められた者の体から人間に都合のいいものが生えてくる話はなぜ生まれたのだろうな。

 咲由の体は太古の地球に人間の祖先が生まれるための種だった……吾もオマエも知らぬとはいえそれに関わっていた。まさにうってつけだな。人間をつくり守ったオマエは、はるか未来からやってきて太古の昔に人間の種を蒔いていたというわけだ」

 王の言葉に天の咲久は歯がみする。人間をつくり出したことも守ったことも後悔していないが、うかがいしれないところから操られているような『運命』という得体のしれないものが面白くなかった。

「そうイヤな顔をするな。これが運命なのであれば、それはオマエ自身によって紡がれたものなのだからな」

「吾自身に?」

「他に誰がいる。ものごとが自分の思うように行かなかったからといって、責任を自らの手の及ばない何ものかに押しつけたいとでも言うのか?」

「ふざけるな。それならば何も問題はない」

「問題がないなら考えてみろ。自分の紡いだ運命が自分で解けんはずがない。常にその先の道は示されているはずだ」

「道は示されている……それはいったい」

 王はとまどう天の咲久を眺めながら、これ見よがしに笑った。


 ふと目を覚ました咲由は、なぜ海岸沿いの小屋ではなく自分の部屋のベッドで眠っているのか不思議だったが……それが当たり前だと気づき、一人で照れ笑いする。

 時刻は朝の四時前……起きるにはまだ時間がある。机の上には昨日買ってきた恐竜の本が置いてあり、あれだけ楽しみにしていたのにどうして読まなかったのか思い出せなかったが、なんだか恐竜の夢を見た気がする……それ以外はとてもリアルな夢だった。

 王と名のる少女に連れられ争いの世界へと赴き、世界の成り立ちを教えられていくつかの世界を案内されているうちに気がつくと美しい海岸で、南国の小屋にハンモック……。

 ベッドの隣で、むくが専用のベッドで寝息をたてているのを見てクスッと笑う。まさに夢そのもの。それにしてもあの海岸……潮の香り、太陽の輝き、カラリとした空気。

「また、行ってみたいな……」

 あの海岸の夢が見られることを願い、もう一度寝直すことにする。今日は芽栄とボランティアに行く日だ。たくさんの人たちとのふれあいが楽しみで仕方ない。

 眠りについた咲由は満面の笑みを浮かべていた。


 天の咲久は王の世界でもう三日、何もせずにいた。

「オマエのほうける姿とは傑作だな」

 笑う王に、天の咲久は視線を向ける。

「種を芽吹かせる方法がいまだ見つからぬのだ」

 確かに記憶の種を手に入れたと感じた。その証拠に咲由はさらに充実した日々を過ごしている。それを実感しながら自分にはなんの変化もないことが、やる気を失わせている要因だった。

「構わんではないか。オマエがオマエであることには何も変わらん」

「吾は記憶を取り戻し、変わることを望んでいるのだ」

 王は鼻から大きく息を吐く。

「変わらんと言ったが、吾から見れば充分に変わったぞ。腑抜け同然にな」

「なんとでも言うがよい。もはや吾には手が残されておらぬ。これから先、何をすればよいのか思案しておるところだ。物理的な世界に咲由が存在する以上、吾がそこへ戻るわけにもいかぬ。他に行き先が決まればさっさとヌシの目の届かぬところへ行ってやる」

 王は思わず吹き出した。

「何を笑う?」

「オマエの人間臭さにだ。期待が外れて落ちこむなど、まったくオマエらしくもない。これまで同様、もう少しあがいてみようとは思わんのか?」

 天の咲久はしばらく考え、苦笑する。

「……そうか、ヌシがそう言うのならばまだ吾にできることがあるのだな? そしてそれをさっさと考えてみよ……と」

「少しは分かってきたようだな。そうだ、もっと単純に考えればよかろう。種が芽吹くには何が必要だ?」

「芽吹く環境が必要だ。水や土、そして光」

「ではオマエの種には何が欠けている?」

 ……吾の種には……もちろん本当に水や土、光のことではない。それと同様の何かが必要だと言っているのだ。ならばそれはなんなのか。

 水とは王のことだろう。疑問に突き当たるたびに問答のように答えを導きだしてくれている……水を向けてくれてきた。

 土とは記憶を蘇らせる、育てる養分そのもの。つまり自分にとっての確固とした足場だ。

 そして光とは吾そのもの。吾の望む希望を表している。芽吹けばそれはおのずと光の方向へ葉を広げる……。

「……土だな。記憶がない吾は、いうなれば根無し草だ。自らの出自が明らかではないため、どこに足を降ろせばよいか分からなくなっておる」

「そのとおりだ。オマエが失ったのは、生まれ変わってきた記憶だけではなく、自身の生まれた意味まで含まれているのだからな。それでは芽吹きたくても芽吹けんだろう」

「吾にとって土とはいったい……」

「会いたいか?」

 あっさり言う王を彼はにらむ。

「まさか、遊んでいるのではないだろうな」

「しばしの遊び、休息は必要だ」

 頭に血が昇りかけたが、言葉とは裏腹な真剣な瞳に、天の咲久は口を閉じる。

「本当に吾にとっての土だと言うのか? 会うても吾に分かるのか?」

「またずいぶんと疑り深くなったな。分かる分からんは吾も知らん。だが相手はオマエをよく知っている」

「もし吾が分からねば、そのものは……」

 天の咲久は珍しく口ごもる。

「ははは、気にするな。オマエとは器の大きさが違うものだ」

 王の言い様に彼は無言で答える……分かっている。わざとそう言って会わせたがっているのだと。

「よかろう。そのものを失望させに行ってやろうではないか」

「ならば、ついてくるがいい」

 きびすを返して歩き出す王の後を、彼はわざと悠然とあとをついて行く。


 空が異常に低くほとんど光の届かない世界を天の咲久は内心不快に感じたが、ここもまたこの世界を好む者にとっての天国であると考え直した。

「……会うても構わぬものか?」

 この世界に暮らすものがそれ以上の世界に暮らすものと会っても平気かどうか尋ねると、王は鼻で笑う。

「臆したか? それともこんな世界に暮らすものに会うのは不快か? 先ほども言っただろう、器が違うと……ふむ、あっちか」

 王が両手を組んで突き出し、周囲の景色が変わると……今いた世界よりもさらに空が低く、ジトジトした汚物にまみれた風一つない黒い大地が広がり、罵声と不満の憎悪渦巻く世界に出た。そこに暮らす者は誰もが大地の亀裂に挟まれ押し潰されて血を垂れ流しながら、ただただ他人を恨んでいる。

 そんなおぞましい光景の中に、たった一つ動くものがいた。王と天の咲久はその姿の近くに降り立つ。

「ここも相変わらずだな」

「そっちこそ……ぬ、おぬしは!」

 王が声をかけたのは、王よりさらに幼い子ども……童子だった。

「とうとう力が戻ったか。いや、おぬしを見る限り、記憶までは戻ったようには見えんな……わしを覚えておるか?」

 姿は子どもだったが、その風格は間違いなく王だ。

「すまぬ、はっきりとは覚えておらぬが……なるほど、これなら分かる気がする」

「分かるとは?」

 彼はまじまじと童子を見る。

「王と同じだ。言いしれぬ親しみを感じる」

 とたんに王と童子は爆笑したが、笑われた天の咲久だけはぶ然とする。

「いやすまん。オマエの口からそんな殊勝な言葉が聞かされるとは思ってもみなかったのでな」

 涙を拭いながら王は笑う。

「まったくだ。物理的な世界で暮らすうちにずいぶん『人間ができた』のではないか?」

「言いたい放題言いおって」

 童子の言い様に、天の咲久はまた口をへの字に曲げた。

「そう言うな。かつてのおぬしを知っていては、信じられん変わりぶりがおかしくてな」

「吾はそれほどへそ曲がりであったのか?」

「……いや、そうではない」

 含み笑いを残しながら童子は口ごもる。

「はっきり言うがよい」

「いやいや、もうよいではないか」

 ……素直に物事を認めようとしない頑な態度が照れ隠しであることを承知しているなどと話せば、一層へそを曲げるに決まっている。

「それよりも見るがいい。おぬしに会ってあまりの懐かしさに失念していた。ここに暮らす者はわずかな喜びや光でさえ恐怖となるのだ」

 亀裂に挟まる者たちは、彼らの喜びに怯え頭を抱え震えていた。

 ……懐かしい、か。

 童子の言葉に天の咲久は微笑みながら奥歯を噛みしめる。

 ……王以外の、本来、吾と同じ世界に暮らしていたよく知っていたはずのものと会うても懐かしさを感じぬとは……。

 改めて天の咲久に孤独感がわき上がる。

「……天の咲久よ」

 童子に呼ばれてふと見ると、彼の思いを悟ったに違いない……無垢の瞳が向けられていた。

「『吾』という思いが生まれた瞬間から誰もが孤独となる。吾以外はすべて『他』となってしまうからな……それはわしも王も同じ。

 おぬしはわしに言いしれぬ親しみを感じると言ってくれたではないか。わしも同じ気持ちだ。今はまだそれで充分とせぬか」

 いつもの天の咲久であれば、勝手をぬかすなと悪態をついているところだ。しかし、この無垢な瞳には……天の咲久の胸に熱いものがこみ上げる。

「すまん! 話の途中だが、急ぎ吾の担う世界へ戻らねばならん。厄介なことが起きた。行くぞ天の咲久!」

 どんな世界に移動しようとも自ら担う世界が見える王は、切迫した表情を浮かべていた。

「まったく、おヌシはいつもせわしないな。さっさと行ってくるがよい」

「待て! ならば最後に名前を教えてくれ」

 王とともに浮かび上がった天の咲久が名を尋ねると、童子は優しく微笑む。

「おぬしが理解するのなら、吾は地蔵。そして悪魔とも呼ばれておる」

「それはどういう……」

「すまんがグズグズしてはいられん。続きはまた……やはりシュネシアとバアルを思うがままに争わせるのではなかった。物理的な世界にも影響が出る!」

 争いの世界に到着すると同時に、王は宙に舞い上がり消えた。

 中途半端で戻され、残された天の咲久も王の後を追い手伝おうかと考えたが、かえって足手まといになりかねずその場にとどまった。何より地蔵の最後の言葉が気になる。

 ……地蔵が地獄の世界を担う王であることに疑問はない。

 それがなぜ自らを悪魔と名のるのだろうか。意思のみであるからこそ、自らを別のものとは答えられないはずだ。だからこそ吾は長きにわたり何ものか問い続けてきたのだ。

 ……王ならば、知っていよう。

 どれだけ待っただろうか……気配ひとつたてずに王が彼の背後に現れた。

「……やっと戻ったか……む!」

 気配がなかったはずだ。王は憔悴しきって倒れる寸前だった。

《……すまん、手こずったのでな。物理的な世界に影響は出るが、これでも最小限に抑えた……少し、休ませてくれ》

 声も出せずに意思でつぶやく。

「もちろんだ、休んでおれ」

 そのとたん王はその場へ倒れこんだが、天の咲久に抱き止められ、彼の意思でつくられたベッドにそっと寝かされる。

「……無茶をしおって」

 ぐっすり眠りこんでいる王は、起きている時のように厳しく、それでいて寂しそうな表情ではなく、本当に少女のような無邪気な寝顔を浮かべていた。

 王が起きるのを待つあいだ、彼は物理的な世界に意識を向けてみる。


 わたしがリビングで恐竜の本を読んでいると、テレビから臨時ニュースを告げる音がした。画面には海外で大きな地震が発生したことがテロップで流されている。

 チャンネルをニュースにかえると報道が始まり、予想される被害は相当なもので、今後、救助活動が進むにつれ被害が増えていくだろうと告げている。

「どうか、みんな無事でいて……」

 行けるところなら今すぐにでも行って救助を手伝いたい……でも、とても行ける場所じゃなく、あの規模では足手まといにしかならない。携帯電話で芽栄に連絡すると、ずっと話し中だ。

「よしっ、じゃあ行こうか!」

 隣で眠っていたむくが、わたしの声に頭を上げる。その頭をなでてから、いつものボランティアグループの仲間が集まる場所へ直接行くことにした。そこにはもう芽栄がいて、何かを始めているに違いない。


 ……王の言った影響とはこれであろうな。仕方あるまい。王も寝ておるし、やることもない。咲由(吾)もそれを望んでおるのだ……。

 その後、地震の報道は地震そのものよりも、これほどの規模の被害でありながら、死者が出なかったことが大きく取り上げられた。ガレキの下から次々救出される人々の中でも、猫をしっかり胸に抱きしめて助け出された少女の映像は世界中の人々が心打たれた。

 心配されたライフラインも切断されておらず、物的損害は大きかったものの世界中から被災支援物資やNGO、ボランティアの人々とその活動資金が集まり、復旧は早々に進められると予想された。敬虔深いその国の人々は奇跡として感謝を捧げた。


「……よけいな手出しをと言いたいところだが、ひとまずは礼を言っておこう。こちらで起きたことは物理的な世界に影響し、向うで起こされたことはこちらにも反影される。おかげで吾が担う世界の混乱も瞬く間に治まった。それにしても……気づいている人間はいないが動物たちも死なせなかったとは、よくやったな」

 目を覚ました王は、物理的な世界で起こった地震の被害を防ぐのに天の咲久が手を貸したことを、ホッとしつつ感心した。

「気にするな。ヌシが眠っているあいだの、ただの退屈しのぎにすぎぬ」

「……そうか」

 そう言うのならそれ以上必要ない。それよりも礼なら彼が知りたいことがいいだろう。

「……で、地蔵の最後の言葉だったな?」

「うむ。いくら考えても意味が分からぬ」

「簡単だ。地蔵とは『大地を蔵するもの』だ。いわばこの星そのもの。吾らが暮らす生きとし生けるものすべてを司っているというわけだ。それなら神とも悪魔とも呼べるではないか」

「神ならば理解できる。しかし悪魔であるとはどういう意味か?」

 王は少し困った表情を浮かべる。

「神を善なるものの象徴とする。吾らは言うに及ばず人間や動物、植物や鉱物などあらゆるものはそこから生まれた。通常、吾らはこちらに畏敬をもって接する。

 だが知っているとおり人間はアマノジャクゆえ、悪を崇める者たちもいる。そんな者にとって悪魔こそが神に見える。だが、どちらであろうとも、元々すべて吾らであるからには救わねばならん。

 それにはその者が望む姿と教えを与え、少しずつ導いてやるのが効果的だ。そのため地蔵の姿は神と崇める者には神と映り、悪魔と拝する者には悪魔に映る……同じ物事が、ある者にとって幸福でも、ある者にとっては不幸となる。一つの側面は同時に別の側面を持っているということだな」

 天の咲久はあごに手を当てる。一つのものが多くの側面を持つのは確かであり、自らを救う存在が自ら望む姿であるならば、これほど都合がよいことはない。

「しかし、なぜ地蔵はそのような過酷な道を選んだのか?」

「自分にとって極楽の世界を選んだ者たちは、一度そこに入るとめったなことでそれ以上の変化は起こせん。そんな世界を導くには、意思を世界に同調しつつ逆に取りこまれない強い力が必要となるが、それほどの力を持つものは吾らの中でも少ない。だから地蔵は自らその役目を買って出たというわけだ」

「ヌシや地蔵の力は生半可ではない、と」

「そうだな……だが、オマエのその様子ではまだ気づいていないようだな」

 天の咲久は眉をピクリと動かす。

「吾が何に気づいていないと?」

「生半可なものでは逆に世界に取りこまれると言っているだろう。オマエはいつからこの世界にいる? なぜ地蔵に会っても平気でいられる?」

 ここにいることに疑問を感じたことさえなかった天の咲久は背筋にゾクリと寒気を感じ、ある想像に目をむいて口をへの字に曲げる。

 ……まさか、だとすれば……吾は。

「ようやく気づいたか」

「吾も、世界を担う王の一人である……と」

 王がうなずいたとたん、二人の周囲はまっ暗な無重力空間へと変化する。


「ヌシは最初からすべて承知していたと?」

「最初に言っただろう。人間と、この世界に暮らす生き物たちを愛しているかどうか……人間をつくり、現代に至るまでの長い歴史を物理的な世界に暮らしながら、ともに歩み続けることがオマエの役目だと……」

 まっ暗な空間に、うっすらと光が差し始める。

「物理的な世界で永劫から逃れることが本来の目的だが、修羅や地獄のように世界そのものをおとしめるものが表れることは明白だった。ゆえにその灰汁(アク)を取り除き、澄み渡らせる段階が必要だった。

 だが、意思のみの吾らでは真の意味で物理的な世界を理解することができない。それができるのは物理的な生き物の本質を肌で感じ取れるもの……つまり意思と物理的な世界の性質の両方を兼ね備えているものでなければならなかった。

 オマエはこれから物理的な世界において、生き者たちが好き勝手に騒然と鳴らしていた演奏の前に指揮者のごとく現れることとなる……そしてバラバラだった雑音は初めて素晴らしいシンフォニーを奏でられる。

 だがそこにたどり着くには、シンフォニーを奏でられるまで人間の成長を待たねばならなかった。気も遠くなるほどの時間だが、指揮されている意味が分からなければいくら指揮しようとも意味がないのだからな。

 もし人間や動物、植物たちをつくり出したのがオマエ自身であると知っていながら物理的な世界に留まっていたとすれば、どうしていた?」

「ならば、吾が記憶を失っていたこととは……」

 意味を悟り、絶句する。

「地震の件で分かったように、オマエはすべての生き物に苦しみや悲しみを与えず幸福へと導くことができるが、そうなれば自らの天国に居続けるこの世界同様、心の成長が望めなくなる……それは本来の目的とは相反する。だが、オマエは自分でも気づかんところでオマエ自身につながる者を救っていた。

 いずれ独りぼっちの地獄へと赴くはずだった咲由の記憶を奪い、人としての種を植えることで人間らしい生き方を送れるようにしてやったのもその一つだ」

「あれは吾が空間にたまたま迷いこんできた者を、もうこれぬようしてやっただけだ」

「街を牛耳り餓鬼の世界に堕ちるはずだったナツを若返らせ、子どもを救う心穏やかな世界へ赴かせたのも、国を亡ぼされ悲しみと絶望の底におちいるはずだったヴェンバを救い、憎しみの深淵に堕ちるスピラスに人を信頼する気持ちを芽生えさせたのもオマエであり、狂犬病にかかったムクに希望を持たせたのも、また、オマエだ。

 直接つながらん者まで救うことはできんが、つながっていた者はすべてオマエの気まぐれによって救われていた。アフリカで出会ったボスは、現在の人間となる直系の先祖であったのだからな……救われておらんとすれば、あのサユという簀巻きにされた少女くらいのものか」

「吾につながる者とは咲由だけではなかったのか?」

「吾らは一人であっても、物理的な世界において担える役目はそれぞれの時代、場所で千差万別だ。自ら担える役目さえあれば、何度でもどこへでも生まれ出ることができる。その証拠にオマエがナツであった時に吾はショウと名のり、ヴェンバと同時期にはフィルでありシュネシアであった。ムクであった時はコルだ。

 地蔵もまた然り。カンであり、ガリヌセラであったように吾らも常にオマエの近くで生きていたのだからな」

「つながっていたと言うのは分かる。が、同じ時代にヴェンバとスピラス二人も同時につながることまでできるのか?」

「同じ時代であっても表現方法が違うのであれば二人だろうと何人だろうと関係ない。たまたま現れた時代と暮らす場所が近かったというだけだ。人間だから特別に思えるかもしれんが、いつの時代であっても動物や植物、鉱物として常に複数で生まれ出ている」

「ならば、吾ら一人ひとりが人間や他の生き物として生まれ、死ぬたびに、この世界の住人は増え続けているということか? それで世界があふれることはないのか?」

「生まれる生き物の思いの数だけの世界があり、似た思いを持つ者どうしが集まり、それこそネズミ算式に共通した集団をつくり上げているが……今のところあふれる様子は見受けられない……」

 薄く笑い、王は続ける。

「……それとも、あふれた時が本当に滅びの時なのかもしれんな」

 天の咲久はうなり、眉をひそめたが、すぐに向きなおる。

「いや、そうとも限らぬ。思いを生み続け、あふれかえった時こそが、吾らを含めた新たなるものが(かえ)った……誕生となるのかもしれぬぞ。今はまだ『吾らの知る世界』という小さな種の中でもがいているだけなのかもしれぬからな」

 世界を生み出した存在でもある王は、思いもよらない彼の言葉に苦笑する。

「あきらめの悪さはさすがだ。オマエがそう思うのであればそうなるのかもしれん……それならば、また新たな希望に変わるな」

「吾が咲由とつながるように、ヌシも今、物理的な世界につながる者がおるのか?」

「もちろんだ……吾は今、芽栄と名のっている」

「……やはり。それゆえに咲由の友であったのだな……ならばヌシは……?」

「そうだ。吾は幼き日の吾自身に、人間によって耐え難き苦痛を与えられている生き物……物理的な世界にいるあいだの器である仲間への扱いを見せて回った。

 生まれた後の吾がどう争うかは任せてあるが、いかに生まれようとも、吾が争いの世界の王である以上、つながる者は必ず何かと争わなければならないのでな」

「ヌシは、争い続けなければならぬのか……」

「ははは、オマエが気にすることではない。この役目がイヤならば辞めればいいだけだ。そうすればすぐに代わりの誰かが争いの世界の王となる。そうしないのは吾はこの役目が気に入っているということだ。そのため生まれるたびに争い続けなければならないのも仕方あるまい」

 天の咲久は王の言葉を聞き逃さなかった。

 ……辞めれば誰かが必ず王とならねばならぬ。それは、そうなったものがヌシと同じく争い続けなければならぬことを意味しているからであろう……。

 真意を悟った天の咲久だったが、それを言葉にはしなかった。

「ならばヌシとつながる者は、誰一人天界へ赴くことはないと?」

「修羅の世界の王が心穏やかな世界へ赴けるはずがなかろう……だが今回は少し期待している。芽栄ならば、やってくれるかもしれん」

「咲由である吾が手を貸そう」

「……ふん。それよりも気づかんか、オマエ自身のことに」

 王に言われ周りを見わたすと、天の咲久と重なるようにして一本の巨大な樹が出現していた。

 頂上が見えないほど高く高くそびえ立つその樹には色とりどりの花が咲き、多くの実が成っている。よく見ると花の一つひとつはこれまで出会った多くの人間や動物、生き物たちであった……まだ咲きかけの、このつぼみは咲由であり、すでに熟し終えて樹の根元に転がってはいても、次の世代を生かすための養分となっているのはヴェンバに違いない。

 生まれ、生きていたその時々に応じた大きさや色合いで花々は咲き誇り、あるいは枯れ、実は熟し、中には生き腐れていたが、どのような姿であっても、それは間違いなくその時代に生きた天の咲久自身であった。

 そしてその樹の根は、蒼く輝く星の至るところまでくまなく行きわたっている。そこにあるのは、ただ生き物を生かしたいという信念、いや、情熱とも呼べる強い思いだった。

「すべての者を幸福にすることは、まだせんほうがいい。そうなれば、自分にとって最も幸福である状態が維持されるこの世界となんら変わらなくなるのだからな。

 人間は苦しみや悲しみが感じられるからこそ、楽しみや喜びが感じられる……物理法則に縛られているがゆえに、動くに動けなくなっている意思どうしがぶつかり合うことで角が落ち、磨かれていく。川上から川下に行くほど石が円くなり、やがて大海へ到達するようにな……それでこそ吾らもまた成長し続けられる。

 ゆえにオマエは物理的な世界の生き物が、今のこの次の段階に進むまで記憶が戻らんよう吾に監視させた。時期を見計らいながら徐々に記憶を呼び戻させるように……これこそがオマエの計画の全貌だ。

 吾は教えなかったのではなく、オマエからそうするよう託されていただけだ」

 王の瞳にはこれまで見たことのない深く優しい光が満たされていた。


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