国立マクレーン魔法学校
いろいろ入れ替わりの時期で遅くなりました。
どうぞ
大地断裂から約二百年。世界は、驚異的な速さで復興を成し遂げ始めかかると言われていた五十年を大きく上回り二十年で完全な復興を終わらせそれからは、技術の進歩が進んだ。
地上では、近代科学。空では、魔導科学。表向き世界は至って平和である。しかし少し返してみると大国を取り巻く小国どうしの戦争が耐えなかった。遥か昔に東西で立てられた停戦の約束は、大国どうしのものでありそれぞれの国に属する小国は含まれていないのである。
そして今から百年前、周りの小国と自国の兵力増強及び科学進歩のために大賢者アドレ・マクレーンは、ある学校を設立した。
「あなた、この子はやっぱり」
「ああ、信じたくないがそうなのであろう」
幼い自分を悲しみの眼差しで見つめる両親。二人は、俺のと妹の手を引き知らない夫婦のもとへと連れてゆき、その2人に俺を渡して背を向けた。
どうして?待ってくれよ父さん母さん。俺を捨てないでくれよ。置いてかないでよ。それから気が狂う程悲しいことや辛いことがあった。嫌だ嫌だよ・・・
「嫌だぁぁぁーー」
「どうした!」
二段ベットの上から少年が飛び降り下にいた少年に近づいた。先程まで見ていた映像は、どうやら夢だったらしいが少年はまだ混乱している様で頭を抱えながら「置いていかないで」とつぶやき続けている。
「落ち着け。誰もお前を置いていかない。それに俺もここに居るぞ」
上から降りてきた少年は、怯える少年の頭に手を添えしきりに声をかける。小さい頃から度々彼は今の夢を見る。そしてその度に彼の心は締め付けられる。満ち足りた生活をすればするほど、幸せを感じれば感じるほど決まって彼は今の悪夢を見た。
暫くすると少年の呼吸は整い落ち着いたようで、頭に添えられた手をゆっくりどける
「ありがとうエリク。迷惑かけたすまない、でももう大丈夫だ」
そう言うとまだ血色の悪い顔に弱々しくも笑みを浮かべた。「迷惑なんかじゃねぇよ」そう呟くとエリクは、クローゼットへと向かい着替えだした。
エリク・エドウィン 蓮のルームメイトでもあり大切な幼馴染でもある。
「早く着替えて飯行こうぜ。食堂がこんじまう」
「ああ」
小さい時からいつもそばにいて自分を、励ましてくれていた存在。今更その存在の大きさを再確認した。
そして直ぐに話題を変えて次の行動に移る。これは彼なりの優しさなのだろう。
「どうした?早くしろよ蓮」
「ごめん、今行く」
エリクの急かす声に蓮は急いで着替えを始めた。
ここは、東の主国エルトリア王国
《国立マクレーン魔法学校》である。
この学校では、戦争や国から与えられる任務を遂行する魔法科・武術科・魔法武術科(魔武科)の三つと、カバードのより良い魔力運用やユニオンができない魔道士の戦闘用装備『リブロ・ディ・マジーア』(LDM)などの開発を行う魔工科、魔理科、その他幾つかの科に分かれている。その中でも最も難関であり、競争率が高いのが魔法武術科である。この科は、どちらか一つを択ぶ他の科よりも劣っているというわけではない。武術を基礎に、そこに魔法やアルマとの共闘を想定したより実践的な魔法武術(魔武術)を学ぶ学科である。
国中から腕に覚えのある者が集まり己の力を極限まで鍛え上げる。年に約千人のカバードを生み出すそれが魔法学校である。
蓮もエリクも魔武科の二年生である。エリクは優秀であり後輩にしたわれ先輩にも気に入られているが、蓮は沢山の生徒にその居場所を認められていない。エレンには、欠陥がある
今日は新入生の入学式であり魔武科の生徒は、戦技を披露するのである。
朝食を終えた二人は、準備の為会場に向かう。その途中ですれ違った上級生からひっそりと声が漏れる
―――あいつ七光りか?―――
―――欠陥生のくせにでかい顔しやがってよ―――
その言葉を聞いた途端、鋭い目つきになり振り向こうとしたエリクの肩を蓮が掴み制する。
「でも蓮!」
「いいんだ。みんなが言ってることは、嘘ではないんだ」
蓮には、本当の両親がいない。小さい頃に彼は、両親に捨てられエリクの家、貴族であるエドウィン家に拾われたのである。彼が魔武科に入れたのは、本人の実力もあるがたった一つだけエドウィン家の影響もある。
蓮には致命的な欠点がある。そして魔武科には、幾つかの受験条件が存在しその中には、一三歳以上であること・魔法及び武術での一定の成績が必要であること・そしてアルマとのユニオンが出来る物等がある。
そして彼はユニオンができない。
しかし友人の薦めで試験を受け、落ちると思っていたがエドウィン家の推薦状なども換算され奇跡的に受かってしまったのである。だからこそ彼はそう他人から揶揄を受けることがあるのだ。
しかし彼はそんなことは気にしない。そうなることは承知の上であったし、その理由も分かっている。そうこれは、自分で招いたことなのだ。
少年は、再び歩き出し思考を戦技披露の事へと切り替えた。
入学式での戦技披露では、新入生を魅了した。カバード同士の模擬戦は、新入生を圧倒し魔法と武術は、その錬度の高さに全員を唖然とさせた。
ちなみにであるが、魔武科の生徒が蓮を蔑む理由にユニオン以外の分野では、どれもトップレベルの成績を取るという点からの僻みもある。
「以上をもって入学式を閉式とする」
校長先生(国の文武大臣)の声と共に式が終わり会場の緊張度が下がる。
蓮は、今日入学式をもって晴れて魔武科の一年生となる妹の姿を探していた。
「どこいったんだ優羽奈は?」
先程から廊下をゆく新入生や在校生の生徒達の目が一人の少女に集められていた。綺麗な黒い髪をし、白く透き通るような肌そして美人と表現するより可愛いという方が当てはまる整った顔立ちをしている。しかし今の優羽奈には、全く気にもならなかった。
早く兄さんと合流しなくては、優羽奈は蓮を探して歩き回っているのだ。だがさすが国立学校というべきか、その敷地面積の広さは広大でありエルトリア城がまるまる入るほどの広さを持っている。その為か教室の数は優に百を超え廊下や階段などが多く、かなり入り組んだ形をしている。
そんな迷路の様な校内を彼女が正しく進めるはずもなく、直に彼女は高校生にして
「迷子になちゃった?」のである。
先程から、優羽奈を探して校内を歩き回っているが一向に見つけることができない。これが外なら、探査魔法か通信魔法を使いすぐに合流することができるのだが今日は新入生歓迎会も行われているため混乱防止で、許可を得ている生徒以外校内での魔法使用を禁止されているのだ。全く前進しないことに悩んでいると少し向こうに、よく見慣れた黒色のポニーテールが揺れていた。もしかしたらあの人なら手伝ってくれるかもしれないという期待を胸に声をかけた
「神流先輩」
「うん?・・・おっ!これはこれは、蓮君ではないかい。この私に何か用かい?」
腰まで届くポニーテールに背中に背負った木刀。マクレーンの者なら誰もが知る少女が微笑みながら手を振る
「はい、できれば人探しを手伝ってもらいたいのですが」
「人探し?」
本来、あまり他人には関わらないようにしている蓮からは珍しい頼みだった。それに先程から柄にもなく、そわそわし続けている。
「恋人か何かかな?」
「違います。大切な妹です」
「妹?」
蓮に妹がいるなど初めて聞いた彼女は、是非会ってみたいと思った。
「了解。でもその前にこれ食べな」
そう言って差し出されたものを蓮は、不思議そうに受け取った。
「アメ、ですか?」
「私ね、昔から緊張した時や悲しい時はいつもアメを舐めるんだよ。そうすると不思議と落ち着けてね。妹さんを見つけても蓮君がそんなに暗い顔をしていたら妹さんも困ってしまうだろ」
「そんなに暗いですか?」
「そりゃあもう。リストラされた人みたいに」
例えが微妙だが、言われてみると顔の筋肉が少し強張っている事に気付く。そんな自分を見たら妹はどんな顔をするだろうか?そんなことを考えながらアメを口に含む。
「・・・甘い」
幾分か明るい顔になった蓮を見て満足そうに神流は頷き、優羽奈の特徴を聞くと歩き出した。
「では、優羽奈ちゃんを見つけたら連絡するよ」
「はい、お願いします」
神流の後ろ姿を見送ると蓮も優羽奈探しを再開した。
ありがとうございました。
ではまた。