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第8話(ひまわり)

小さな雲がいくつも空に浮かんでいた。


秋らしい、涼しげな雲が楽しそうにかけっこしていた。



「ごめんな、ユキ・・」


高校時代よく2人で行った、高台にある公園へ出かけた。


ユキは、雑草をくるくると指に巻きつけて遊んでいる。


「ゆうじ君、きっと見てたんだね。」


ユキは、その雑草をパッと空へ投げた。


風に乗り、舞い上がるその雑草を見つめながら、ユキは僕の足に手を置いた。


「バカなことしてる私達を見て、なんとかしなきゃって思ったんだよ。」



ユキは、草の上に寝転んだ。


僕もつられて、寝転んで空を見上げた。


「ゆうじは、本当に僕らを見ているんだな。」


僕は、ユキの手を握り、雲の動きを眺めていた。



「ごめんね。ハル・・・私、最低だった。ちゃんと向き合うこともできなくて・・」



「僕こそ、本当にごめん。怒って当然だよ。ユキの家にも行ったんだけど・・会えなくて、もうどうやって仲直りしていいかわかんなかった。」


「そこに、ゆうじくんの電報が来たってわけね。」


ユキは寝そべりながら、僕の方に体をひねった。


「多分、僕らがケンカしたあの4年目の日に、届いてたんだ。実家に届いてたから、今日僕が実家に帰って気が付いたんだけど。これもゆうじの演出かな・・」



僕は、ここ数日間のことをユキに話した。


ユキが出て行った後、ユキのメールを見たこと。


ユキが冷蔵庫に残した、ケーキに乗せるはずだったプレートを見て泣いたこと。


さゆりさんがお金を盗んだと疑われて、僕に頼ってきたこと。


僕は、さゆりさんのことをもう何とも思っていないこと。


バイトをやめたこと。



そして、僕はばかだったってこと。



僕は、ユキを愛している。


もうユキを泣かせない、と仲直りのキスをした。



ユキは、僕と離れている間、泣いてばかりいたと言う。


僕からの電話に出なかったのは、他に好きな人ができたと言われるんじゃないかと怯えていたらしい。


「そんなわけないのにね。ハルは私にゾッコンだもんね〜。」


「ば〜か。ゾッコンってもう死語だぞ・・!!」


なんて笑いあった。



ユキが僕のことを、僕が思ってる以上に好きでいてくれていることがわかった。


僕は、もうあんな過ちは犯さないだろう。


ユキには話していないけど、他の人とキスをすることはもう一生ないだろう。


あるとしたら、僕とユキのかわいい赤ちゃんと・・・だな。




ユキの提案で、ゆうじのお母さんに会いに行くことにした。


ゆうじの家の庭には、昔のままボールが転がっていた。


また少し痩せたゆうじのお母さんは、ゆうじの部屋へ案内してくれた。


「なんかね、そのままにしてあるんだけど・・。片付けられなくて・・」


お母さんの気持ちは手に取るようにわかった。


僕もユキもそのままの部屋を見て、すごく嬉しかった。



部屋に飾られてある写真の方へ近づいた。


ゆうじがいつか話してくれたように、僕との2人の写真が飾ってある。


すごくいい笑顔をしてるゆうじ。



他にも、クリスマスパーティーでの写真や、路上ライブの写真があった。


その写真に隠れるようにして一枚の写真を見つけた。



それは、ユキの写真だった。


優しい笑顔で笑っているユキの写真・・・



もしかして・・と長年思っていた僕の気持ちが今確かなものに変わった。


写真の裏には、詩が書かれてあった。




 『 ひまわり 』


君は僕の太陽


僕はひまわり


いつも君を見ている


いつも君を見守っている



初めての恋の味


少し切なく、とても甘い



初めての恋の味


君が教えてくれた



僕はひまわり


ただ


君を見てる



君が誰かを愛しているその横顔が好き


君が愛した人は 君を幸せにする



君がいつも いつまでも


笑っていられるよう


僕は


近くで


遠くで



君を見守る



君は僕の太陽



その笑顔の先に 幸あれ


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