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後姿に恋をする

作者: Azure

恋は、いつから始まって、いつ終わるんだろう。




街を歩いてても、心のどこかであの人を探してる。

後姿とか横顔とか、少しでも似てる人を見かけるたび、ドキドキする。

人違いだとわかってても、道行く人にあの人の面影を見つけては喜んでる。

馬鹿みたいだって自分でも思うけど、そんな癖が抜けない。


すきになったのは、同じ学部のニコ上の先輩。

初めて見かけたのは、春だった。

左手の薬指で、シルバーの指輪が綺麗に光ってたのに、

何で、すきだと思ってしまったんだろう。


話したこともなくて、ただ遠くから眺めてるだけ。

きっとあの人は、俺の名前さえ知らない。

それでも俺は、あの人に会えそうな日には、いつもより長く鏡の前に立った。

こんな努力も、あの人は知らなかっただろうけど。


出会ってから三回目の春を迎える頃、あの人は卒業した。

一言も言葉を交わすことなく、遠くへ行ってしまった。

それから間もなく、俺は三年になった。

俺が初めて見かけたときのあの人と、同じ年だ。


気が付けば季節は春から夏、秋へと変わろうとしてた。

一週間が異常に早く感じるのは、忙しい日々のせいか。

それとも、あの人に会えない虚しさのせいかな。

ちょっと前までは、こんなんじゃなかった。

明日はあの人に会える日だとか、この時間に図書館に行けば顔を見れるかもしれないとか。

そんな一瞬を、何より大事にしてたのに。

今はただ、毎日が通り過ぎていくだけ。

あの人がいなくなって、俺の生活はこんなにも無機質なものになってしまった。


前を歩いてる二人連れの女子。

左にいるあの子。

笑った横顔が、あの人に似てる気がした。

あの人もよく、あんな風に笑ってた。

よく見なくてもわかるくらい、顔は似てないのに。

それでも、どこか心が慰められる。


あれから、いくつ季節が通り過ぎただろうか。

今でも俺は、髪の長い人を見かけるたび、ドキドキする。

いつかは、他の人をすきになる日が来るんだろうけど。

それまではきっと、誰かの後姿に恋してる。


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