最強の拳士
主人公は国立魔術教育学院、通称国魔学院。そこの高等部1年に通うある一点を除いたら少し優秀なだけの高校生だ。
事実、主人公の学力は中の上、身体能力は上の中、ルックスは上の下、魔力量は世界で4番目くらいには多い(世界で一番多い人で59万4千、主人公は44万7千だ)が、運は普通、過去に何かものすごい悲劇に逢った訳でもないし、悪魔と契約している訳でもない。もちろん特別な眼を持っている訳でもなければ、暗殺者の家系に生まれた訳でもない。
ならそのある一点とはなにか。
それは・・・・・・魔術が使えないことだ。
この世界に於いて、魔術が使えないことはそう珍しいことじゃない。
魔術が使えるものは、大体1万人に11人なのだ。(他の人は、魔力がないか、魔術を行使する才能がない、又はその両方の3択である)
そのため、如何に魔力が多くても魔術を使うための才能がなければ意味がない。
この世界での人間としての『価値』は、どれだけ魔術をたくさん使えるか、どれだけ魔術を効率良く使えるかで決まると言ってもいい。
魔術を使えない人間は魔術を使える人間に逆らってはいけない。なぜなら、何をされるか分からないからだ。
幸いにも、魔術を使える人間はマント又はローブの着用を義務付けられているので、一目で見分けが付く。しかもそのマント又はローブは、魔術を使える人間が着るとその人の得意属性に合った色になる(炎なら赤、水なら青、風なら緑、土なら茶色、雷なら黄色、光なら白、闇なら黒、無なら灰色、使えない人間は基本色である紫である)。その為、誤魔化しは通用しない。
そして、魔術を使える人間のことを総じて『魔術師』という。
話を戻すが、主人公は国立魔術教育学院高等部に通っている。
何故魔術を使えない主人公がこんな高校に通っているかと言うと、
「近接戦闘能力を高めまくった結果がこれだよ!!」
主人公・御剣恋華は高らかに叫び声を上げた。
ちなみにここは通行量の多い道路である。
そのため、いま恋華は周りからすごく痛い子を見るような目で見られている。
「ア、アハハ~。し、失礼しま~す」
そそくさ。そんな擬音が聞こえてきそうな動きで恋華は国魔学院へ向けて歩き出した。
「(失敗した!いくら叫ばなければいけないような気がしても実際に叫んだらタダの痛い子だろうがっ!!)」
そんな感じで若干叫んだことを後悔しながら恋華は、国魔学院に通うことになったきっかけを思い出すことにした。
*
恋華は、魔術が使えなかった。だからせめて、このわが身に宿る膨大な魔力を活かして近接最強になってやろう、と鍛錬を始めたのが5歳の頃。始めた頃は見るに耐えなかったが、師匠を見つけてからは100年に1人の天才と謳われた師匠に
「1万年に1人の天才だ」
と言わせるレベルの才能を発揮した。
そして師匠を越えたときに言われた「日々精進せよ」という教えを忠実に守ってきた。
そして、その日は雲一つないような晴天だった。
いつも通り、鍛錬を終えてリビングで紅茶を飲んでいたとき、
「ッ!?」
ガタッ
“殺気”を感じ、椅子を蹴倒すようにして立ち上がり、体を臨戦体制に移行させる。
瞬間、
―ドオオオオオオオオオオオオオオォォォン!!―
「なぁ!?」
家の壁が爆発し、煙の中から4本の足があり、2対の翼を持ち、頭が2つあって尾が蛇の化け物が出てきた。
「(何なんだアレは!?明らかに見たことない動物だけど・・・いや、そもそもアレはこの地球上の生物か?地球外生物?もしくはどこぞの魔術師が合成動物でも創りだしたのか!?クソッ!対処法が分からない!そもそも物理攻撃は効くのか?そして攻撃方法は・・・)」
恋華がそんなことを考えていると、その化け物(今後はキマイラと称する)は鋭く尖った前足の爪を大きく上に上げて振り下ろしてきた!
―ヒュッ、ドオオォォン―
「危な!?」
恋華は考え事をしていた為に反応が遅れたが何とか攻撃をかわした。前髪が2,3本持っていかれたが問題ない。振り下ろされた前足をモロに受けた床は大きく陥没していた。
「(ッ、こんなの食らったら死ぬな。っていうか戦闘中に考え事はタブーだろ、俺!集中しろ!そして生き残るための道を探せ!!)」
恋華は考えるのをやめ、戦いに集中することにした。
見たところ、このキマイラは1体だけのようだ。しかも知能は低く、攻撃方法も単純、本能に任せて襲ってくるから少し厄介だが、この程度なら何とかなる。というか師匠の方が強いし怖い。
「(なんだ、大丈夫じゃん。とりあえず毒とかに気をつければいいかな?あ、あと口も。何を吐いてくるかわかんないし。でもまぁ、とりあえず)」
「さっさと終わらせる!」
そう言うと恋華は3メートルはあった距離を魔力放出による瞬動で一瞬で間合いを詰め、構えてから技を繰り出す!!
「絶華流・・・奥義!“絶拳・雹華”!!」
“絶拳・雹華”
この技は己の拳に魔力を超圧縮して取り込み、インパクトの瞬間に超圧縮した魔力を相手に流し込み、圧縮を解いて相手を内側から突き破る技なのだ!未だにこの技を受けて生き残った生物はいない。
勿論この技を受けたキマイラも例外ではなく、原型が分からなくなるくらいぐちゃぐちゃのミンチになっている。
「うわぁ・・・やりすぎた」
恋華は、自分でやったのに引いている。
「どうしよう?これ、生ごみで出せるかなぁ?もし出せなかったらどうしよう?塵も残さないように殴り続けようかな?それとも“空間粉砕”を使って異空間にでも放り込もうかな?あ、それがいいね。業者にも迷惑かけないし俺も満足。うん、これがいい。じゃ、早速。・・・絶華流、奥義!“空間粉砕”!!」
―パキイィィィィン―
「ん、よし成功」
今恋華の目の前には空間に大きな罅が入り、ここではないどこかが見えている。
これこそが、恋華の“空間粉砕”によって作りだされた空間の穴なのだ!
“空間粉砕”
この技は魔力を拳に纏い、空間の僅かな隙間を殴って隙間を広げ、そこに魔力を流して空間を粉砕する技なのだ!
恋華はこの穴に自分が作ったミンチ(というより最早ゲル状のもの)を投げ入れて、魔力で空間の穴を塞いだ。
次の瞬間!
「光の精霊よ!彼の者を縛れ!“ホーリーライト・バインド”!!」
「ッ!?」
突然現れた白いローブを着た女にいきなり魔術で拘束された。
この魔術は精霊魔術と呼ばれるモノで、通常魔術に比べて効果が高いことと、難易度が高いことで有名だ。しかもこの“ホーリーライト・バインド”は捕縛系最上位に位置する魔術だ。世界に最も多く存在する『光』。それを操りリング状にして対象を縛り上げ、魔力を吸収する効果を持っている。
こうしている間にも恋華の体からどんどん魔力が抜けていく。
「大人しくしていてください。こちらとしてはあなたと安全に話がしたいだけなのです」
いきなり拘束しておいてよく言う、恋華は思った。そして、
「・・・・・・秒間約千。」
「?」
「この魔術の魔力吸収量だ。そして俺の魔力量は44万7千。さっき少し消費したがまだ40万5千は残っている。俺の全魔力を吸い出すのに単純計算であと40,5秒必要なわけだ。そして俺はこんな拘束0,5秒もあれば抜け出せる。」
「ッ!?」
この言葉に女は驚愕したのか、驚いた顔をした。
「ほら、俺を本気で怒らせる前にとっととこの魔術を解け」
「・・・解りました」
女は少し迷った後、頷いて言った。
女の「解除」の合図と共に光のリングは空中に溶けるように消えた。
「で?何のようだ?」
恋華は表面上何も思っていない風を装って聞いた。心の中ではくだらない話なら殴る、と決意しながら。
「・・・実は、先の戦いを見て頼みたいことがあるのです。」
驚いた。恋華はそう思った。
恋華の索敵能力は異常だ。半径千メートル以内なら蟻の数すら気配だけで数えることが出来るのだ。恋華はその索敵能力に引っかからなかった女に興味を持った。
「―――――――だから、あなたの力を貸して欲しい。だめだろうか?」
っと、やべ。聞いてなかった。う~ん、でもまぁ
「ぶっちゃけ話自体は聞いてなかったし興味もないからどうでもいいけど、俺の力でいいなら貸すぜ?あんたには興味があるしな」
「きっ、興味!?」
俺がうんうん、と一人で頷いていると女は顔を真っ赤にしてアワアワしていた。
「で?なにをすればいいんだ?」
「・・・期待した私がバカでした。で、内容はですね?ぶっちゃけるとこの街の北の山にエンシェント・ドラゴンが住み着いてしまいまして。それをどうにかして欲しいのです。」
ドラゴン!?そんなのと戦えるなら・・・
「やるっきゃないだろ!!」
「では、やってくれるのですね?」
女は嬉しそうに言った。
「ああ、任せろ!ドラゴンだろうが悪魔だろうが神様だろうが全て纏めて殴殺してやる!」
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「それで行って見たらドラゴンの群・群・群!いやぁ~、あの時はびっくりしたな!まあ勝ったけど。あれ、ざっと千匹はいたんじゃねーの?全部殺したからあの後ニーナ(女の名前)に『一つの種が絶滅した!』って怒られたけど」
そんなことを言いながら今回のニーナの依頼、『国立魔術教育学院に近接戦闘課のテスト生として入学し、卒業せよ』を果たすために国魔学院の入学式会場に入っていった。
*
「ところで、何故女のあなたが男物の制服を着ているのですか?」
「やだなぁ、教頭先生。そんなのこの学院が制服の改造自由だからですよ?」
「そうですか」
「そうですよ」
「「アハハハハハハハハハ!!」」
「ココにはそんな制度はありません!女物の制服を貸しますから即刻着替えなさい!」
「ちぇ、はいはいわかりましたよーだ」
続かない!!
こんな駄作を読んでくださいましてありがとうございます><