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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ブックシェルフ

かさねがさね、お願い申し上げます。

掲載日:2026/05/09

ファンタジー 輪廻転生があるタイプの世界


先妻の産んだ嫡子が事故死して、跡継ぎのいなくなっていた侯爵家に待望の子が生まれた。出産の負担で後妻は次の子を望めなくなったが、夫妻の特徴をよく受け継いだ美しい娘である。ゆくゆくはこの娘が婿を取って侯爵家を継ぐことになるだろう。幸いにもその娘は健康な躯をもち両親からの愛情を注がれてすくすくと育っていた。

一つ不思議なことがあるとすれば、娘の喉には生まれつきの痣があり、しかも年を経るにつれて鮮明な紋様になってきているということだった。まるで、赤い花のような痣が娘の喉にくっきりとある。医者に見せても健康上の問題があるわけではなく、ただそこにあるだけとしかわからない。

しかしそれを不安に思った両親に依頼されて、彼が招かれた。異国出身の、王国で最も腕利きの魔術師。娘の七つの誕生日のことだった。

「僕の故郷にね、こういう話があるんですよ」

娘を一目見て、魔術師はこともなげに言う。

「"生まれつきの痣は前世の死因を表しているんだ"って」

魔術師はにこやかに笑って、世間話のような軽さで言う。

「定め通り、この娘が侯爵になるのであれば何の問題もありませんよ。代償はもう支払われていますから。今度こそ約定を果たせば何も起こりません」

「代償?約定?…一体、何の話だ」

動揺を無理矢理に押さえ込んで尋ねる父親に魔術師は小首を傾げてみせる。

「あなたも家の歴史を背負うものであれば承知しているはずでしょう。古い家系にはそれなりの規則(ルール)があり、背負うべき責任がある。…ああ、いえ。あなたは傍系の入り婿でしたっけ」

前当主の死から間を置かず先妻が死んで、ほどなくして後妻を迎え入れ。継子の喪の明けるかどうかの頃に後妻の懐妊が判明した。それが偶然のことか、何某かの思惑あってのことかは部外者である魔術師にとってはどうでもいいことである。生まれた娘が侯爵家を継ぐべき人間であることは確認できたので。

「私は侯爵だぞ!」

「ヴァスィア侯爵家で真実、当主を名乗れる人間は常に一人だけ。それ以外の当主は真の当主がいない間の代理にすぎない。…ほんの一代で失伝したんですか?人間は本当に伝言ゲームが苦手ですねえ」

呆れたような顔をして、魔術師は幼い娘に礼を取ってみせる。

「それでは、次期当主、レイア・ド・ヴァスィア・ネラ様。あなたが成人を迎えて当主の座を継ぐ時にまたお会いしましょう。次はちゃんと成人できると良いですねえ」

からりと笑って、魔術師は用事は終わったとばかりに立ち去った。凄腕の魔術師であるので忙しいのだ。両親の呼び止めようとする声を意に介すことはなかった。



侯爵家を出たところで、気配を消して小間使いに徹していた魔術師の弟子が、師に問いかける。

「師匠、あの…レイア様は先に死んだ子の生まれ変わり、なのですか?」

「そうだね。もっとも、過去世の記憶はないと思うよ?その必要はないのだしね」

「生まれ変わりというのは、強く思いを残した者に起こる事ではないのですか」

「そういう生まれ変わりもあるね。でもあの家のは違うんだ。あれは侯爵家の領地たるヴァスィアの地の精霊との盟約によって起きている転生だから」

「精霊との盟約?」

「昔々にね。水の精霊に見初められた子がいたんだ。でも当主は子を精霊に嫁がせることを拒んだ。本人も他に想い人がいて嫌がったしね。精霊は渋々引き下がったが、交換条件を出した。その子が当主を継いで、家に留まること。そしてその子が当主である限り、領地に恵みをもたらすことを。精霊が見初めたのはその魂だから、死んでも魂が他の土地へ移ることを許さず、あの家系に生まれることを強いているというわけ」

「うわあ…。でも、精霊はともかく、人間に魂の見分けなんてつきませんよね?」

「ああ。だから精霊からの指名の印として痣が出るんだよ。よくあることだね。他の家にもそういう人間はいるよ。更に言えば、あの家はあの子の魂が転生する前後には子が生まれなくなる。物理的に、かの家の血を引いた、当主に成れる資格を持つ子は当代にその子一人になる」

にこりと魔術師は弟子に笑みかける。

「まあ死因の場所に刻むなんて趣味の悪いことをしているのは、ヴァスィアの精霊と…ああ、カブリプラウと、シャンドルもそうだったかな?」

「他にもあるんだ…。でも、確か先妻の子って事故死、という話でしたよね?首が死因って、どんな死に方なんですか?」

「溺死という話になっていたね」

「溺死…?」

魔術師は笑うだけで詳細は語らない。弟子は、この魔術師が妖精の血を引いていて、けして嘘は言わないことを知っている。まあ人間が勘違いするような言い回しをして人を騙すことはあるのだが。

「寿命がたっぷり残っていたからすぐに転生できたんだろうけど、次はそうもいかないだろうね。精霊もあの子の魂が生まれたからこそ祝福していたわけだし…。普通より寿命が短くなったあの子が死んだ後、暫くは精霊の恵みを得られないだろうから、あの子の生きている間に十分に蓄えられなければ、侯爵家は没落するよ」

にこやかにとんでもないことを言う魔術師に弟子はドン引きの視線を向けた。弟子の視線を気にした様子もなく、魔術師は言う。

「まあ、あの家はなるようにしかならないよ。長く続いた家というのはそういうものさ」

王国が興るよりも前からこの地で生きている魔術師はそう言って笑った。



レイアは①短い寿命でなんとか後代に継ぐ現状維持√ 

②若死に()して家は没落、両親発狂√ 

③両親を見限って精霊に嫁ぐ精霊大勝利√ あたりのルートがある 基本親より早死

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