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第8話《切るという選択》
翌日。
新しい依頼の資料が机の上に置かれていた。
耀は、
深く息を吸ってからページをめくる。
(……似てる)
昨日とよく似た構成。
追加情報。
曖昧な証言。
可能性はいくつもある。
(全部拾ったら、また同じだ)
指が、止まる。
耀は、
一度資料を閉じた。
「……」
もう一度、最初から見る。
事実。
確認できていること。
証拠があるもの。
「……これ」
小さく呟く。
不要な情報に、
線を引く。
切る。
外す。
心臓が、
少しだけ早くなる。
(……大丈夫)
探がその様子を静かに見ていた。
「どうする?」
聞かれて、耀は顔を上げる。
「……この情報、今回は使いません」
声は少しだけ緊張していたけど、
逃げなかった。
「理由は?」
「根拠が弱いです。
判断をぶらすだけだと思います」
探は一拍置いてから頷いた。
「分かった」
それだけ。
有哉は、
応接ブースにいた。
いつも通り。
口は出さない。
ただ、資料の一部が除かれたのを一瞬だけ見る。
何も言わない。
でも。
耀はその沈黙が
昨日より重くないことに気づいた。
(……切れた)
完璧じゃない。
正解かは、正直なところ自信がない。
それでも。
自分で、
選んだ。
胸の奥が、ほんの少しだけあたたかくなる。
「……よし」
耀は次の作業に手を伸ばした。
知らないうちに
一歩だけ。
確かに、前に進んでいた。




