表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

第2話《小さな違和感》

仕事の様子とかも架空と思ってください…()

午前中は、いつも通りだった。

電話応対。

依頼内容の聞き取り。

探が話し、耀がメモを取る。

耀はまだ、探偵助手としては駆け出しだ。

聞き逃しも多いし、要点をまとめるのも時間がかかる。

「……すみません。

 今の、もう一度いいですか?」

探が横から補足する。

「つまり、最後に見たのは──」

「はい、その通りです」

耀は慌ててキーボードを叩いた。

(難しい……)

ふと、机の端に置かれたファイルが目に入る。

昨日まで、

どこに何があるか分からなかった資料。

──なのに。

「……あれ?」

自然と、声が漏れた。

索引。

付箋。

ページの折り方。

「……こんなに、見やすかったっけ」

探がちらりと視線をやる。

「気づいたか」

「……はい」

耀は首を傾げる。

「私…こんな整理してない…です」

「だろうな」

探は、さらっと言った。

それ以上は説明しない。

「……」

耀はモヤっとしたまま、作業を続けた。



昼前。

依頼人が帰ったあと、

探は別件の電話対応に入る。

「耀、ちょっとこれ頼めるか」

「はい」

言われた通りに資料を探す。

……が。

「あれ?」

棚を見ても、

引き出しを開けても、

目当ての書類が見つからない。

「……え、なんで?」

昨日、確かにここに置いたはずだった。

(私、場所間違えた?)

焦りながら探していると、

探が電話を切って戻ってきた。

「どうした」

「この件の資料、

 ここに置いたはずなんですけど……」

探は一瞬だけ考え、

別の棚を指差した。

「そこだ」

「え?」

言われた通りに開けると、

きちんと揃えられた書類があった。

「あ……」

「内容別に分け直してある」

耀は、思わず手を止めた。

「……私、そんなことしてないです」

「知ってる」

探は淡々と言う。

「だから、助かってる」

「……」

胸の奥が、少しだけざわつく。

(……あの人?)

朝、ソファーで寝ていた男。

だらしなくて、態度が悪くて、

最悪だったあの人。

(……仕事、してた?)

すぐに、首を振る。

(いやいやいや)

資料を触るなって言ったし。

勝手なことしてるだけだし。

そう思おうとした、その時。

電話が鳴った。

「……あ、はい」

受話器越しに、

依頼人の声。

話を聞きながら、

耀はメモを取る。

だが途中で、

言葉に詰まった。

「……すみません。

 今の、どういう意味ですか?」

探が助け船を出そうとして──

いつの間にか、

探の横に置かれていたメモ。

端的で、分かりやすい要点。

探がそれを見る。

「……ああ、そういうことか」

耀は、ぎょっとした。

「え……?」

探は受話器を押さえ、

小声で言う。

「さっきの依頼人の話、

 これが要点だ」

「……」

耀は、喉が詰まった。

(……私じゃない)

この字は、自分じゃない。

でも、探のものでもない。

(……誰?)

探は何事もなかったかのように耀から電話を受け取り、

依頼人と話を再開する。

耀は、そのメモを見つめたまま、

しばらく動けなかった。

胸の奥に、

小さな違和感が沈んでいく。


最悪な男。

迷惑な居候。

態度の悪いフリーター。

──本当に?

答えは、まだ出ない。

ただ一つ確かなのは。

"いないはずの誰か"が、

確実に仕事をしている

ということだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ