表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

第11話《自分で選んだ答え》

朝。

光墨探偵事務所のドアを開けて、

耀は一瞬だけ、応接ブースを見る。

──今日も、いない。

「……」

もう、確認する癖がついてしまっていることに、

少しだけ苦笑する。

(……集中)

鞄を置き、自分の席につく。

今日は依頼が一件だけ入っていた。

内容は、小さな調査。

派手さもなく、緊急性もない。

でも──

判断を間違えると、

無駄に広がるタイプの案件だった。

「……よし」

耀は、資料を広げる。


午前中。

依頼人の証言。

過去の記録。

第三者の噂話。

(……前だったら)

全部、拾っていた。

(……でも)

耀は、一度手を止める。

深く、息を吸う。

事実か。

確認できるか。

証拠があるか。

「……ない」

線を引く。

切る。

迷いが、

一瞬だけ胸をよぎる。

(……これで、いい)

誰も、答えを教えてくれない。

でも、

今はそれでいい。


昼過ぎ。

探が資料を覗き込む。

「どう進める?」

耀は、顔を上げて言った。

「……この線だけで行きます」

「理由は?」

「裏が取れています。

 それ以外は、

 可能性があるだけで、

 判断を狂わせると思いました」

声は少しだけ緊張していた。

でも、

逃げなかった。

探は、一拍置いてから頷く。

「いい」

それだけ。

耀の胸の奥が、

少しだけ軽くなる。


夕方。

結果が出る。

調査は最短で終わった。

依頼人の不安も最小限で済んだ。

「助かりました」

頭を下げる依頼人を見送って、

事務所に静けさが戻る。

「……」

耀は、

椅子に座ったまましばらく動けなかった。

(……できた)

完璧じゃない。

でも間違ってはいない。

自分で、

選んだ。


片付けの時間。

資料をファイルに戻しながら、

ふと、思う。

(……あの人がいたら)

違う判断をしたかもしれない。

あるいは、

同じだったかもしれない。

でも。

(……今日は、私一人で)

それで、

ちゃんと終わった。

耀は、小さく息を吐いて立ち上がった。


夜。

一人暮らしの部屋。

いつもより、

少しだけ軽い足取りで

靴を脱ぐ。

冷蔵庫を開け、

簡単な夕飯を用意する。

コーヒーを淹れようとして──

一瞬、止まる。

「……」

そして、カップを1つ出した。

湯気。

香り。

(……うん)

一口飲んで、小さく頷く。

今日は、

ちゃんと苦くて、

ちゃんと美味しい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ