Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 08
「あっ、どこ行くんだよ!」
アシュリーの叫びに返されたのは、プロディジーの陽気すぎる声だった。
「なに、ちょっとしたはからいさ!せっかくのパーティーがここだけじゃ寂しいかと思ってな!」
それと同時に、彼の両腕は動き始めている。
まるで窓を拭くときのような外回しの軌道で動き始めたオカピの男の手首には、規格外に大柄な手錠が嵌め込まれており、そこから伸びた鎖が前腕には幾重にも巻きついていた。
今まさに、彼はその戒めをほどこうとしているのだ。風にこすれる鋼の音が、あたりの気流さえ不気味にかき乱し始める。
「……アシュリーはブタの方ね!」
したたかに、そして一切の余韻を残さず、イムノが叫んだ。
右手に銀の刃をたずさえ、まるで誰かの腕を引いていくようにそれを伴いながら、彼女は地を蹴る。
ひと蹴りごとにその歩幅は広がり、淡々とした足取りのなかに、明らかな加速の気配が宿っていく。
その隣を並走していたアシュリーは、
「よっしゃいくぞ!……ブードゥー・1、ホットショット――オンステーション!!」
次の瞬間、炎に身を包みながら、しなやかに跳躍した。
地面をひと際おおきく踏み切る一瞬、2人の進路は壮大に分岐し、ホットショットとして”完成”したアシュリーは、灼熱の尾を引いてハヴォックの進路をまっすぐに追っていく。
そのとき向かいの地面が、
「ドオォオオオ…………!!!」
まるで彼女たちの進軍を迎え撃つ意志を持つかのように低く轟いた。
ドリルタンクが穿った巨大な孔から、蛇蝎山で確認されたあの作業用ロボットたちを戦闘用に再設計したものが、次々と姿を現していったのだ。
ほとんどの個体が、携えたブラスターをすでに構えた状態で大孔より飛び出し、着地の瞬間には、ほぼ反射的に火を噴く。
その無差別な掃射によって、通りの一帯が、誘爆の始まった火薬庫のようにゆらぎ始めた。左右にそびえるビルからは煙が弾け、砕けたガラスが陽光を屈折させながら舗装の行き届いた地上に降りそそいでいく。
ホットショットはその爆炎を背に、振り返ることなく加速を続けた。
一方のイムノは、敵の先陣を切ってあらわれた機体――車にハコ乗りした暴走族をそのままロボットに置き換えて、さらには火線まで振り撒く4人乗りの反重力バイクと、のびやかな跳躍の最中にすれ違った。
――ザンッ!!
そこで振るわれた銀の軌跡は、空気の密度すら変えるほどに明瞭だった。
対向していたバイクの機体は、その一閃のもとに構造ごと裂かれ、切断の勢いそのままに滑走し、
後方で爆散する。
その直後、上方から飛来してきたスヌープキャットが、音もなくイムノの隣に着地する。
体勢を崩すことなくそのまま並び、4つ足での駆け足を滞りなく再開した。
ブンブンブンブン……!
プロディジーの鎖は、もはや扇風機の羽根など比較にならぬほどの速さで気流をかき乱しており、
ゆえに、金属が空気と摩擦する甲高い音があたりには響きっぱなしになっていた。すべての拘束が解かれた刹那――鉄環の直径が3センチを超す重厚な鎖は、空へと解き放たれた。
そして鎖は、ドラマーが決めの1打としてスティックを天高く振り上げるように、昇りつめられる限りの高さまで舞い上がり、一瞬の静止ののち、その圧倒的な頂点から地面へと一気に叩きつけられる。
一撃はアスファルトを紙よりも簡単に穿ち、
道路の白線などよりもはるかに鮮烈で深い裂け目を刻み込んだ。
「来な!」
敵勢の迫り来る気配を感じ取ると、鎖はふたたび引き戻され、プロディジーの、
肩の位置さえ越えた後方へと大げさにしなっていく。
「さな! ロボットの相手をしながらみんなを逃がして!」
姿勢を沈め、跳躍の身ごなしに研ぎ澄まされた鋭敏さを宿しながら、イムノは敵の正面へと果敢に踏み込んでいく。向かい風に吹かれる彼女の前髪が後方へたなびく中、その声は、朗々と響いた。
「ウチもなんかかけ声…………クックドゥードゥルドゥーっ!!!」
その瞬間の、スヌープキャットの四肢がたわみ、地を蹴る動作に一切のためらいはなかった。白い影は弾かれた弓のように跳び上がり、
突貫するがごとく、一直線にプロディジーの位置へと襲いかかっていった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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