Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 01 05
「おいおまえたち、料理は後じゃ!カモン!ハウスハウス!」
本堂の奥まった方角から、吉濱尊の呼びかけが飛んできた。続けざまに響いたのは、
頬を子供のように膨らませながら吹かれた、やや乱暴な指笛の音だ。
「大丈夫だ心配するな、古代インドの考えじゃピザは4頭のでっかい象の下にあって地球を支えてる。つまりなんでも乗る。
チャーハンも乗せればどっちの顔も立つだろ」
アシュリーは、腰を折ったままの姿勢でそう口にし、得意げな笑みを浮かべた。
訴えの無視という処理方法が、娘たちのあいだで暗黙の了解となったらしい。
「そうだね。じゃあ、ほうれん草も乗せておこう」
おせちは淡々とした横顔のまま、余計な言葉は加えずに手元のフライパンを操っている。
火の通った米と具が跳ね、まるで水面から躍り出るイルカのように、軽やかな弧を描いた。
一方、隣にしゃがみ込んださなは、青地に花火模様があしらわれた――いつぞやの祭りで貰ったプラスチックのうちわを手にして、アシュリーの足元をゆらめく炎に、ささやかな風を送っている。しかしその働きは、全体の火勢にはまるで貢献しない。
「アシュリーがおこげなら、ウチは“おなか”がいい!」
そんなふうに元気よく名乗りを上げたのは、毛並みの整ったお腹を堂々と撫でさすりながら、大股でこちらへ向かってきたはちるである。
「じゃあわたし、“おかし”!」
さなも負けじと叫び、鼻先まで笑顔をこぼしてみせる。
「それ、丁寧語にすればもう何でも通っちゃうよね」
おせちは、調理に集中したまま、ぽつりとそう応じた。
言葉は薄笑いの気配も混じらず、あくまで日常の続きにすぎないという体で――。
「お前たち、話を聞く気はあるんか!?」
尊はふたたび声を荒らげた。言葉だけでは意志が通じぬと見たのか、母は子らの和気藹々とした――しかし、見ようによっては排他的な印象をも与えかねない輪の中へ、早足で切り込んでいこうとする。
だがその直前、はちるがいち早く動き出した。白い尻尾をゆるやかに振りつつ身を翻し、
自然な動きで、尊の進路に己の両腕を落としあてはめたのだ。
「まあまあママ、落ち着いて!」
「……はちるっ、なにをしとるどかんか!!」
尊は、まるで爪を頼みにかかっていくようネコのように身をよじったが、
どうにもならないのは、体格差が生む絶対的なリーチの違いがそこにあるからだ。
「どーどー!どー!」
母の子供じみた衝動に困り顔を浮かべつつも、はちるの態度には一貫して揺らぎがなかった。
「でもさお母さん、そろそろ夕飯時だよ? ご飯食べてからでもいいじゃん。お母さんの分もちゃんとあるんだから、そんなに怒んないで」
すったもんだのやり取りを見かねたか、おせちがようやく尊の方へ顔を向け、落ち着いた声でなだめにかかる。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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