Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 07
「さなには”コレ”があるからね!シャカゾンビの仲間……欲を言うと私やはちるもちゃんとした服を着てる時に来てほしかったんだけど……」
ピンクレンズのハートのサングラスを掛け、上はクロップドされたインディゴカラーのデニムジャケットに身を包む。下はジャケットと同じ色に染められたカーゴパンツを穿き、厚底のサンダルで足元を固める――。
変装ということもあって、ガラにもない、そんな「ファッションモンスター」の装いをしていたおせちは、どこか残念そうにつぶやきながら、ギターケースの中に潜ませていたガンブレードをゆるやかに取り出していく。
その指のうごきは繭を割った蝶の羽化を手伝うかのように繊細で、ゆえに銀色の武器の物々しい煌めきは、昼光の下にひと雫ずつ丁寧にあらわれていった。
「……でも、どうやって私たちの場所を知ったんだ?」
ジャンパーに手を突っ込んだままのアシュリーの声は、焦りの感情というものからはほど遠い。
「それも捕まえて聞けばいいんだよ」
ガンブレードの薬室を開き、弾をひとつひとつ滑り込ませていく己の指づかい、そこから目を逸らさずにおせちは答えた。その手つきには熟練の料理人の皮むき作業を彷彿とさせて急ぐところがなく、それでいて無駄がない。
「ああ~、まあそうか。でもやっぱ、攻めてみて正解だったな。100点満点じゃないが、こっちの思ったルールと場所で戦える……」
納得したアシュリーは、人混みが掃けた後の余韻のように自分の足元まで転がってきて、靴先にささやかな感触を押し付けてきた空き缶を取り上げ、それを、何の気なしに燃やしながら返した。
指先で作ったちいさな輪の中に、目覚ましいほどの炎がいきなり立ち上がれば、その中で缶は茶色い粉となって崩れ去り、焼け残りの粉塵はそのまま風にさらわれて消えていった。
「悪いが、今からここはジャングルに作り変えさせてもらうぜ!」
腕をあらわにした特攻服に身を包んだプロディジーが、片足立ちになって腕を開き、ひょうきんにそう宣言すると、すかさず隣で声が返った。
「あっ、俺はサバンナがいいな!」
親父臭さを感じさせるアロハシャツのハヴォックは、その場で両足を揃えると小刻みな跳躍を始める。
彼なりの準備運動だろうが、3mにも近い身が地面を踏みしめるたび、舗装は軽やかに震動し、
近傍の街路樹は葉を散らしていく。この光景は、周囲の環境にとってたいへん迷惑と言うほかなかった。
「じゃ、半々にするか!」
とプロディジーが応じる。2人は一瞬、目を合わせてニヤリと笑うと、揃って前線へと飛び出す構えを
とった――その瞬間、空から刺すように声が降ってくる。
「おい、事前に決めた段取りで動けよォ!わかってんなァ!!?」
東京という街の、巨視の眺望においてははてしなく広がり、微視のまなざしにおいては
精巧無比なビル群を見下ろすほどの上空、そこを滑空する漆黒のカラスが声の主だ。
彼の翼が空気を強く打ち付け、次の瞬間には一段と上昇してみせるその様子は、
地上の狂戦士たちに下された号令の、視覚的なあらわれと見えた。
「うっせぇな……」
「しかたね、じゃ、さっそく行ってくるぜ」
そう言い残すと、ハヴォックは息を1つつき、ずるりと重心を落とした。
彼の肉体はもともと、肥満とも筋骨隆々ともつかぬ不定形な質量の塊なのだが、それが瞬く間に丸まり、
ちょうどオーブンの中で焼け膨れる餅のように異様な輪郭を成したのだ。
四肢が地に接した瞬間、足裏の肉厚がアスファルトにめり込み、
直後には、溜めた圧力をすべて爆発させるようにして地を蹴った。
音が跳ね、風が巻く。空気を押し割るほどの低い突風を背に、ハヴォックは猛獣の疾走を開始した。
ただし、その進行方向は――
4人の少女たちとは、まるで示し合わせたかのように真逆だった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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