Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 06
「なるほどわかりやすいや!……でもハムスターにも優しくなるともっと環境にいいぜ?」
とプロディジーは、ややおくれて車から降りてきた相方に注文を付け加える。
「あとカラスも丁重に扱え!……いや、アレだよアレ、あのメスガキ4人組を狙え! わかったら、バカ共、そらいけ!」
第3の声が響くと同時に、プロディジーの乗っていた車両のコクピットから、ひとつの黒い影が勢いよく躍り出た。それは1羽のカラス――そう、シャカゾンビの使い魔だ。
咆哮めく裂帛の指令を発したその漆黒の鳥は、陽光を背にして翼を大きく展開した。影が地上に落ちる間もなく、螺旋を描きながら高度を上げ、街の喧騒を遥かに見下ろす蒼穹へと舞い上がっていく。
やがて上空に達すると、その鋭利な瞳は地上を見渡し、混乱する群衆の中から
確実に4つの標的を選り分けた。
「アシュリー、知り合い?」
おせちは、アシュリーと並んで後方に着地した直後、その肩越しに目を細めながら問いかける。
「昨日助けたブタとオカピかな」
アシュリーはまるで驚きもせず、そうとぼけてみせたのだが、やがて戦闘の気怠い確信が、その横顔を徐々に染めていく。
「きゃあああああ!」
「逃げろ!!」
街では、群衆のはじけるような叫びが幾重にも重なり、通りの全体までが動揺の波に呑まれていくところだ。その混乱の奔流に乗じて――次の行動を決めかねていたようだったマツバラは、ひとつの重大な決断を下した。
騒ぎに呑まれまいとするのではなく、そのただ中に踏み込んでいったのだ。
肩をすぼめ、腕を果敢に前に突き出し、流れに逆らうようにして群衆を押しのけるその姿は、推定40代とは思えぬ俊敏さを見せる。
わずかな隙間を縫って、彼はひらりと横に身をひるがえし、
目の端に捉えた適当な路地裏へと、ほとんど反射的に身を滑り込ませた。
「あっ、逃げる!」
さなが、群衆からひとつこぼれ落ちた男の背を視線で追いながら叫ぶ。
それにすぐさま応じたのは、はちるだった。
「いいよほっといて、さな! たぶん、もう――直接この人たちに聞いた方が早いもん!」
その言葉に、さなは一瞬だけ目を見張る。
だが、次の瞬間にはすでに顔つきを変えていた。
静かな意志が瞳の奥に宿り、口元に迷いはない。
「――あっ、そっか!」
そう呟いた声は、空気を割る導火のようだった。
間髪を入れず、彼女は動き出す。両手にひと束ずつ握った呪符が、アコーディオンを勢いよく開くように、1枚1枚魔力に弾かれて宙へ舞い上がり、
紙片は螺旋を描きながら彼女の身体を巡る。
ただの黒いオーバーサイズのトレーナーが、
霊力の働きに感応して黒とオレンジの2彩を宿し、あざとくも儀式めいた、
うさ耳フード・パーカースタイルの道服が、右から左へと鮮やかに染みわたっていったのである。
そして腹の高さで両腕を交差させると、
すべての呪符は彼女の後背にて――まるでクジャクが天下に威儀を示すように、美しい扇状に展開される。
その立ち上がりには、ぎょっとするほどの鋭さと、平成ライダーの初変身を彷彿とさせる、侵すべからざる荘厳さがあった。いまこの瞬間、たしかに彼女は"ミーティス"としてこの場に立ったのだ。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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