Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 01 04
……神代の昔、日ノ本の地をはじめ司る立場にあった吉濱尚猛尊は、やがて「吉濱尊」という通名を得て、人としての生を歩むこととなった。
その彼女が、ある日、見かけも種族も異なる4人の赤子を同時に引き取ったこと――それは、
神としての役目を終えた後に始まる、もうひとつの物語の端緒だった。
やがてこの4人の少女は、「カルテット・マジコ」という名のヒーローチームとして世にその名を馳せることになる。
つまりこのタイトルは、彼女たち自身が選び取る揺るぎない未来の形なのだ。
今はまだ、世の中の右も左もわからない彼女たちが、幾多の栄光と屈辱に塗れながら、
やがて責任と叡智を兼ね備えた真に偉大なヒーローとなるまでの物語が、いまここから、
この何気ない日常の光景から始まっていく……!
*
なおも室内を俯瞰していたアシュリーは、やがて興味深げに声を上げた。
「おせち、今日チャーハンなのか?」
天井近くをたゆたう炎の少女がそう問いかけると、名を呼ばれた吉濱おせちは、手にしたフライパンを見つめたまま、沈んだ表情で答えた。
「うん……でも、もういいかな。だいぶ冷めちゃったし……」
聞かれておせちも、自分が手にする黒いものに、覇気のない目をしばらくの間落としてみた。
物を炒める音は、さすがにもう黒い鉄板のどこからもすることがなくなって、ならば、かき混ぜられた米をいたずらに冷えていかせるだけの器は、自分にとってもうただの重荷でしかない、という事実だけがそこに残されていた。
「なら急げ!」
アシュリーは火の尾を引きながら「ワ」の字に膝を折り、着地しては、背に燃え立つ炎をチェーンソーのように唸らせた。その音と気迫でもって、おせちに急を促したというわけだ。
「やった、ちょうどいいところにコンロが生えてきた……でも、この患者さん、生き返りますかね?」
フライパンを手にしたおせちは、咄嗟のことでつんのめりそうになるのをかろうじて堪えながら、いそいそと誘いに乗っていく。
「ビビらず思い切ってやれよ!チャーハンはな、でっかい焼きおにぎりみたいにするんだ!
火加減を気にしすぎてビチャビチャになるよりそっちの方が絶対美味しいからな!」
「それ、アシュリーがウェルダン好きなだけでしょ……」
憎まれ口を押収させながらも、おせちはすでに手を動かしていた。再び命を得たフライパンは、
彼女の手元で安堵して揺れ、それから数秒もすれば、少女の表情まで、いつもの穏やかなものへと戻っていった。
「一家の特級厨子、吉濱“おこげ”のアドバイスに間違いはない」
真名ではなく、あくまでジョークの一環だが、
ときどきアシュリーは自分のことを「おせち」になぞらえ「おこげ」と呼ぶ。
「おせちぃ……」
その小さな集まりに、この世に存在するありとあらゆる「飛び方」の中でも、とくに冴えない方のそれをするさなが流れ着いて、
「なに?」
「でもわたし、ピザ頼んじゃった……」
申し訳なさそうなひと言を、無音の着地にそっとつけ加えた。
「えっ、どうして?今日ちゃんと作るってあとで言ったでしょ?」
おせちの返しは、まるで年端もいかない子供の失敗を、やんわり諭す母親のようだ。
「朝にやらないって言ってたことだけ覚えてたんだもん!」
するとさなは、 乳児期の遺物が喉に引っかかったかのような独特の声で精一杯抗弁してみせる。
良心の呵責を拭うために、反射的に責任感を外へ押し出したのだろう。
「じゃあ、仕方ないかぁ。ま、報連相はちゃんとするべきだったね」
しかしおせちには、人生の初日から彼女との付き合いがあるわけで、
だからこそさなのぐずり癖に今更いちいち手こずってみせたりなどしない。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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