Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 03 10
そうするとアシュリーは、ヨガで言う「真珠貝のポーズ」をとったまま、
「なんだ、お前にしては賢いな――」
と軽口を叩きはじめた。
その言葉に、さなが「むっ」と頬を膨らませるが、アシュリーはそれを横目で流しつつ、
「――じゃあ、軍の基地に忍び込んで軌道観測データを見ればいいってことか」
と、ややくぐもったままの声で続けた。
「それ、現実的なアイディアじゃないと思うよ?」
はちるは目を細め、モニターをじっと睨みつけたまま、キーボードを小気味よく叩き続ける。
アシュリーの方には一切目を向けず、淡々と突っ込みを入れる。
視点が戻れば、いつの間にか逆立ちになっていたアシュリーは、
「……じゃあ衛星だろ! 軍事衛星なんてモンでミサイルはまず監視してるんだから、私がそこまで飛んでいけばいい!」
と、天地をひっくり返したまま力強く言い放った。
ワンピースを着るにも等しい、ブカブカな彼女のシャツは、裾が垂れ下がってその顔や手を完全に隠してしまっている。
脚が覗き、パンツも丸見えの、華奢な少女のあられもない姿が部屋の真ん中に逆さまに屹立しているというわけだ。
「まさかとは思うけど、それ持って帰ってくるつもり? ちゃんと毎日散歩に連れていけるの?」
おせちは、呆れた顔でいきなりそう言い放った。その口ぶりには、例え話ちょうどそのままに、
衝動だけでペットをねだる子どもに現実を突きつける親のような――その、けっして幸福とはいえぬ
結末にまで思いを巡らせての、苦い憂いが込められていた。
「ママは……そういうこと、しちゃいけないって言うと思うけどなぁ」
はちるが、眉を寄せて弱ったように口をすぼめる。
「おいママっ子どうぶつ、今から本当に持って帰ってくるからデータ取れるよう準備しとくんだぞ!」
バク中の終端動作のよう勢いよく身を後方に躍らせ、ようやくまともな立ち姿に帰ったアシュリーが、鼻息も荒くそう言い切った。
彼女の言葉には、あきらかに「強行」の意思がある。
「ダメだアシュリー!待って!」
おせちの制止も聞かぬまま、アシュリーは窓へ向かって、この狭い部屋を一気に駆け抜けた。
踏み切ったその瞬間、彼女の全身が変容すれば、部屋の中は一瞬、真昼よりも強烈な白の閃光に満たされる。
跳躍とともに放たれたエネルギーが、周囲の空気を火花のように裂きながら展開し、
アシュリーの身体は滑らかに削り出された炎の彫刻として、空へと射出される。
後方に引かれた髪は尾の長い流星のように燃え立ち、その姿はわずか数秒のうちに、夜の蒼穹へと溶けていった。
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