Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 03 08
……見ての通り、本来はブラジャーなど必要ないほどの控えめな胸回りではあるが、それでもアシュリーは見栄を張って、灰色をしたコットン地のスポーツブラを普段から身につけることにしている。
いま、その上から袖のだぶついたシャツに頭を突っ込んでいった彼女は、
どうにも腕の通し口を見つけられず、布の中でしばらく格闘する羽目になっている。
ややあって彼女は、やっとこさ頭部と腕を然るべき穴から飛び出せ、シャツの裾を引き下ろして、
「よし、じゃあ早速かましてやろう!N.W.A.『Straight Outta Compton(コンプトンから直接行くぜ)』の精神だ」
と、勇ましく宣言する。
「でも優先順位は忘れないようにしなきゃね。ミサイルの空縁への落下がシャカゾンビの陰謀だってことを証明して戦争を回避する。
それが最優先。シャカゾンビを倒すのはその次。私たちはそう動こう」
おせちの冷静な指示によって、場の雰囲気が固まり始めたかに思われたそのとき、
寝転がっていたはちるが、勢いよく上体をベッドから跳ね上げて言った。
「それはいいけどさぁ、行くったってどこに行くの?攻めるにしたって、守るにしたって、ヒントがないのは何も変わんないよ!」
ぼさついた前髪の隙間からのぞく、真ん丸な目。ユキヒョウの娘のその瞳には、
この状況の先をなんとかして読み取りたいという焦りが宿っている。
「いい質問だ。アシュリーちゃんが答えを教えてやる。
北朝鮮の首脳部に直接カマしに行けばいい。あいつらが挑発でミサイル撃ってくるのが全部悪いんだから、責任を取らせればいいんだよ。キムの野郎の、ボールみたいに肥えた体をホワイトハウスの正面玄関までドリブルしてやれば、それで話は終わりだろ」
するとアシュリーは、得意げにこう即答したが、
「それは――むしろ確実に戦争の引き金になっちゃうぢゃん……」
さなの冷静な指摘が入ると、一転して、むすっと口を閉ざしてしまった。
まもなくさなは、血気に逸る姉妹のやむにやまれぬ心情を察し、ふと彼女に後ろから抱きついて、
ぬいぐるみのようにその腕を弄びはじめた。
「なにするんだよ!?」
アシュリーは、突然絡みついてきたさなの指を鬱陶しそうに払いのけようとするが、
「だめ!リラックスして」
さなは、一種の美術作品として完成された仏頂面を保ったまま、さらに手を強引に巻きつけてくる。
こうも整いすぎた顔立ちでは、目や口といった要素を不用意に動かすことさえ、造形の均衡を壊しかねないよう感じられる。
「……おい!」
刺々しいじゃれ合いの末に、さなの目論見どおり、アシュリーの気勢はいつの間にか鎮まりはじめていた。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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