Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 03 05
09月28日。この日、緊急の会議が開かれていたのは何も大統領官邸だけではない。
ここ空縁州の片隅に位置する吉濱家――その中でも、はちるの私室が、同じ種類の重い緊張感に満ちていた。
この部屋は、間取りの広さゆえに吉濱家の子世代全員のたまり場になっており、4人はそこで寝起きを共にしている。
年頃の娘たちが、テントのように窮屈な空間で肩を気兼ねなく寄せ、溶け合うかのように暮らすさまには、普通の親なら、何かしらの危惧を抱きかねない異様さがたしかにあるかもしれない。
しかし人間の本質的な部分において、お互いをはてしない似た者同士だと知る彼女たちには、
むしろ、これ以外の暮らしが物足りない。単なる家族愛の域を超えた、奇妙なほどに強固な連帯が
円らかに実現されている間にこそ、彼女たちにとっての本当の幸せがあるのだ。
時はややさかのぼって、その日の学校帰り。
家からほど近い下町の自販機通りで、4人は足を止めていた。
連日の緊張のせいか、誰も多くを語らず、壁やプラスチックのベンチに体を預けており、
それぞれが手にした冷たい缶飲料に口をつけ、静かに息を吐いていた。
夕暮れの薄明かりが、自販機の光とまじり合い、疲れきった彼女たちの横顔を柔らかく照らしている。
……この時点では誰も知る由もないことだが、
しかし、歴史の転換点とは、得てしてこういった何気ないひとときに紛れて訪れるものである。
彼女たちにとっての”それ”はもちろん「シャカゾンビに対する積極的な攻勢」――その第1歩となる心構えのことだ。
スマホを見つめたまま、うつむきがちにその画面を指で弾いていたおせちだったが、
「……うん?」
ある瞬間、ふいに小さな声を漏らした。
『
【速報】主要SNSで大規模障害 ユーザー情報流出の可能性も
09月28日(金) 17:30配信
Xitter』『Pixagram』『Facehub』など、複数の主要SNSプラットフォームにおきまして、
本日未明より国内サービスに接続障害が発生し、数百万件規模のユーザー情報が外部に流出した可能性が浮上しています。
サイバーセキュリティの専門家は、何者かによる大規模なサイバー攻撃の可能性を指摘しており、
一部では、空縁州で発生した弾道ミサイル着弾事件との関連を疑う声も上がっています。
政府は現在、関係省庁を通じて緊急の実態調査を開始しており、
各プラットフォームも、ユーザーの皆様に対し速やかなパスワード変更や二段階認証の設定など、
セキュリティ対策を講じるよう呼びかけています。
』
といった記事に、彼女の目は釘付けにされたのだ。
「これ見て。Xitterとかいま繋がんないんだって」
おせちが、スマホの画面をこちらに向けて見せると、
「?」
のこりの3人も自然とその表示に顔を寄せた。
『
コメント51件 おすすめ順/新着順
kka
これって、例の空縁州の件とタイミング合いすぎじゃない?
ミサイルだけじゃなくて、ネットワークも一緒に狙われてるってこと?
北のサイバー部隊が動いてるって話、前にも出てたし、ちょっと不気味だな。
jao*****
こういうとき、どれだけの人がパスワードの使い回ししてるか考えるとゾッとする。
とりあえず重要なアカウントは二段階認証にしたほうがいいですよ。
どこから何が漏れるか分からない時代だから、自衛するしかない。
クラトス
またしても「緊急調査中」で終わりそうなパターン!
いつも後手に回ってるけど結局こういうインフラ系のセキュリティって
本当に専門家に任せてるのかな?形だけの対策じゃもう防げないでしょ
』
「……コメント見てると北朝鮮のハッキングらしいよ。でもホントかな?そういうの、なんでもかんでも繋げて考えたがる人いるしさ」
スマホを引き戻して、また軽快な指さばきを見せはじめたおせちは、画面とにらめっこしながら、自分の考えを淡々と述べる。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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