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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire

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Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 03 02

一方のミーティスとスヌープキャットは、常に火元の明るさの中で活動している。

地表とさほど変わらぬくらいの低空を超能力で疾走するモダンスタイルの道士は、畜舎をあふれ出した牛の群れをみずからの札で、トンネルのよう囲って野原へと誘導し、

スヌープキャットは黒革の肩に傷ついた獣を担ぎ、燃える畜舎と安全な草地を往復している。


炎の瞬きと黒煙が視界をひっ迫するこのむずかしい現場で、彼女たちは、あらかじめ共有されていた行動方針を軸に、動揺ひとつ見せずそれぞれの役割を全うしていた。


ホットショットの炎が、まるで今宵の出来事に終止符を打つように、夜空の広い範囲をひとめぐりしてから落ちてくる。


ただしその、猛禽類の狩猟めいた傲慢な降下は、おどろくほど音を立てない。

着地した草むらでも、ただ熱風が流れ、草の先端がわずかに震えるだけだった。

というのも、今の彼女は、その形態からも察せられる通り質量を持たないのである。


「どうだったぁ?」

ふいに隣に収まった炎の人影――ホットショットに、スヌープキャットがすばやく問いかければ、

直後には、電撃混じりの高速な残像と共に、イムノがその真横に滑り込んでくる。

彼女の、声と体はほぼ同時に現れた。


「巻き込まれてる人はいなさそうだった、やっぱり」


「こっちもだ」

ホットショットもみじかく応じる。


そこに、持ち場での作業を終えたミーティスが、ホバー移動で流れ着いた。

ホットショットをのぞく3人の顔は、煤で黒ずみ、額には汗がにじんでいたが――

それと同じだけ、全員の表情には、確かな安堵の色が浮かんでいた。


4人組から20mほど離れた場所には、尊が立っていた。火の明かりに片頬を染めた彼女は、消防局長や警察署長に対して、ほとんど目くばせの延長といった程度の軽い一礼をおくり、その場を後にする。

娘たちの救助活動への、参加の許可を取り付けたのは他ならぬ彼女なのだ。


「おぉぅ、ご苦労さんじゃったなお前たち。見たか?爆発の原因、北のミサイルじゃと」

娘たちの集まりに歩み寄った尊は、まるで話の続きを持ち出すような調子でそう語りかけた。


「らしいね。今大統領が話してる」

おせちが手にしているスマートフォンの画面には、ViewTubeのライブストリーミングが映し出されている。


その同時接続数はすでに200万を超え、なおも急速に増え続けているが、

コメント欄は封鎖されており、そこに募る熱気や緊迫感は数字の上でしか読み取れない。


「……予測軌道とズレた?」

おせちは、配信から漏れ聞こえる国家元首の発言を、思わずオウム返しする。

ちょんまげのいかめしいこの男、そう、日本国大統領「シイタケ・ノブナガ」の語調は元々厳かで、

国民への説明を第一とした厳粛な口調を心がけていても、そしてスマートフォンの小さなスピーカー越しであっても、その声は、常に『敦盛』を吟じるかのように、音域の底部がなお圧巻の迫力でひびき渡ってくる。


「ほう……なら間違いないの。この空縁にそれが落ちたというのは、シャカゾンビからの宣戦布告じゃ。わしらに対するのう」

尊が断言すると、娘たちは一様に目を見開いた。全員がその重い言葉を飲み込むまでには、相応の時間を必要とした。


「でもそれは……そこまで狙えるなら私たちの家を直接狙った方がよくない?」

とおせちが聞く。


「そう、そこなのよ。わしはそれを、ミサイルが迎撃される可能性を思ったせいじゃと見とる。

わしらのスーパーパワーならそれが出来るからな。――つまり、奴のテロにはもっと大きな本来の意味がある」


「そっか……戦争を起こしたいんだ!」

はちるの気付きは、そこにいる全員の胸にわだかまるものを的確に代弁する。


尊はしずかに頷き、

「そこで、今からわしは自分にできる限りのことをしにいく」

決然としてそう言った。


「えっ?」

さなが、表情をこわばらせる。

「悪の所在を明らかにするのよ。今回の1件がシャカゾンビの陰謀であることを天下に知らしめ、極東世界のアポカリプスにも繋がりかねん危険な流れを断ち切るのじゃ」


*


……ミサイルの着弾点では、農地そのものを薪と化した巨大な残火を、1000人規模の野次馬が取り囲んでいる。

彼らはいくつかの群れにわかれているものの、その視線は一様に火柱へと注がれ、誰1人として言葉を発しない。

人の不幸を興味本位で眺めるような下卑た無邪気さはなく、そこにあるのはただ焦燥の色のみだ。

この突発的な大惨事は、人の正常バイアスを容赦なく打ち砕き、抗えぬほどの圧倒的な力で場を支配した。

だからこそ、それに呑まれた群衆の心には、被災者の、純然たる気分だけが澄みやかに行き渡ってしまったのである。

炎は次第にいきおいを失いつつあるものの、空気にはなお不快な熱と焦げ臭が漂い、群衆の足元で揺れる影を異様なほど長く引き伸ばしていた。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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