issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 16
ハヴォックがレバーを叩き込み、主電源が復旧する。けたたましいアラートが鳴り止み、
洞窟を染めていた血のような赤色が、無機質な白光へと戻った。モニターから警告表示が消え、
一瞬だけ、安堵の空気が流れる。
――だが数秒後、甲高い電子音がまたもやナイフのようにその静寂を切り裂いた。
新たな警告ウィンドウが、球状モニターの中央に、まるで殴りつけるように表示される。
【緊急警告:高精度観測波の照射を検知】
【推定発信源:地球静止軌道セクター6I-107】
【識別コード:不明(民間衛星プロトコル非該当)】
【警戒レベル:コードΩ】
瞬間、シャカゾンビの口から漏れたのは、
「まっ……まさか……!危惧していた、ことが……こんなにも」
叫びではなく、現実を拒絶するかのような掠れた呻きだった。電力の復旧という束の間の
望みは、一瞬にして、新たなる絶望へと塗り替えられる。
メインの警告ウィンドウに呼応し、コンソール群や壁面に存在する無数のサブモニターまでもが連鎖的に開いていく。軌道計算、波形分析、発信源の特定――理解不能な情報と光の洪水が、
その場にいた全員の顔を蒼白に照らし出した。洞窟の空気までもが、
絶対的な捕食者の視線に射抜かれたかのように、機械的な恐怖で凍りついていた。
「ログを洗え!どの勢力からの偵察信号だッッ、1秒でも早く特定しろ!」
シャカゾンビの怒号が響き渡る中、研究施設は情報戦の渦に呑み込まれた。
彼はコンソールのキーを砕かんばかりに叩きつけ、その傍らでは、カラスのカーディBが、
額に汗を浮かべながら漆黒の羽先でキーボードを乱打する。
だが、その狂乱は、カーディBの絶望的な一言によって唐突に断ち切られた。
「……あっ、ボスゥ!こりゃとんでもなくマズいです!!……よりにもよって、”アイツら”にぃぃイッ!!!」
その言葉が合図だった。
中央の球状モニターが、激しいノイズと共に明滅する。次の瞬間、スクロールしていた全てのデータが弾け飛び、そこに1枚の画像が、まるで呪いのように浮かび上がった。
新聞の切り抜きを貼り合わせたような、不穏な書体。血よりも濃い赤色の背景。
それは――『ペルソナ5』の“心の怪盗団”が放つ予告状を彷彿とさせる、悪意に満ちた遊び心で作られた、1枚のメッセージカードだった。
『人類史上最悪の大罪人、
シャカゾンビ殿。
人心を弄び、社会の不安を煽り、戦争を扇動する。
人類の破滅を望むお前の行為は、もはや看過できない。
我々は“母”に代わって、永年の因縁に決着をつけることにした。
空縁から直接行くぜ、楽しみにしてろ。
カルテット・マジコより』
伊達な意匠とは裏腹に、そこに刻まれた筆致は、冗談の欠片もない本物の殺意を放っている。
けたたましく鳴り響いていた警報音が、まるで遠のいていくかのように、シャカゾンビの外耳孔には感じられた。
その場にいた誰もが、息をすることさえ忘れて悟る。
――”奴らは、もう道中にいる”。
高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。
https://x.com/piku2dgod
本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256




