issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 15
地上36,000km――。
定点軌道上を周回するカルテット・マジコの私設監視衛星。
その広域走査AIが、地表からの反射スペクトルに、
予測値からわずか0.01%にも満たない――だが、けして見逃せない誤差を捉えた。
「異常検出。座標グリッド7G-85。該当エリアの優先度を最大へ引き上げ。
全帯域センサー、集中モード。高解像度シーケンス、実行」
無機質な合成音声が、鋭利な緊張を孕んで真空に響く。衛星本体のレンズ群が、
蛇蝎山上空へと一斉に指向を変える。可視光、赤外線、マルチスペクトル――あらゆる観測システムが、偽装の剥がれた一瞬の隙を逃すまいと作動し始めた。
はたして、衛星の眼が捉えたのは、ただの山ではなかった。
地表に露出した異質な建造物、剥き出しの軍事設備、
そして偽装の崩壊に伴い漏れ出した膨大な熱源反応。
テラー・スクワッドの拠点――その全貌が、数分間にわたり、無防備に宇宙へと晒された。
間もなく、地上施設の予備電源が完全復旧し、蛇蝎山は再び完璧な偽装のヴェールを身にまとう。
何事もなかったかのように、ただの山としての外観を取り戻した。
だが、すでに手遅れだった。
《マリーシア》が記録した数分間のデータは、即座に暗号化され、
吉濱家のセキュリティ・サーバへと送信される。
同時に、はちるのスマートフォンが警告音を発し、
その液晶には、覆い隠しようのない“真実”が投影される。
シャカゾンビの狼狽は、もはや彼だけのものではない。
最大の敵が、そのすべてを手にしたのだ。
――蛇蝎山の秘密は、暴かれた。
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