issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 13
「貴様ら――ッ!!」
地の底を這うような声が、研究区画全体を震わせた。
シャカゾンビが作業を中断し、灼熱の視線で2人を射抜いたのだ。
彼は大股で歩み寄る最中、甲冑に覆われた指で、輝くクリスタルを豪胆に示し続ける。
「それはただの宝石などではないぞ!!このゲートの心臓、“時空座標安定装置”に使う精製度99.999%の超純結晶体――そのスペアだ。その価値は、貴様らのガラクタみたいな頭蓋骨を金で満たしても、
まだ足りんほどだなんだぞ!」
彼の一言一句はすぐさま、鋼の杭のようにして、萎縮する2人の脳裏に打ち込まれていく。
「その貴重な結晶体をダーツの的にするだと!?もし傷ひとつでも付けてみろ……貴様らの屍すら、
この山には残さんからな!!」
雷鳴のごとき怒号が構内を駆け巡る。
プロディジーは、背筋を冷たいものが這い上がる感覚に、思わず息を呑んだ。
全身が恐怖に硬直し、喉の奥で乾いた音が鳴る。
――だが、その緊張の頂点で、なんという間の悪さだろう。
鼻の奥がむず痒くなり、押し殺そうとすればするほど、破滅的な予感がこみ上げてくる。
そして彼は、どうしてもそれが抑えきれなかった。
「……ヘックショォン!」
破裂音にも似た盛大なくしゃみが、張り詰めた空気を引き裂いた。
プロディジーの全身が、意思とは無関係に激しく痙攣する。その反動で腕が跳ね上がり、
握りしめていたナイフが宙を舞った。
プロディジーが感じた極度の緊張が、そのまま世界の時間を引き伸ばす――。
刃は回転しながら、まず手近な壁に当たって甲高い音と火花を散らす。そこから天井のパイプへ、さらに金属製の計器盤へと、ピンボールのように予測不能な跳弾を繰り返していく。
赤い非常灯の光が、回転する刃の表面を舐めるように流れ、
恐怖に引きつったプロディジーとハヴォックの顔を、一瞬だけストロボのように照らし出した。
「「ひっ!?」」
引き伸ばされていた感覚が、現実の速度へと叩き戻され、
青ざめた2人の視線が、狂ったように暴れ回る刃の軌跡を必死に追う。
カン、
カン、
と無機質な音が響くたび、彼らの心臓が跳ねた。そして、
ナイフは最後の跳ねを打ち――まるで運命に導かれたかのように、
発電管理端末のコンソールへと吸い込まれていった。
――ガコンッ!
鈍い衝撃音。
刃が突き刺さったパネルから火花が噴き出し、
固定されていた主電源のレバーが、ガクリと音を立てて下方へ倒れ込んだ。
直後、世界の音が消える。
主電源の唸りが途絶え、一瞬の完全な暗闇が訪れる。次の瞬間、洞窟全体が血のような非常灯の赤に染まった。静寂の中、起動シーケンスに入ったゲート本体と、マクロブランクのコンソールだけが、不気味な青白い光を脈打たせ始める。
その、世界の終わりを思わせる光景の只中で、
コンソールを覗き込んでいたマクロブランクが、歓喜に満ちた声を上げた。
「き、来たぁぁぁぁ!……電力!ついに安定したギガワット級の出力がきたでちゅ!
よく決断したでちゅなぁ!?シャカゾンビィ!これで演算がバリバリ進むでちゅぅ!」
事態の真相をまるで知らぬ天才の狂喜の声だけが、赤い光の中で虚しく反響していた。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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