Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 03 01
CHAPTER 3
204X年09月07日 19:27 JST
北朝鮮民主主義人民共和国発射の弾道ミサイルが、日本国空縁州郊外に着弾。
弾頭は農地に落下。畜舎1棟、サイロ2基、圃場12ヘクタールが全焼。火災は近隣林野に延焼。人的被害は確認されず。
防衛省の予測――排他的経済水域内落下――と大きく異なる結果。JADGEシステムによる迎撃を試みたが、異常な軌道データにより失敗。
政府は即日、緊急閣議を招集。武力攻撃事態の認定を巡り、議論が紛糾。
19:33、消防隊が現場に到着。延焼は制御不能。
19:40、外務省が北朝鮮に抗議声明を準備。国連安保理への緊急会合要請を協議。
19:47、空縁州知事が避難勧告を発令。半径2キロ圏内の住民に避難指示。
気象衛星が火災の熱源を捕捉。煙は上空3キロに達し、風向きにより拡大。
防衛省はミサイルの軌道解析を開始。初期報告では、異常な軌道曲線を確認。北朝鮮の技術的誤差か、意図的攻撃かと推測。
19:55、情報収集衛星が北朝鮮の追加発射兆候を監視。結果は未確認。
国民の間に動揺が広がる。SNS上で「空縁州」「ミサイル」の検索が急増。
20:00、大統領官邸が緊急記者会見を予定。国民への説明が急がれる。
*
炎と黒煙に閉ざされた空縁州の夜空。
その中央にそびえるのは、威厳をまといながら静かに昇るエアロゾルの巨柱だ。
漆黒の瘤が連なるようにして次々と膨れ上がり、やがてははかなく解けゆくそのはてなき連鎖は、
地に近づくほどに炎のきらめきを宿して、熱に脈打つ輝きを見せており、
そういった姿は、黒い胞子がひとつずつ膨れあがり、破裂しては空へと舞い上がる――そんな、異形の呼吸を大地が幾度となく繰り返しているかのようだ。
この痛ましいほどに深刻な静寂の中で、その黙して立ち続ける煙の塔だけが、風に移ろいゆく姿のまにまに、集まった人々の運命を高みより見下ろしている。
*
その激しくせめぎ合う光と影の狭間を縫って、ひと筋の光が山の向こうへと滑り込んでいった。
……あれはなんだろう?隕石か?ミサイルの再来か?あるいは未確認飛行物体か――
いや違う!光の中心にあるのは、ひとりの少女の姿だった……!
北朝鮮のミサイルは白走市郊外の盆地に落下した。ゆるやかな傾斜を持つ山肌に囲まれたその地形のせいか、爆心地から滾々と湧きつづける業火と黒煙は、遠望すれば椅子に腰かけた人々に温かく見守られるキャンプファイアのような、どこか牧歌的な光景に映る。
吉濱家の特攻隊長が、焔の尾を長く曳いて辿り着いた、名もなき山の稜線は、祭りの喧騒から取り残された地域のよう暗く沈んでいる。
しかしその静寂もまた、下方から這い寄る赤い混沌に侵されつつあり――、
「おぉ……やってんなBBQ!これなら火種じゃなくて肉を持ってきた方がよかったな」
お得意のジョークを飛ばしてから、ホットショットは一気に地表へと舵を切った。空気を裂く熱の渦が、彼女の身体を中心に次々と巻き起こり、その赤い軌跡は、闇に沈んだ木々の上を鮮やかに滑る。
「それってさ…大きな火は、より大きな爆発で消せばいいって…コト!?」
ハチワレのモノマネを唐突に披露した理由はさておき、今しばらく彼女は爆心地周辺の暗い空を鮮烈に裂き走る。
彼女の姿が、火の手の迫る山の頂をかすめ飛ぶさなか、
振り上げた手から放たれた炎の礫は、またたく間に空中で膨張し炸裂した。球形の爆風が次々と広がり、
山の木々を根こそぎ倒し、烈風を巻き起こして燃え盛る炎を強引に押し返したのだ。
「……ソイルっ!」
ホットショットの攻勢に呼応するように、後ろに滑り込む姿勢で夜の森から跳躍したイムノは、
構えたガンブレードから、水色にかがやく弾頭を矢継ぎ早に撃ち放った。
それらが空中で炸裂すれば、一帯にはダイヤモンドダストのような結晶性の霧が、一瞬で城壁が築き上げられるかのように横広く立ち昇る。
その気高い純白の靄に火が触れるや、凍気は厚い蒸気の層となって、炎の侵食を激しく拒絶し、一転して水煙は、斜面を雪崩のように駆け下りはじめる。
6合目までを侵していた炎は、まるで遡上する溶岩のよう一帯に隈なく行き渡っていたが、2人が引き起こした光景が山の上手に並び立つとまたたく間にその着実な勢いをうしなっていった。
夜の闇はけして恒久的に祓われたわけではなかった。それらは、静穏の取り戻されたそばから
何食わぬ顔で、自分たちが元あった場所にふたたびにじみ出してきたのだ。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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