issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 10
直後、シャカゾンビの骸骨の顎が、関節の鳴る乾いた音を立てて開かれる。
「……そのマネタイズも込みだ!マクロブランク!我輩はそのつもりで貴様にこの研究所の全権を託したのだぞ!」
傲岸不遜、責任転嫁の極みたる叱責が、洞窟の岩肌を這うパイプラインを震わせ、反響する。
浴びせられた言葉に、マクロブランクは――もし毛が生えていたならば――全身を逆立てたであろう激越な反応を示し、洞窟の空気が限界まで張り詰めた。
「ふざけるなでちゅ~ッ!」
「口答えをするな――ッ!!」
ハヴォックは、頭上を行き交う罵声を、遠い尾根で響く雷鳴のごとく聞き流していた。
繰り返される不毛なやり取り。
互いの怒鳴り声がドームの闇に溶けていくたび、彼の中には退屈という名の澱だけが降り積もる。
だからこそ、彼はその圧に晒されながらも、別世界の住人のように気の抜けた顔であくびを噛み殺し、
片肩に引っかけていたレンチを手慰みに回し始める――だがその拍子に、重い鉄塊が指からすっぽ抜けた。
ゴウゥンッ―――!!!
鉄床を直撃したレンチが、鈍くも荘重な音を放ち、
まるで聖堂の鐘が赤屋根の街に正午を告げるかのような震動が、
研究区画の隅々まで伝播していった。
訪れたのは数秒の静寂。
やがて、金属音の余韻を踏み潰すように――
「がはは!」
ハヴォックは、自分の失態を豪快に笑い飛ばした。
その笑い声は、あろうことか隣のプロディジーの頬を緩ませ、
2人の悪友めいた顔が、研究所の、不健康な白光の下に並んで浮かび上がる。
なんとも間の抜けた一幕だったが、同時にそれは、
マクロブランクの嘆きの正しさを、何よりも雄弁に物語る瞬間でもあった。
そして彼は、好機と見るや否や声を張り上げる。
「……見ましたかでちゅ、これが“最先端多次元研究施設”の実情でちゅよ!世界を変える頭脳と、
世界一マヌケな現場力――なるほど、じつにバランスが取れてまちゅね!」
「ぐぬ……」
シャカゾンビは低く唸り、骨だけのこめかみをガントレットで押さえた。
その仕草には、冷徹な支配者らしからぬ――どこか人間じみた疲弊の色が滲んでいた。
マクロブランクの訴えは、痛いほど正鵠を射ている。
カルテット・マジコという規格外の脅威に備えて、戦力の大半を外部任務へ回した結果、
このテラー・スクワッドの本拠地たる蛇蝎山は、昼夜を問わずもぬけの殻も同然となっていた。
いかに壮大な計画や理念を掲げようとも、
資源も人手も欠けたままでは、歯車はひとつとして噛み合わない。
この現場は今や、“足りない”という言葉そのものが形を取って歩いているような有様だ。
神経質な女のようにして、こめかみに添えていたままの手を離すと、
シャカゾンビは天井の配線を仰ぎ見、そこに長く重いため息を落とした――。
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