issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 08
あくる日の蛇蝎山――地下研究所。
紫がかった鋼鉄に、配管や回路めく模様の走った壁面が、どこまでも続く空間。
そこを満たしているのは、休眠中の機械群がときおり漏らす微弱な駆動音と、
リサイクルされた空気を押し出す冷却ファンの単調な唸りだけだ。
天井部では、密林の地表のように絡み合ったケーブルや配管が、
複雑な幾何学模様を描きながら走り、合間を縫う保守用ランプの青白い光が、
舞い上がる細かな塵粒をまるで銀河のホログラムのごとく浮かび上がらせていた。
この、広大な空間のただ中で、妙にちぐはぐな光景が展開されている。
「うぅ……!この反重力スタビライザー、そろそろ運ぶの……本気で手伝ってほしいでちゅ!……そこのふたりぃ!」
――マクロブランクの叫びだった。脳から伸びた4本の触手を精一杯うねらせて、
数t級の大型パーツを担ぎ上げようと、悪戦苦闘している。
だが重厚な機械には、彼の努力に応じる気配はなく、
ぬめりを帯びた触手は磨かれた金属面を滑るばかり。
「ふんふ~ん♪」
すこし離れたところでは、プロディジーが作業台を占拠し、ひとり鎖を磨いていた。
豚の腸を思わせるほど、ねじれと曲がりを繰り返す長大な金属の連なり。
それを机いっぱいに這わせ、1本1本の輪の裏側にまで「5-56」を丹念に吹き付けていく。
金属の表面がしっとりと油を帯びると、彼はわざわざ刀拭い用の上等な和紙を取り出し、
息を止めて仕上げにかかった。愛情のこもった指先が滑るたび、鎖の肌は紫を含む光沢を返す。
やがて、手にしていた鎖の端を机に置くと、それはまるで鈴のように――あるいは、彼の愛に応えるかのように、えらく澄んだ音を立てて鳴った。
「はぁ~!いいッスねぇ~!最高……」
プロディジーはその響きに満足げに眉を緩め、自らの面長な顔を金属面に映す。
そこに滲む歪んだ微笑を、彼はゆっくりと見つめ返し、
まるで自身の内側の秩序を確かめるかのように、ふたたび鎖を手に取り、もう1周と貪欲に磨き始めた。
一方でハヴォックは巨大レンチを頭の下に敷き、いま、朝を迎えたかのような盛大なあくびを発している。
その瞬間――研究所の最奥、エレベーターの受け入れ口に、低い駆動音とともに影が落ちた。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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