issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 02
その瞬間、世界の輪郭がゆっくりと反転し、魔法にかかった舞台が、ありふれた撮影現場へと姿を変える。
アシュリーの横顔をとらえていた「手持ちカメラ」の正体は、おせちが肩に担ぐプロ用のスタビライザー付きシネマカメラだった。
彼女のすぐ脇では、音声担当のさなが巨大なガンマイクを両腕で支え、アシスタントが夕映えの光を受けて大きなレフ板を掲げている。
スタッフの背後には、全体の流れを見守るマネージャー・吉濱尊の姿。
そして、今まさに録画したばかりの映像を凝視しながら、何度も頷く監督――その真剣な眼差しが、現場に程よい緊張を呼び戻していた。
歩道の端で「ウィーン」と控えめに音を立てていた清掃ロボットは、撮影助手のはちるが握るラジコンのコントローラーによって操作されている小道具だ。
「OK」の声が飛ぶや否や、彼女は慣れた手つきでロボットをUターンさせ、スタート位置へと誘導していく。
「アシュリーさん、今の表情、すごく良かったですよ」
モニターを覗き込んでいた監督が、満足げな笑みを浮かべながら声をかける。
「ただ、最後のピースサイン、もうすこしだけ……“素人っぽく”お願いします。今の、ちょっとキマりすぎてたので」
プロの現場らしい奇妙な注文に、アシュリーは肩をすくめて「ああもちろんだよ、わかってるって」と軽く返す。そのまま、カメラを降ろしたおせちの顔を覗き込み、悪戯っぽく笑った。
「ていうか、お前、笑い声デカすぎ。マイクに入ってたろ今の」
「ご、ごめん……。だって、アシュリーの真面目な顔、面白くて」
そのやりとりの間に、メイク担当が素早く駆け寄り、「照明の反射、押さえますね」とアシュリーの額にそっとパウダーを乗せる。夕景をより美しく際立たせるため仕込まれていた照明は、
スタッフの手で控えめに消されていく。
やがて監督が、再び現場を制するように声を張る。
「はい、じゃあ本番もう1本行きまーす! 各ポジション、準備お願いしまーす!」
合図とともに、現場の空気が一気に引き締まる。
アシュリーは欄干に向き直り、カチンコが乾いた音を打つ。
「はい、テイク2、よーい……アクション!」
その瞬間、彼女の表情からさっきまでの快活な光がすっと消える。
そこに佇むのは、再び、夕暮れの街をどこか寂しげに眺めるひとりの美少女。
計算され尽くした「自然さ」のなか、彼女はもう一度、あのセリフをしずかに呟くのだった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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