issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 05 40
それはいつかの春。まだ雪解け水の匂いが濃く残る、北の山あい。
朝靄の奥で、猟師たちが吐く息を殺し、古びた猟銃の冷たい鉄を握りしめていた。
木々の影から悠然と姿を現した巨大なヒグマが、まるで己の庭を散策するかのように、
芽吹いたばかりの畑を無造作に踏み荒らしている。
そこへ、1台のパトカーが泥を跳ね上げながら止まった。
「待ってくれ!」
制服姿の警官が、大きく腕を振りながら駆け寄る。
「こっちは正規の狩猟許可もある。今ならまだ間に合う!」
猟師の1人が、必死に食い下がる。だが警官は、肩越しの無線に意識を向けながら、
苦い顔で首を振った。
「……すまない。例の“動物保護特別措置法”がまだ生きてる。
クマ人間が遺した悪法でも、1度通った法律は、すぐには死なないんだ」
「……そんなもの!……あんたも、納得してない顔だが」
猟師が低く問い返す。警官はわずかに目を伏せ、言葉を詰まらせた。
「当たり前だ。しかし、現場の俺たちに何ができる……。どうか、引き上げてくれ」
その背後で、ヒグマは興味を失ったように森の闇へと消えていく。
後には、無残に荒らされた畑と、誰にもぶつけよう のない怒り、
そして、どうしようもない無力感だけが、冷たい風に吹かれていた。
――世界には平和が戻った。だが、本当に、何かが変わったのだろうか。
たとえ巨悪の支配が終わろうとも、「正しさ」の名の下にひとたび生まれてしまった理不尽は、亡霊のように、そう簡単には消えてなくならない。人は、未来へと向かう過程で、何度となく同じ轍を踏み、幾度となく間違いを選ぶ。
……ヒーローとは、人々の犯す、あらゆる過ちを正し、完璧な世界を実現する者ではない。
ただ、誰もが「昨日とは違う明日」を選べる自由を、静かに守り続ける者だ。
その選択がどれほど拙く、遠回りなものであっても、彼女たちは手を出さない。
見守ることしかできないのではなく――見守ることしか、してはならないのだから。
世界は民意によって過ちを繰り返し、みずからが招いた混沌の中でもがきながら、それでも少しずつ前へ進む。
不完全で、不器用で、それでも誰かの意志によって動いていく――そんな世界の姿を、肯定すること。
そのような矜持の中に、この物語の理想形もきっと静かに宿っている。
ここまでお疲れさまでした。第3話、いかがでしたでしょうか。
これにて復旧作業が完了いたしましたので、本日の20時に特別編『カルテット・マジコライナーノーツ』を投稿したあとの、今後の更新スケジュールにつきましてご報告申し上げます。
■ 通常更新:1日2回(7:10 / 20:10)
■ そうした方が区切りのいい日は:1日3回(7:10 / 10:10 / 20:10)
さて、次回・第4話からはいよいよ、カルテット・マジコにとって初となる「宇宙への進出」が描かれます。
舞台は、果てしなく続く海と、巨大すぎる生命体がうごめく「海洋惑星アブズ」。
常識の通用しない異星の深淵で、彼女たちを待ち受ける「神々の水槽」の真実とは……!?
息を呑むスケールで展開される新たな大冒険にご期待ください。
引き続き、『カルテット・マジコ』をよろしくお願いいたします!
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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