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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire

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Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 02 05

「……我が『テラースクワッド『の最精鋭部隊『モブ・ディープ』よ。進捗はいかに!」

2人の男だけが共有するその緊張を、シャカゾンビの声は、真後ろから遠慮なくはたいた。

唐突な呼びかけは、この規格外の巨漢ふたりをたいそう焦らせたとみえ、彼らは、作業の手をぴたりと止めた。


ふたりは共に異形だが、ここで言う「異形」には「怖さ」という意味はない。

潮と汗にまみれた彼らの顔には、どこか間の抜けた雰囲気ばかりが詰まっている。

ひとりはオカピ、もうひとりはカバといった、動物の頭部がそのまま――人型というには粗大すぎるが、

直立2足歩行なことにはかわりない肉体に接合されていたのだ。


「ああ、どうも、ボス!」

間延びした挨拶ののち、獣人たちはゆっくりと後ろを振り返る。

その大軀は、地を揺らすような存在感を放ちながら、雇い主たるシャカゾンビと向き合った。


両人の身の丈は、いずれも優に250cmを超え、体重も500kgを下らないだろう、あるいは1tになるかもしれない。かたや骨の王、かたや筋骨の山――並び立てば、視覚的な支配力は後者の方に分があった。


彼らは、潮と汗にまみれた肉体労働にふさわしい、タンクトップにホッピングパンツという身なりをしている。

その露出の高い姿からは、ひび割れた皮膚やごわついた毛並みがむき出しになり、

それぞれの種族に特有の模様――オカピには部分的な縞模様、

カバには潤った皮膚の隆起――がはっきりと見て取れる。


「必要なコードはこんな感じで打ち終わってますです。大体!」

と、柔らかな口調で語りはじめたのは、オカピ頭の方の男だった。

名を、プロディジーという。


「さ、どぞどぞ!」

へつらった笑みを浮かべたカバのハヴォックは、シャカゾンビのことを、

ちょうど――交通誘導のようなうやうやしい腕振りと、慇懃さにあふれた背筋の角度で

コントロールパネルの前へといざなう。


促されるがまま、シャカゾンビは1歩前に出て、ディスプレイに冷たい視線を落とした。

すると次の瞬間、

「ひとつ質問があるのだが――」

彼の声は即座に鋭利な刃と化した。


「はい!」

「――まさかとは思うが、お前たちは、今このゴミをコードと呼んだのか?」

その言葉にあわせて、ガントレットに覆われた指先が液晶の薄膜をしたたかに突く。

画面がわずかにたわみ、かすかな静電気の音が部屋の空気に溶け入った。


「え~と、そうですが……」

ふたりは、言葉の真意を理解できず顔を見合わせる。


「……ここを見ろ! 早速シンタックスエラーが出ているではないか! 括弧を閉じ忘れ、セミコロンも抜けている!変数名も混乱しているし、メモリリークを引き起こしかねん無限ループだ!

マニュアルの第1ページすら読んでおらんのか、この脳無しども!」


「いや、ほら、そこはネットにあったコードでして! そのままコピペしたら動くかなぁ~?って!」

一瞬唖然としたプロディジーが、態度を一変させ、バナナほどの脳味噌で作り上げた

言い訳をいそいで口から出力する。


「コ・ピ・ペだとぉ!?」

シャカゾンビの怒号は、いよいよ部屋の金属壁を震わせはじめる。


「キサマが"賢く"手に入れてきたモノはな、Webページの動的要素アニメーションを動かすJavaScriptと、CSSのスニペットだ!

この高度な干渉システムに、ボタンを押したら背景色が変わるような無意味なスクリプトを仕込む気か!?まったく、どういう発想でやっとる!頭に牧草でも詰まっとるのかァッ!?」


「でも、マニュアルはちゃんと読んだんですよぉ、ちゃあんと!!ちょっとボスが……もうあんまり時間がないって連絡してくるもんだから急ぎの作業になっただけで……」


ハヴォックが、まるで何かから身を守るかのように肩をすくめて腕をひろげる。

その動作には、重厚な肉塊にそぐわぬ卑屈さと、主への弁明としての拙さがありありと滲んでいた。


「今回、吾輩は貴様らに、作業の過程で遭遇しうるあらゆる障害への対処法を記したマニュアルを与えたはずだ!

時間も十分に与えた!その時間をどう使ったか言ってみろ!どうせ酒を浴びて寝ておったんだろ!!?」


「……」


「吾輩の深遠な配慮は何ひとつ伝わらなかったようだな!

ほら、自分たちで見てみるがいいこのprint文!『プロディジーのランチメモ』だと?

本番コードに個人メモを残してどうする!」


「あっいや……!それっ、『デバッグ?』……とかなんとかいうやつ用で!消すの忘れただけなんですよ!」


画面を瞥見したプロディジーは、そこに映し出された己の成果を「過誤の塊」としてただしく認識し直すと、そのかんばせを一瞬、罪悪感で曇らせた。


しかし次の瞬間には、絞り出すような声でこう言い張った。

彼にとっていま1番の関心事は、「怒りの矛先を自分から逸らす」ということだった。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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