issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 05 15
一瞬だけモニターに視線を戻したアキノだったが、すぐに興味を失い、再びはちるの「神託」の解析に戻ろうとした。だが、その口から続いたのは、4人を再び凍りつかせる、新たな「預言」だった。
「……そうか、『アセンション』!その初期段階に、『ミニクランチ』が起こるって……。
時空のムダがすべて削ぎ落されて、それぞれの銀河が『アフィニティ銀河』と重なり合うのよ!
これがその兆候なのよね?たしか、天の川銀河はGN-z11銀河だったはず……」
その、あまりにスケールの大きな、そして破滅的な憶測に、
4人は悲鳴のような声を上げて同時に飛び上がった。
「「「「そんなわけない(です)(でしょ)(だろ)!!」」」」
「そ、そうです!この建物、古いですから!よくあることですよ!」
「ただのブレーカーだ、ブレーカー!」
おせちとアシュリーが必死に否定の言葉を叫ぶ。その背後で、
はちるは床に散らばるケーブルのジャングルへと、猫のように素早く潜り込んでいた。
そして、問題のモニターに繋がる電源プラグを、そっとコンセントに差し込み直す。
画面が、再び光を取り戻した。
「ほらな?ただの接触不良だよ!」
アシュリーが、救われたように叫ぶ。
度重なる奇妙な出来事と、けたたましい少女たちの声。その情報量の多さに、さすがのアキノも処理能力の限界を超えたようだった。彼女は、こめかみを指で押さえ、うんざりしたように手を振る。
「……もういいわ。今日は、なんだか疲れたから、あなたたち、もう帰って」
その言葉に、4人は一瞬たりとも躊躇しなかった。蜘蛛の子を散らすように、しかし最大限の敬意を払うかのような奇妙な足取りで、アキノの部屋を後にする。
パタン、とドアが閉まり、部屋には再び、20年来の沈黙が戻ってくる――はずだった。
ドアが閉まる寸前、その隙間から、白い手がにゅっと伸び、最後尾にいたはちるの腕を掴んだ。
「待って――」
ひやりとする指の感触に、4人全員が凍りつく。ドアが、再び、人が1人通れるかどうかの幅だけ、ゆっくりと開かれた。暗い部屋の奥から、アキノが、まるでホラー映画のワンシーンのように、
底知れぬ闇を帯びた片目だけを覗かせている。
瞳は、じっと4人を観察していた。
はちるの表情が、恐怖に極限までひきつった、その1点で完全に凍りついた。
*
緊張を破ったのは、ドアの隙間から、無言で差し出された4つの物体だった。
それは、4つの新しいアルミ帽子だった。先ほど被っていた、急ごしらえの歪なそれとは違う。
幾重にも折り重ねられ、頭の形にぴったりと合うように、完璧なシンメトリーで成形された、
芸術品のようなアルミ帽子。まるで、妄想と職人技の結晶だった。
「……予備よ。あなたたちが被っていたのは、あくまで緊急用。こっちが、対思考操作用の正式モデルだから。……あげるわ。大事に使って」
ドアの奥から、ささやくような声が聞こえる。
アシュリーは、差し出された“正式モデル”の1つを、まじまじと見つめた。その皺ひとつない見事な出来栄えに、彼女は無意識のうちに、こう感じていた。
(……なんだこのクオリティ?……こういうモンにも、職人技ってあるのかよ……)
やがて、4人がそれぞれ帽子を受け取ると、ドアは、今度こそ静かに、そして固く閉ざされた。
……そして20年来の沈黙がようやく取り戻される。
アキノは、1人、ガラクタの山の中心に立ち尽くしていた。
なりゆきだったとはいえ、この聖域に、自分以外の人間を入れた。
20年以上、決してありえなかったこと。部屋の空気には、まだ、あの騒がしい少女たちの匂いが、
微かに残っている気がした。
彼女は、はちるが神懸っていた床の1点を、そっと指でなぞる。
そして、自分でも気づかぬうちに、その血の気のない唇に、ほんのかすかな、
ささやかな笑みが浮かんでいたことに、アキノ自身は、まだ気づいていなかった。
「本当に不思議なこと。今日はなんだか、ゆっくり眠れそうね。久しぶりに――」
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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