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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#03 I I I I Dreamed A Dream

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issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 05 08

空縁州で最も高い超高層ビル「ジョルバスクル・タワー」の屋上。ヘリポートには、

カルテット・マジコが持ち込んだ高性能な観測機器が慌ただしく設置されていた。


彼女たちの頭上には、今日も、空を覆い続ける格子状の雲が、

不気味なほど正確な幾何学模様を描いている。


やがて、予報通りの時刻が訪れると、その雲はゆっくりと鉛色に染まり、

世界を蝕む毒の雨を降らせ始めた。


「……分析開始」


おせちの合図で、はちるが観測機器のコンソールを操作する。アームが伸び、飛来する雨粒を採取。即座に質量分析計がその組成を解析していく。


「……うん。各国のデータ通り。やっぱり未知の化合物。でも、組成は世界中どこも完全に一致してる。だから、この雨そのものを解析して、逆作用するカウンター薬を作ってみた。

理論上は、これで中和できるはずなんだけど……」


はちるが自信なさげに付け加えたその言葉を、アシュリーの怒鳴り声が遮った。


「理屈はもういいって!薬ができたんなら話は早いだろ!ケチケチ試してないで、

ありったけブチまけて、あの雲、全部まとめて消毒してやろう!」


「待って、アシュリー。まずは限定的な範囲で効果を試す」

おせちは冷静に制止すると、散布用の大型ドローンへ視線を移した。

「もし予期せぬ化学反応が起きたら、被害が拡大するだけだよ。……はちる、準備はいい?」


「いつでもいけるよ!散布パターン、デルタで開始!」


はちるの威勢のいい声と共に、大型ドローンが力強く浮上し、鉛色の雲の中へと突入していく。機体下部から、霧状の中和剤が噴射され、周囲の雨雲に吸収されていった。


散布された領域の雲が、ほんのわずかにその色を薄れさせる。


「……!少し、効果あるかも!」

さなが、希望の声を上げた、まさにその瞬間だった。


何の前触れもなく、凄まじい揺れが超高層ビルを襲った。足元が大きく波打ち、設置したばかりの観測機器がけたたましい音を立てて倒れる。立っていることすらままならない、


明らかに異常な震動。それは、プレートの歪みなどという生易しいものではなく、

まるで都市の土台そのものが、見えざる巨大な手に無理やり揺さぶられているかのようだった。


「なっ……地震!?」

「こんな揺れ方、ありえない!」


姉妹たちが体勢を立て直そうと叫ぶ中、制御を失ったドローンが火花を散らしながらヘリポートに墜落する……。


*


突発的な地震にカルテット・マジコが見舞われている、まさにその頃。


とある薄暗い部屋では、1人の少女がキーボードを熱に浮かされたように叩いていた。壁一面に貼られた雑多な新聞の切り抜きと、それらを結ぶ赤い糸。


複数のモニターが放つ青白い光だけが、彼女の恍惚とした横顔を妖しく照らし出している。

彼女こそが、ミス・パラレルワールドこと、カンノアキノ。あるオカルト系巨大掲示板に、

彼女は新たな「預言」を投下していた。


【件名:【速報】やはり来た。HAARP起動。】

【本文:全ての目覚めし民へ。これは天災ではない。人災だ。彼らの計画がついに最終フェーズに入った証拠。備えよ。】


エンターキーが叩かれると同時、スレッドには滝のような賞賛のレスポンスが流れ始める。


『ミスワさん、情報早い!』

『いつもありがとうございます!世界が救われる!』

『また予言が当たったのか……!この人、本物だよ!』


アキノは、その熱狂的な反応に満足げに頷くと、椅子の背に深くもたれかかり、恍惚と恐怖が入り混じった声で、うわごとのように呟いた。


「やっぱり……今回も、私の思っていたことが、正しかった……」


彼女がその掲示板で、預言者にも等しい絶対的な影響力を持つ重鎮ユーザーであることは、その狂信的な反応を見れば明らかだった。


そして、その歪んだ自己陶酔が現実によって裏付けられるまでに、多くの時間は必要なかった。


*


テレビの画面が、アメリカからの緊急中継映像に切り替わる。CNNやBBCといった国際ニュースのテロップが走り、映し出されたのは、ワシントンD.C.にあるアメリカ地質調査所(USGS)の会見場だった。


無数のフラッシュが焚かれる中、1人の白髪の地震学者が、こわばった表情でマイクの前に立った。


彼は震える手で手元の資料をめくり、自身の専門知識の全てを否定するかのような、

信じがたい分析結果を語り始めた。


「……本日未明に発生した、全球的な震動についてご報告します。結論から申し上げますと、今回の震動に、プレートテクトニクスに起因する、いわゆる『震源』は、我々の観測網では一切確認できませんでした」


会場が息を呑むのを感じながら、彼は一度言葉を切り、続ける。


「あるいは、震源が地表に存在しない、と言うべきかもしれません。……その代わり、我々が唯一、この異常な震動と同時刻に観測したのが……アラスカ州にあります、HAARP――高周波活性オーロラ調査プログラムの、原因不明の再稼働です」


彼は顔を上げ、無数のカメラのフラッシュを真正面から受け止めた。


「この再稼働が極めて高出力の電磁波を生成し、電離層に作用した結果、今回の広域震動――すなわち『人工地震』が引き起こされた……我々の現在の分析では、そう結論付けざるを得ません」


最後に、彼はほとんど絞り出すように、公式見解を付け加えた。


「……合衆国政府は、同盟国及び関係各所と連携し、この異常事態の全容解明に、現在、全力をあげております」


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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