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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#03 I I I I Dreamed A Dream

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issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 04 16

「なるほど"The Man Who Sold the World"(世界を売った男)ってことか?……案外、ボウイ気取りってのはどこにでもいるもんだな」


アシュリーは、苦笑と困惑が入り混じった表情で、そんな皮肉を落とした。


工場の片隅で、それまで続いていた低い駆動音が、カチリ、という硬質な音と共に静止した。

大きなシリンダーを掴むがまま、120度傾いていくロボットアームが、

小さなシリンダーに、粘性の高い、燐光を放つ液体を、1滴のこぼれもなく注ぎ終えたのだ。


創世の光――その禁断の模造品が、たった今、完成した。


その無機質な完成の音だけが別室に響く中、少女たちは言葉を失っていた。推測の果てにたどり着いた結論は、あまりに自己中心的で、想像を絶するものだったからだ。


勝利ではない。玉砕ですらない。今井が望んだ結末は、己を裏切った同胞も、

闘争より先に憐憫を示した人間も、その一切を巻き込んで、ただ盤上から消え去ること。

それは、究極の責任放棄であり、自身を特別な存在としてもてなすことを拒んだこの世界に対する最大限の罰だった。


*


戦争前の狂騒が支配するクマ村のはずれ。

深夜にもかかわらず煌々と照らされた製薬工場の裏手でさえ、夜明け前の冷気は肌を刺した。

シリンダーに禁断の光が封入されるのを見届けたカルテット・マジコは、

乗り込む車両の最終準備を進めていた。


その喧騒から少し離れ、さなは息を殺して森の闇を見つめていた。決戦を前にした張り詰めた雰囲気が、何か不吉なものの到来を告げているようで、胸がざわつく。


するとその静寂を破って、影が揺れた。音もなく、まるで闇そのものから滲み出るように、白い羽織をまとった小さな姿――オールラウンダーが姿を現す。


「お母さん!」


気付いたさなの声に、他の姉妹たちも次々と駆け寄る。監視塔のふもと、有刺鉄線のすぐ近くで4人は再会した。尊はひとりひとりの顔を順に見やり、その目元に刻まれた疲労と、

それを上回る覚悟の色を見て、安堵の息を深く吐いた。


「……無事で何よりじゃ。よう、ここまで持ちこたえたな」


「ママ!心配したんだからね!」


はちるが駆け寄り、その小さな身体に抱きつこうとするのを、尊は片手で優しく制した。


「そっちこそ、今までどこ行ってたんだよ!24時間営業のパチ屋でも見つけたのか?」


アシュリーがぶっきらぼうに言うと、尊は「ふん」と鼻を鳴らす。


「お前たちが表で奴らの注意を引きつけてくれている間に、わしはわしで、やるべきことをやっておったのじゃ。警察内部の協力者と連絡を取り、政府に圧力をかける。そして、ハヤカワ家の保護と、最大の切り札を確保するため、テラリアに飛んでおった。ヨルシカ女王との約束を取り付け、なんとか兵を中隊規模で借りてこられた」


尊が顎でしゃくった背後の森で、スラッグライダー様式の無骨な装甲をまとったテラリア兵たちが、ひっそりと姿をうかがわせる。その光景に、おせちは母の深謀遠慮を悟り、1歩前に出た。


「母さん、状況を整理させて。私たちが掴んだ情報と、そこから立てた作戦を伝える」


おせちの真剣な眼差しに、尊は静かに頷く。


「今井の目的は、人類との戦争に勝利することじゃない。この騒ぎに乗じてただ1人、神変山のゲートからクマの姿に戻って逃亡すること。私たちはそう結論づけた。彼にとって、自分を認めなかったこの世界も、信じてついてきた同胞さえも、もうどうでもいい。今となっては、すべてを捨てて、責任から逃れることだけが目的なんだ」


「……ほう」


尊が納得したのを見て、おせちは続けた。


「だから、作戦は二手に分ける。私たちは直接ゲートに行く。でも正直な話、もう潜ったあとの可能性の方が高いから、母さんたちには人数を活かした山狩りをお願いするよ。すべてのクマを虱潰しに調べて、今井を見つけ出す」


「ゲートはお前たちに任せる。わしらは森を狩る……わかった」


尊が即座に役割を受け入れたのを確認し、おせちは懐から、蠱惑的な光を放つ液体が封入されたアンプルを取り出した。


「そして、母さんにはこれを。今井を見つけたら、これを打ち込んで」


尊は、差し出されたそれを受け取り、指でその頭と尻をつまむがまま、訝しげに照明塔の光にかざした。


「これはなんじゃ?」

「『創世の光』の模造品。ゴリラ化の血清だよ。エイペックス・レジェンドと交渉して、作らせた」

「交渉とな……?」


尊の目に、驚きと、そして娘たちが自分の知らない場所でどれほどの危険を冒してきたのかを察した、複雑な色が浮かぶ。おせちは、その視線から逃れるように、少しだけ目を伏せた。


「今は事情を説明してる暇はないんだ。終わったら全部話すから。……これは、母さんが使って」


それは、親子の会話ではなかった。戦場で交わされる、絶対的な信頼に基づいた、兵士同士のやり取り。尊は、アンプルを固く握りしめると、娘の覚悟をすべて受け入れるように、首を縦に振った。


「……わかった。抜かるでないぞ」


「母さんも」


短い言葉を交わし、彼女たちは背を向けた。カルテット・マジコは決戦の地・ゲートへ。オールラウンダーとテラリア兵は、森の闇が広がる狩場へ。


夜明にけは、まだすこしだけ遠い。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

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