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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#03 I I I I Dreamed A Dream

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issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 04 12

軍による鋼鉄の包囲網が完成し、北海道がまさに一触即発の火薬庫と化す中、カルテット・マジコと熊沢の一派は、息を潜めて反撃の機会を窺っていた。彼らの最優先事項は、全ての元凶である今井の確保。しかし、その所在は、クマ村からいちど姿を消したという情報があったきり、

誰の探知網をもってしても、ようとして知れなかった。


「今井のヤツ、どこに消えたんだよ……。言ってたか?あいつ、ショトメで。『登別の温泉行ってくる』って」


殺風景な部屋の隅で、アシュリーが苛立ちを隠さずに吐き捨てる。最前線の監視を続けていたさなも、不安げに首を振った。


「……すれ違いになっちゃったのが惜しいね」


はちるの言葉に、おせちの脳裏に最悪の可能性がよぎる。今井は、この北海道の「クマ村」さえも、自らの本拠地ではなく、ただの捨て駒、あるいは壮大な陽動として利用しているのではないか。


「はやく今井を見つけないと、どんな些細なきっかけで開戦になるか……!」

おせちは指を鳴らし、唸るように言った。焦りが、その理知的な横顔に影を落とす。


その焦りが、アシュリーの喋りを加速させた。

「そこがマジで心配なんだよな。こっちの力がまだ全然戻ってない。そろそろハデに空でも飛んで見せないと、軍の連中にシーズンパス課金し忘れたのがバレる」


「クマさんの姿でいた時間が、長すぎたのかな……。なんだか、力が身体に馴染んでないみたい……」

窓の外、軍のサーチライトが神経質に夜空を裂くのを、さなはぼんやり見つめながら、

心細げに呟いた。


その言葉に、はちるは自分の、すっかり人間らしくなった手を見つめ、力なく頷く。

「……何か……考えないと」


まさにその時だった。熊沢の支援者グループとして、ネット上で共に情報戦を続けていたメンバーのひとりが、血相を変えて駆け込んできた。


「皆さん、こちらに来てください!妙なメッセージが……!」


見せられた暗号化端末の画面。あらゆる追跡を振り切って、その言葉は届いていた。発信源は不明。ただそこには、有無を言わせぬ強い意志と共に、たった1行のシステムメッセージだけが記されていた。


『[通信要求] // SENDER: [ENCRYPTED] // TARGET: QUARTET MAGICO // BODY: 対話セッションの確立を要求。』


今井の不可解な失踪と、謎の第三者からの接触。ふたつの事象が、まるでひとつの意志に導かれるかのように同時に発生したことに、おせちは運命の作為を感じずにはいられなかった。彼女は、ごくりと息を呑み、ディスプレイに表示されたその短い1文を、鋭い目つきで睨みつけた。


*


……水深8,000m。

太陽光も生命の温もりも一切届かぬ、絶対的な暗黒と圧力が支配する深海の底。そこに、人類の叡智と悪意が結実した唯一無二の超人用刑務所――《STYX/スティクス》が存在する。都市のごときその構造体は、海溝の岩盤に身を這わせる怪獣の骸のように、ただ沈黙していた。


その最深部。幾重にも重ねられた隔壁と、致死性のトラップが迷路のように張り巡らされた特別監房。

部屋には、生命維持装置のかすかな駆動音と、壁面を流れる冷却パイプの低いうなりが、絶え間なく響く。青白い非常灯が、室内中央の直方体のガラス水槽を、不吉なほど冷たく照らし出していた。


不気味な緑色の培養液に満たされた、そのガラス水槽。中に鎮座しているのは、銀色に輝く巨大な頭部――往時には、26世紀の科学と傲慢を凝縮した“超越者”であった存在だ。いまや、その肉体は戦いによって失われ、残されたのは異形の頭部だけ。それがただ静かに、闇の底で眠っている。


生命維持装置から絶え間なく送り込まれる微細な気泡が、液体を揺らし、壊れかけたクロームの輪郭を歪ませる。装甲には無数の亀裂が走り、砕けた顔の半分からは、神経線維めいた光ファイバーの束が――死んだクラゲの触手さながら、虚しく漂っている。


首の断面には、思考を監視するデータケーブルや、栄養を強制的に送り込む供給ライン、その意識を深海の孤独に縛り付ける制御プローブが、寄生植物の根のように無遠慮に突き刺さっていた。すべてが彼の尊厳を奪い、生体部品として「保管」するためのものだった。


だが、その骸のような頭部において、唯一変わらぬものが在る。


残された片方の、紅蓮色の光学センサー。


その赤い光は、深海の闇よりもなお冷たく、怒りと知性のきらめきを宿して、ゆっくりと明滅する。敗北と屈辱を刻み込まれたその瞳は、この監獄のすべてを、そして己の無力な姿さえも、冷徹に見据え続けていた。


その日――その赤い光がふと律動を変えた。かすかな金属音。緑色の培養液が、見えない力でわずかに波立つ。頭部に接続されたデータケーブルの表面を、青白いパルスが奔る。


エイペックス・レジェンド――パイプコック・ジャクソン。サイボーグ化された彼の肉体は、その大半を失ってもなお、26世紀最先端の「装置」だった。


意思の力は、電子のざわめきに変換され物質世界に感応し、刑務所の厳重なファイアウォールを分子レベルで分解、数1000kmの海底ケーブルを光速で駆け抜け、地上のネットワークという“海”へと、その意識を到達させる。


標的はすでに決まっている。この原始的な星で、

ただ1度、自らの計画を頓挫させたイレギュラー――あの、忌まわしき 少女たち。



高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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