表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#03 I I I I Dreamed A Dream

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

215/295

issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 04 07

画面の向こう側。自宅のソファでその動画を見ていた1人の男が、訝しげに眉をひそめる。

「……本当に、クマの社会がゴリラに乗っ取られたのか?なんだよそれ……」


そしてその疑念の波は、人間社会だけにとどまらなかった。

とある都市のアパート。そこで同じ映像を見ていたクマ人間の1頭が、ふと顔を上げ、

隣の仲間に問いかける。


「今井さんの支配が、不幸……?一体、何を言っているんだ、あいつらは……」


そんな感想とは裏腹に、動画は、彼らの胸の奥に、これまで感じたことのない小さな波紋を広げていく。


――正直なところ、カルテット・マジコのこの訴えは、事実をありのままに映したものではなかった。

それは、純粋な真実の響きを持ちながらも、極めて戦略的に構築された虚構の城だった。


実際には、今井の支配を積極的に肯定するクマ人間は決して少なくない。つい先月まで――つまり、カルテット・マジコと事を構えるまで、今井という男は疑いようもなく「勝ち馬」だったのだから。


しかし、状況は変わりつつある。そして、影響力のある者から繰り返し語られる「真実」は、時に本物の真実よりも深く、人々の心に根を張る。おせちの狙いはそこにあった。

一見、純粋なホモ・サピエンスに訴えかけるための言葉は、その一方で、

クマ人間たち自身の心に、鈍く、そして繰り返し突き刺さる刃でもあったのだ。


「あなたは騙されているのではないか?」「その忠誠は、本当にあなた自身の意志なのか?」「今の暮らしは、本当に

幸福なのか?」


意図的に加工された情報を“真実”として提示し、大衆の認識を己の望む方向へ塗り替えていく。


おせちの訴えは、それ自体がまた、今井の一派とは別の角度から行われる――そして遅効性の洗脳であり、クマ人間の社会に対し包括的に仕掛けられる心理戦に他ならない。


目的のためには、時に悪魔の囁きすら美しい衣で包んでみせる。それこそが、「善意のマキャベリスト」たる吉濱おせちという少女の本質だった。


カルテット・マジコのメディア工作に触れるうち、とある、反今井的なクマ人間はこういう気付きを得る。

「……こいつら、今井の支持派が本当は多いって知った上で俺たちを助けようとしてるんだ……全ての責任をゴリラに押し付けることで……」


明らかに、おせちはクマ社会の破壊を志向し、そのさらに先――彼らが人間社会にそつなく受け入れられる未来を、冷静かつ周到に計算していた。

分断によって今井の力を削り、なおかつ、「クマ人間」という存在が人類全体から無差別な拒絶や報復を受けぬよう、世論という見えざる防波堤を――ほんの少しずつ築くこと。

それが、今回のビデオレターに込められた「善意のマキャベリズム」の全貌である。


やがて、彼女の蒔いた種は、暗々裏に、しかし着実に芽吹き始める。

人間社会のSNSでは、


「#クマにも色々いる」


というハッシュタグが、共感と議論の輪を広げながら、

ゆっくりと拡散されていった。それは、世界が新たな現実を受け入れるための、

最初の小さな産声のようでもあった。


*


間もなく、神変山を巡る混乱は、誰の手にも負えぬ事態へと発展した。

政府の封鎖と厳罰化にもかかわらず、「#神変山チャレンジ」と銘打った配信企画や好奇心に駆られた若者たちは、ドローンやアクションカメラを手に山へと潜り込み、その映像を次々とネットへ投じていく。

現地の空気は、すでに一種のカルト的熱狂すら帯びていた。


そしてついに、決定的な出来事が起きる。

ある若い配信者が石門の間近にまで接近し、意図せず“ゲート”の周囲に潜む警備役のクマ人間たちと遭遇する。


緊迫のなか、警備側は、これ以上の秘密漏洩を恐れるあまり――そして募る日々のストレスから、

ついに人知を超えた変身の力を、現実のものとして解き放ってしまった。


その一部始終が、偶然にも配信者のカメラと、飛ばされていた複数のドローンに鮮明に記録されていた。

ライブ映像として世界中に公開されてしまった「人間がゲートを潜って巨大な熊へと変身する瞬間」――

そしてそれが「執拗に侵入者を追いかける場面」は、もはや噂やミーム、

都市伝説の域を遥かに超えた、決定的な証拠映像となって世界中を駆け巡る。


かつては“面白半分のネタ”として消費されてきた神変山の一連の現象は、

この瞬間から一転して、「未知の知的生命体による国土の占拠」という、

国家と社会の根幹を揺るがす脅威へと姿を変えた。

政府は情報統制に躍起となるが、拡散の速度はそれをはるかに凌駕していた。


こうして、現実とミーム、陰謀論と真実が溶け合う“臨界点”を越え、

日本社会、いや世界は、誰も予想し得なかった“新しい現実”に直面することとなる――。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ