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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#03 I I I I Dreamed A Dream

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issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 04 05

「これは合成じゃない」「ガチで門がある」「ついに本物を捉えた!」


複数の動画や写真が、検証アカウントやオカルト系ニュースサイトにまとめられ、 1夜にして「神変山の石門」は、都市伝説から「実在する未確認構造物」へと格上げされる。


ついには、空撮ドローンによる「真上からの門」「警備員らしき人物が門の付近から立ち去るシーン」など、より鮮明な証拠が次々アップされた。


当然ながら、人々ははじめそれを疑った。AIによる映像生成力が極限まで向上し、それに反比例して映像の証拠能力がどこまでも低下したのが、この2040年代という時代だったからだ。


しかし、大衆の潜在的な熱は実は相当なものであり、

ある専門家が「このデータはブロックチェーン上の本物」とコメントすると、一気に状況は一変する。


そのフレーズさえもがレス画像として――ブロックチェーンの部分だけを改変されながら――二次的にミーム化するほどの事態になったのだ。


「すべてがフェイク映像とは説明できない」とする別の専門家のコメントも同様に拡散され、あとは時流に押し流されるがまま、神変山一帯は未曾有の“ネット聖地”と化していった。


1週間も経てば、現地には三脚を抱えた動画配信者の列、派手なコスプレ姿の大学生、そして地方テレビ局の中継車までが集う。

何もない山中に、仮設の屋台が出現し、即席のキャンプ村までできあがる。


「神変山フェス」の誕生である。


現地に押し寄せたViewTuber同士の小競り合い、その様子を煽るように撮影する別の配信者、

「警備員とにらみ合うクマ着ぐるみ」――。


本来、告発の核心であったはずの“クマ人間の真実”は、いつしかネット的なお祭り騒ぎと化し、

笑いと驚きと、止まらぬ拡散の波の中で、現実と虚構の境界さえ、ゆるやかに溶かしていった。


*


道内某所、カムイ・ディベロップメントの役員室。その1室は、巨大なモニターに映し出される神変山の狂乱を、冷たく見下ろす司令室と化していた。

社長である今井は、肘掛けに深く身を沈め、指先でグラスを神経質に撫でながら、

画面に映る無秩序な光景を、温度のない瞳で見つめている。


「……どういうことだ、どうして熊沢が生きている?……そうか、あのガキどもを匿ったのがヤツだったのか」

発端となった動画を念入りに見回す今井の指が止まる。スマホの液晶に、ピシリ、と微かな亀裂が走った。


地を這うような低い声が、不祥な静寂を破って側近の1人に向けられる。


「おい、連中の居所をさっさと突き止めろ。どんな手段を使ってもだ」


……だが、その追跡は遅々として進まなかった。チームの機械担当、はちるによる特定対策は徹底していたのだ。現金のみでの生活、監視カメラ網を避けるための熊沢の古い杣道を使った移動――


続く動画もそのすべてが国外経由の匿名サーバからアップロードされ、

背景にも、地方を特定しうる動植物や地形、瞳への何かの映り込みなどが一切起こらないように心がけられ、アクセスごとに使い捨てSIMやダミー回線が組み込まれている。

通信ログも、数分ごとにVPNを切り替え、複数の言語圏からの偽装リクエストで痕跡を上書きしていく。


加えて、熊沢とその同士といった関係者への連絡はすべて暗号化されたチャットアプリに限られ、リアルタイムでの“音声変換”や“位置情報の虚偽送信”まで駆使されていた。


そして何より、SNS上に撒かれた「関東での目撃情報」といった偽の痕跡。今井の張り巡らせた広大な情報網は、存在しない幻影を追って空転し、カルテテット・マジコの正確な位置を、誰ひとりとして掴めずにいた。


……ただ、神変山の「祭り」は長く続かなかった。

事態を最も重く見たのは、表の社会を動かす権力者――総務大臣・篠熊、警察庁長官・蜂須賀だった。

彼らはカムイ・ディベロップメント社長・今井の手先としても、国家運営の実務家としても動かざるを得ない立場にある。


事態の沈静化を図るべく、政府は神変山一帯を「特定生物生息地保護地区」に緊急指定した。

「危険な野生ヒグマの密集地であり、人命保護のため」――その建前で、

軍・警察の特殊部隊が現地に集結し、強固な封鎖線が築かれていく。

立ち入り禁止区域は法律で明確にされ、違反者への罰則も、かつてないほど重いものとなった。


その裏側で――。


今井は、内部に広がる動揺への対策に、徹底した“引き締め”を指示していた。

「熊沢の告発動画は、明らかなプロパガンダだ」と幹部を集めたホログラム会議で断じ、

「人間側、あるいはカルテット・マジコに唆された裏切り者どもの戯言」と、熊沢を公然と糾弾する。


会議の壇上から次々と表明された、

「これは組織の団結を乱す愚劣な工作である。惑わされるな!」

「老いぼれの戯れ言に耳を貸す者は、明日からは我々の敵だ」

こういった意見が証明するように、その日から、粛清による強力な自己検閲の体制が組織全体に広がっていった。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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