issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 04 04
この動画が都市伝説系フォーラムやまとめサイトでじわじわと話題を呼び始めたちょうどその頃――
まるでタイミングを計ったかのように、カルテット・マジコの公式SNSアカウント(Xitter)が更新された。
かねてより全地球的な騒動の渦中にあり続け、すでにフォロワーランキングも世界1を記録するグループの投稿欄に、今度は「人語を操る、色とりどりの毛並みを持つ4頭のクマたち」が現れたのだ。
彼女たちは映像のなかで、堂々と「カルテット・マジコ」を名乗り、世間を再び大きく揺るがせることになる。
「――ご覧いただきありがとうございます。ご無沙汰していました。
カルテット・マジコ、本物です。イムノです」
「ハーイ、ホットショットです。こんな姿だけど、中身はちゃんと本人!」
「ミーティスです。突然“クマ”になっちゃって……戸惑ってます。
はちみつクッキーが最近おいしいです」
「えーっと、新入りの……スヌープパンダ!――じゃなくて、スヌープキャットです!」
「ふざけちゃダメ、真面目にやるんだよ!」
(おせちが声を出し、カメラの前でクマ同士、もぞもぞと小競り合い)
「……すみません、混乱させてしまって。本物の“カルテット・マジコ”です。
どうか、これだけは信じてください」
「私たちはここ最近、北海道・神変山の“石門”――通称“スピリットゲート”を調査するため、現地に潜入していました。その過程で、熊沢さんの証言に一致する現場を、私たち自身の目で、はっきりと確認しました」
「その門をくぐったことで、私たちは人間の姿とスーパーパワーを一時的に失い、
現在もこのまま――“クマ”の姿で逃亡生活を続けています」
「熊沢氏の告発は、すべて事実です。私たちが見たこと、体験したこと、
そして“クマ社会”の現状――全てが、彼の言葉と完全に合致していました」
「カムイ・ディベロップメント社の今井二十人社長、現職総務大臣の篠熊宗次郎、警察庁長官の蜂須賀蜜助両氏――彼らの会議は、まさにこの地で秘密裏に行われていました」
「私たちの指名手配、それらもすべて彼らの仕組んだことです。私たちは無実です。
もうこれ以上、誰もが陰謀に踊らされる世の中を続けたくありません。
わたしたちは、断固とした決意ですべての真実を白日の下に晒します――たとえ、この姿のままでも!」
「熊沢さんを信じてください。そして、“クマ社会”の同胞にもお願いします。
どうか、今井たちの陰謀に利用されないでください」
「以上、クマになってもヒーローをやめられない、カルテット・マジコでした!」
(最後は4頭で一列に並び、クマらしくお辞儀)
……熊沢による告発動画は、わずか数時間で都市伝説サイトや陰謀論フォーラムのトップページを席巻した。
「これは本物の内部告発だ」「魔法の石門の存在」――熱狂と懐疑、喝采と罵倒が、渦を巻くようにコメント欄を埋め尽くす。そして、その熱狂に追い打ちをかけたのが、
カルテット・マジコの公式SNSにアップロードされた“しゃべるクマたち”の動画だった。
「#クマテット・マジコ」
「#しゃべる熊」
「#神変山ゲート」。
現実離れしたはずの出来事が、あっという間にインターネット・ミームとして拡散されていく。
「――ヒーローチームの正体がクマ!?」
「逆でしょ!」
「……クマの指導者がゴリラ!?」
「もう何が何だかわからない」
SNSは、一夜にして混沌の様相を呈した。
重苦しい陰謀論は、「ヒーローがクマに!?」という衝撃の“面白さ”に上書きされ、深刻な社会問題は、
たちまちネットユーザーたちの「ネタ」として消費されていく。
「熊沢さんの勇気に拍手!」「神変山、行ったことある」――無数の書き込みと共に、ミームを用いた大喜利が早速始められ、GIFアニメ、コラージュ画像が次々と生み出される。
「しゃべるクマと踊ってみた」の珍妙なAI合成動画がタイムラインを席巻し、
「”公式”クマ着ぐるみ」が、カルテット・マジコとは縁もゆかりもないメーカーから即座に生産されるほどの事態となった。
言うまでもなくこの現象は、売名と再生数を狙う無数のインフルエンサーやViewTuberたちに、絶好の餌を投げ与えることとなる。
「話題の神変山で石門を探してみた」「クマ人間に遭遇できるのか?」――。
誰よりも早くバズワードに乗ろうと、若者たちは競うように北海道の神変山を目指した。
だが、そこには当然ながら、聖域を守るクマ社会の“警備員”たちが目を光らせていた。
ただし、レンジャー服にライフルで武装した彼らは、自分たちの正体を明かすことも、過激な排除行為に出ることもできない。
不審な来訪者を睨みつけ、追い返そうとするものの、「地元警備員(?)に怒られた!」と逆に動画映えし、「何かが隠されている」という疑念を深める火種になるばかりだった。
そのうち、警備の網をかいくぐって石門の遠景での撮影に成功する者が現れはじめ、世論の熱は一気に頂点へと向かっていった。
ピンボケの映像越しに、森の奥深く不自然な石造りの構造物が「たしかに存在する」と証明された瞬間、インターネットは騒然となったのだ。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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