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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#03 I I I I Dreamed A Dream

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issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 03 11

と――


ふいに、路地の入り口に見覚えのある作業着姿の男が現れた。


先日、あの『穴もたず』で恍惚の表情を浮かべていた常連客の男だ。

男は、もぬけの殻となった店舗を残念そうに一瞥すると、ため息をつき、

観念したような足取りで、ハヤカワの店の暖簾をくぐっていった。


あわててLEDのスタンド看板に身をひっこめたアシュリーとおせちは、上下に顔を並べて、

気配を消しながら店内の様子をじっと窺う。長いようで、短い30分弱。


やがて、あの男は再び姿を現した。だが、その表情に、以前見せていた満足の影はみじんもない。むしろ、眉間に皺を寄せ、何か腑に落ちないものを噛みしめるように、どこか苛立ちを滲ませながら店を振り返っていた。名残惜しげに『穴もたず』の跡地へと視線を送り、それでも未練がましく肩をすぼめて夜の繁華街から遠ざかっていく。


その背中を見送ると、アシュリーは唇の端に皮肉な笑みを浮かべる。

「……決まり、だな。北海道に行く前に、まず地元の”コイツら”シメとくぞ」


おせちは、静かに首肯した。

男が求めていたのは、人間社会の“美味”ではない。あれは「クマ人間」の本能にだけ響く、

特別な餌だった。――それは、論理的に導き出せる唯一の結論だった。


ふたりはすぐに動き出す。

カルテット・マジコの面々が影のように集合し、獲物の背を追い、都市の雑踏へと紛れ込む。

屋上から屋上へと音もなく飛び渡るイムノとホットショット。


地上では、群衆に紛れて気配を断つミーティス、闇にその身を溶かすスヌープキャット。

4人の動きは、まさに緻密な“狩り”の連携そのものだった。


やがて、男は月極駐車場の古びた軽トラックに歩み寄る。しかし、その行く手を、1台の大型バイクが堂々と塞いでいた。


「チッ、邪魔くせえな」

男は不機嫌に呟き、次の瞬間、信じ難いことをやってのける。成人男性でも苦戦するはずの鉄の塊――300kgはあろうバイクを、腰の力だけで軽々と持ち上げ、脇へと放り出してしまったのだ。額に浮かぶ汗、盛り上がる前腕の筋――それはまさしく“獣の力”の発露だった。


「……間違いない」

屋上から見下ろすおせちの声が、思わず低く、緊張を孕んで漏れる。


さらに、男がトラックに乗り込む刹那――

車内にずらりと並ぶ木彫りの熊や、「熊出没注意」の黄色いステッカーが、ホットショットの鷹の目が捉える。


「ホントかよ……自分の種族、隠す気ゼロだな」

その呆れとも苦笑ともつかぬ一言が、チーム全体の確信に変わる。


軽トラックがエンジン音を響かせて夜の街を離れると、4人も無音の連携でその後を追った。


数10分後――男は古びたマンションの前で車を停め、念入りに周囲を確認すると、人通りの絶えた裏路地へと身を隠す。


物陰からそっと様子を窺う4人が見たのは、


「――!!」


衝撃的な光景だった。

男はコンビニの袋から北海道名物「鮭とば」を取り出し、包装ごと歯で引き裂くと、まるで飢えた獣のように、その硬い干物を夢中で貪り始めたのだ。歯を食いしばり、魚肉を噛み砕き、咽喉を鳴らして呑み込む。その姿は、もはや人間のそれではなかった。


「……決まり、だな」

ホットショットが短く吐き捨て、


「本当にシャケ食べるんだ、クマって……」

ミーティスが、どこか素直な感心を混じえた声で呟いた。


――これで、最後の疑念も消えた。

イムノが無言で頷き、全員に視線で合図を送る。


――満場一致。

ターゲット、確定。


*


男の住む古びたマンション、その薄暗い廊下を、4つの影が無言のまま進む。

まるで特殊部隊の一斉急襲――扉の前で合図もなく隊列が整うと、さなが鍵穴に指を触れた。ごくわずかな霊力の震えが、複雑なシリンダー錠を“内側から”解錠する。

次の瞬間、溜め込んだ怒りを爆発させるアシュリーの蹴りが、ドアを跳ね飛ばした。


「……動くな!カルテット・マジコだ!」


轟音が響き、4人は電光石火でなだれ込む。イムノはソファ背後へ滑り込み、スヌープキャットは卓上にしなやかに跳躍、四肢で机を制圧し男を威圧。

ミーティスとホットショットは入り口と窓際を押さえ、退路を封じる――

戦場仕込みの機動力が、この小さな部屋で完璧な布陣を組んだ。


だが、目の前にいた「クマ人間」とやらは――

ヨレたパジャマに酒臭い息、テレビのバラエティ番組に呆ける、どこにでもいる壮年の男でしかない。

突然の奇襲に目を剥き、ビールを吹き出しながらソファから転げ落ち、リモコンを床にぶつけた。


「な、なんだお前ら!?強盗か!?」


「問答無用!君の悪巧みも、ここまでだからね!」

ガンブレードを突きつけて、イムノが鋭く叫ぶ。


「吐けよ、クマ野郎!なんでシノのじいさんの店に嫌がらせしたんだ!」

燃え盛るホットショットはホットショットが拳を鳴らし、威圧の1歩を踏み出す。


「クマ!?嫌がらせ!?何の話だ!?やめてくれ、金ならやる!だから命だけは!」

男は完全にパニックに陥り、震える手で机の財布をまさぐり出した。だが、そのあまりの慌てぶりに、財布は手から滑り落ち、中身は無残にも床にぶちまけられた。


転がる小銭、それに遅れて1枚の写真がひらりと舞い落ちる。

ミーティスが、それを素早く拾い上げてみせた。


「……これって」


雪山を背に、ライフルを担いで誇らしげな笑みを浮かべる2人の猟師の姿。

1人は今、まさに彼女たちの目の前で命乞いをしているこの男。そして、もう1人――


「……シノちゃの、おじいちゃん?」


その呟きに、場の空気が凍りつく。

少女たちの脳裏で、今まで積み上げてきた「証拠」のピースが、音を立てて崩れていく。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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