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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#03 I I I I Dreamed A Dream

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issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 03 03

「……肌が硬くて予防接種の注射器が刺さらなんだことがあったじゃろ?あれもお前たちにとってはうやむやのうちに終わった話じゃが、その後きちんととわしは、お前たちは病気にならんし薬も毒も効かんと学校に説明した。外から入ってくる化学物質はお前たちの体に影響を及ぼせんのじゃ。この世におる内から半分以上は霊じゃからの。わかるか?」


「ってことは……」

おせちが息を呑む。その瞳にあった母への信頼が、音もなく砕け散る。

「さいしょから私たちのこと、悪の組織の改造人間みたいに……超人にする気マンマンだったんだ!」

さなが、裏切られた子供の悲痛な声で叫んだ。


「ふざけるな!何が“自由意志でこの道を選ばせただ”よ!」

ついにアシュリーが、抑えていた怒りを爆発させた。

「人でなしー!」

「うそつき!鬼ー!」

「誘拐犯ーッ!」


滾っていた場の怒りが、一気に決壊した。

手近なクッション、雑誌、ぬいぐるみ――目に入ったものすべてが、感情の濁流となって尊めがけて投げつけられる。


「ぐっ!何をする…‥」

思わず頭を腕でかばいながら、尊は小動物のように身をすくめる。

非難の嵐が、次々と柔らかな衝撃となって全身に降り注ぐ。

どんな理屈も、いまは一切通じない。4人の娘たちは、まるで幼い頃の駄々っ子のように、溢れる思いのすべてをぶつけてくる。


「ゴミー!」

「バカ!」


容赦ない罵倒と、柔らかい物体の投擲が止まらない。

そのさなか、分厚い漫画雑誌が耳元をかすめた瞬間、尊は片目を見開き、

なぜか的外れな怒鳴り返しを放つ。


「なんじゃと、誰が勇次郎の背中じゃ!」


「それは言ってないって!」

おせちが、涙にぬれる毅然とした声で叫び返す。


「わかった、わかったから!まあまあ!でも、結果として損は何もなかったじゃろ!ただ、わしは、お前たちの体から“いらん物質性”をできるかぎり取り除いてやろうと思ったのじゃ!

その親心……どうかわかってくれぬか?」


尊は、両手を大きく広げて、四方八方に訴えるように必死で弁明する。

だがその姿は、どこか開き直った図太ささえ漂わせ、嵐の渦中にいるとは思えない余裕すら見え隠れするのだった。


「それは、そうかもだけど……」

そしておせちが、不承不承ながらも理屈の上では納得し、かろうじて呟や。


「……ならよしじゃ!」

尊は、待ってましたとばかりに片目をつぶり、ふてぶてしいウィンクとサムズアップを高々と掲げて見せた。まるで一連の騒動を、最高の形で締めくくったと言わんばかりの得意げな態度だった。


その、あまりにも空気を読まない振る舞いに、ふたたび全員の逆鱗が撫で上げられた。

呆れと、1周回って吹き出すような怒りが入り混じり、ちゃぶ台の周囲では、クッションや雑誌が乱舞し始める――物投げの嵐が、またもや盛大に吹き荒れるのだった。


唯一、この混乱の中で態度を決めかねていたのが、はちるだった。

裏切られた悲しみと、それでも、捨てきれない母への情。そのはざまで、彼女の心は、姉妹たちの輪からほんの少し切り離された場所で激しく揺れ続けていた。


だが、飛び交うクッションの向こうで、縮こまる母の姿がふと目に入った瞬間、彼女の体は意思よりも先に動いていた。結局、「ママっ子どうぶつ」のはちるは、母をかばうようにしてその前へ立ちはだかったのだ。


尊は、唯一の味方となった娘を、さりげなく、しかし故意犯めいて盾にしながら抱き寄せる。

はちるは尊の腕の中から、不安げに姉妹たちの顔を見回し、まだ涙に濡れた声で、懸命に仲裁の言葉を紡ぐ。


「きっと、ママも良かれと思ってやってくれた……ことだと思うだよ!ね?だから……だから、もう許してあげようよ!」


その一言に、尊は待ってましたとばかり大げさにうなずく。

「そうじゃ!そうじゃ、はちるの言う通り……!」

と、思わず声を張り上げるが、3人の冷ややかな視線に気づき、慌てて口を手で覆い声を潜める。

「……そうじゃろ?」


アシュリーは舌打ちを返し、おせちは深いため息とともに天を仰ぐ。

ここで争いを続けても意味はないだろう。


「とにかくお前たち、そしてはちる!こと体力に優れたお前の場合、肉体の模様なんぞ気の持ちようじゃぁ!そのうちなんとかなるっ!」

尊は半ば強引に話題を締めくくり、場の空気を変えようとする。


そのとき――盾にされたことにはついぞ気づかないまま――はちるは3人の方へと振り向いた。

涙の力でひときわ情感を増したその瞳が、まっすぐに3人を見つめる。


その瞬間、3人の怒りは、急速に形を失っていった。このままでは、自分たちの矛先が、

今まさに最も傷ついているはちる自身に向かってしまう――その事実に気づいたとき、

投げかけるべきものはもう何もなくなっていた。


やがて、静けさを取り戻したおせちが、凛とした声で宣言する。

その瞳には、怒りではなく、新たな決意が宿っていた。


「……そうだね。今は、はちるが元に戻る手がかりを探さなきゃね」


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

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