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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#03 I I I I Dreamed A Dream

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issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 02 07

(……埒が明かん!この獣人の体力と戦闘継続能力は、私の計算をはるかに上回る)


思考を切り替えたエイペックスの攻撃が、束の間、その苛烈さを増した。体を大きく開いて放つ決死のアッパーカットがスヌープキャットの腹を完璧に捉え、


「ゔぷっ゛……!」


その小さな体を宙に打ち上げる。

間髪入れず、無防備な彼女の体をビルの壁面まで一直線に吹き飛ばす、追撃のソバットが放たれた。


お手玉のように獣人の少女を打ち据えた機械のゴリラは、何事もなかったかのよう軽やかに着地すると、その意識を街の広域へと拡散させる。彼のサイコキネシスに応じ、ビルや放置車両から無数の機械部品や鉄骨が、金属の悲鳴を上げて引き剥がされた。


それらは宙に集い、26世紀最大の知性が脳裏に描く設計図にしたがって、即興の拘束具へと組み上げられていく。


「しかし本当にそうか……?この女には、我が『創生の光』への無限の耐性があると?……なるほど、状況を鑑みても一考に値する仮説ではある――」


「だがこうも言うぞ―― "Sola dosis facit venenum."――あらゆる物質は、その量によって毒にも薬にもなる、とな」


「……ならば、試す価値はある」

彼の口元が、歪な笑みの形に構成される。

「誰の邪魔も入らない状況で、無際限にビームを照射し続ければどうなるか、をな」


州庁、通称「ドラゴンズリーチ・ビル」。そのガラス張りの一面に、スヌープキャットは磔にされたかのように叩きつけられた。衝撃が走ってガラスが雪のように散り、500mを超える巨大構造物の壁面に、彼女を中心としたクレーターが刻まれる。


そこへ、エイペックスのサイコキネシスが組み上げた無数の鉄骨が、槍のように殺到した。「すくっ」という、極めて精妙な音と共にビル壁に刺さり続ける装置の断片は、クレーターの縁を正確になぞり、歪な鳥かごのようにその身を囲んでいく。


そして――鉄片と鉄片の間に、青白い電磁パルスが迸った。交差する光線が、彼女を封じるための絶対的な檻を編み上げる。


「ぎにゃあああああああ!」


迸る高圧のエネルギーが、獣人の強靭な肉体を内側から焼き、焦がす。全身の毛が逆立ち、体は激しい痙攣を繰り返す。やがて、その四肢から完全に力が失われ、彼女はただ、光の檻の中でぐったりと垂れ下がるしかなかった。


その凄惨な光景に、天を裂く絶叫が響き渡った。それは母の、魂そのものの咆哮。

「うちの娘にッッ、何をしとるかぁあッッッ!!!」


激昂した母と姉妹が、2条の光となってエイペックスへと殺到する。右からは、炎をまとって大気を焦がす紅蓮の彗星――ホットショット。


左からは、2振りの七支剣を体に巻き付けんばかり振りかぶって、触れるものすべてを断ち切らんとする白銀の烈風――オールラウンダー。


だが、その挟撃を前にしても、エイペックスはただ冷徹に佇むだけだった。彼の思考を占めたのは、脅威ではなく、予測とのズレに対する不快感。


「同じタイミングでのエントリー?不愉快だな、計算外の事象というのは……!」


ホットショットの炎を纏った拳と、オールラウンダーの剣が、寸分の狂いなくエイペックスの両脇に叩き込まれる。


……しかし、世界を空間ごと断つはずの斬撃の音も、すべてを焼き尽くすはずの爆炎も、ついに足並み揃えて炸裂することはなかった。


無造作に差し出された両の掌、その中心に、まるで小さなブラックホールが生まれたかのように、衝突の全エネルギーが――音も光も――渦を巻いて完璧に吸い込まれ、圧縮されていったからだ。


やがて、エイペックスの右掌にはオールラウンダーの剣気が、左掌にはホットショットの紅蓮の炎が、それぞれ完全に制御された小さな渦となって留まるようになった。彼はそのふたつの力を、まるで手の中の玩具のように弄びながら、冷ややかに結論付ける。


「――それはそうとして、スヌープキャットでないなら、いくらでも御せる」


彼は、玩具に飽いた子供のように、そのふたつの力を無造作に解放した。右掌から放たれたのは、ホットショットの紅蓮の炎。左掌からは、オールラウンダーの剣気。互いの全力の一撃が、入れ替えられ、抗う術なく相方の肉体を打ち据える。


「なっ……!?」


来た時以上の勢いで弾き飛ばされ、ビルや瓦礫に叩きつけられる母と姉妹。その姿を冷然と見下ろし、エイペックスは分析結果を告げる。


「特にホットショット、君は遠距離攻撃に徹していた方が脅威だった。家族という関係性が仇となったな。感情が行動に反映されすぎている――」


そして、その視線は、すでに次なる獲物――天を覆う紫黒のドームへと向けられていた。


「――さて、あの厄介だったミーティスも、ゴリラの姿ではどこまでサイキックを維持できるものか。……試そうか。サイ・ディスラプター、起動」


彼の言葉と同時、戦場の全域に低く不快な共振音が響き渡る。それは精神そのものを直接揺さぶる音。結界を維持していたミーティスの頭を、内側から針で刺すような鋭い痛みが貫いた。


「あっ……!」


彼女の制御から解き放たれた無数の呪符は、もはや守りの力ではない。主を失った呪詛の嵐と化し、ひとつの長大な竜巻を形成する。その渦は、生物の蠕動を極限まで誇張したかのように不気味にうねりながら、ホットショットとオールラウンダーへと襲いかかった。


「ふたりとも、逃げて!」

ミーティスの悲痛な叫びも、呪符が立てる凄まじい羽音にかき消される。紙礫の怒濤は、捕食者が顎を開くかのようにその口腔を広げ、2人へ一気に雪崩れ込んだ。


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

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https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

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