Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 01 18
「……ああいえ、法令に背いた行いは一切いたしておりませんので。ええ、火災があったわけでもありません、あくまで個人が、個人の裁量で発揮できるスーパーパワーを自宅の敷地内で試しておるだけのことなのです。
……いえいえ!本当にいつもご苦労様です。
とにかくそういうことですから。はい、それでは失礼いたしますの――」
匿名の通報を受けた警察からの問い合わせを、電話口で軽妙に切り抜けた尊は、満面の笑みで叫んだ。
「――ようできたのう、さな!お前はほんとうに150点満点じゃ!いや1億点でも足りんかもしれん!」
煙と焦げ臭がただよう庭に、黒ずんだステンレス片や砕けた灯籠が散乱する中、警戒を続け宙を舞っていたさなは、
「お母さん!」
まさに子犬の勢いで抱きついてくる母の体を、たまらぬ喜びに両腕で抱きしめ、
ふたりしてその場をくるくると回った。
「今日は風呂も一緒に入ろうな!」
「うん!」
「ああ、愛い子よ。ずぅっとこのまま、わしのそばにおってくれ」
「……なんかさ、さなにだけはいつも甘くないか?」
「髪の色一緒だし、やっぱりあそこだけ実の親子なんじゃないの?」
寺の対岸で、そっと交わされるアシュリーとおせちの囁き。
それを尊の地獄耳が逃すはずもなく、
「人にはな、性格に応じた最善の付き合い方があるんじゃ。量としての愛はそれぞれに等しく注ぐともいえどな」
さなの頭を変わらぬねんごろさで撫でまわす一方で、
放任主義で育ててきた2人には悪びれもせずそう答える。
「ふーん」
発言までにまったく迷いがなく、言葉を刻み始めてからは流暢で、しかも、端的な割に作りこまれているその弁明を、おせちはどこか白けた目で突き返した。
「よかったね、お寿司だよ!さな!」
「……あっそうだ!わたしえんがわぁ!」
はちるが、そんなさなを後ろから引っこ抜いて一家の誉れと言わんばかりお尻からかつぎ上げれば、
さなも無邪気なことに、持ち上げられた先で2重に万歳してみせた。
「……そうだ優勝だ!このままCLとリーグも取るぞ!」
「うん、とにかく優勝だね!」
アシュリーとおせちもこの肩車に続々と加担し、吉濱家の娘たちはひとつの人間梯子を築き上げたのだが、最後の娘が加わった途端、「おー!景気がいいねえ!……あっ!!!」と叫ぶはちるが小石につまずき、その全体に動揺が走ってしまった。
「うわわっっ!!」
尊が青ざめるところ、あれよあれよという間に、すべてが後ろ倒れに崩落していく。
「…‥‥うぎゃああああああ!!」
運命のいたずらに最上段を担ったおせちは、身を丸めて後頭部を庇い、しばらくの間地面を転がりまわる羽目になった。
「何をしとるんじゃ!もう呆れたのう」
機を見てから尊は、痛みにむせぶおせちをゆっくりと、まるで石畳から剥がすかのように引き起こし、
腕を引かれた彼女が、辛そうに片目をつむって立ち上がってくれば、青いプリーツスカートの尻に付いた
ハート型の土ぼこりを本人も気付かぬうちさりげなく掃ってやった。
「よーし、まあテストはこんなところでいいかの!言うまでもなく結果は全員合格じゃが、
これからこんなことをしたワケを話していくでの!」
「ワケ?……………ああわかった闇バイトだろ?内容教えてくれたらすぐ行く。
ただ分配には気を付けてくれよ、万が一ってときはそれ次第で口が緩くもなるし固くもなる」
「……ある男の話をしよう。むかァ~しの話じゃ」
長いわりに深掘りしたところで面白みは見えてこなさそうなアシュリーの冗談に見切りをつけて、尊は本題に入る。
「あっ元カレだ……」
すると今度は、はちるに後ろから抱かれたままのさなが、やたらな目のきらめかせ方をする。
「恋バナ!」
はちるも乗っかった。
「これからお父さんって呼ばなきゃいけない人?」
間もなく、おせちまでが割と真剣味のある顔でそう聞いた。
「……敵じゃ!」
尊は、娘たちの下世話な思惑を一蹴する目的の、強い前置きをしてからさらに続ける。
「……その男の名はシャカゾンビ。ホモサピエンス以外の知的生命体の解放をうたう勢力の中でも、もっとも急進的で邪悪な派閥の指導者、
ありていに言うと人類の排斥をたくらんでおる超危険人物じゃ――」
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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