issue#03 I I I I Dreamed A Dream CHAPTER 02 04
「ほぅ……!」
合成音声が、極端に低い艶やかさで空気を震わせる。だがその余裕ある響きとは裏腹に、
光学センサーの奥底では、すでに対象を「排除すべき脅威」として認定し終えていた。
エイペックスは両の掌を突き出す。表面装甲が、パズルの模範解答のごとく正確な順序でスライドし、やがて両腕の最終形――大口径のプラズマ砲門へと再構築される。金縁の砲口奥に、恒星を凝縮したかのような灼熱の光が渦を巻く。
そして放たれる2条の黄金の力。それは空中で合流し、海にかける吊り橋ほどの太さを持つ光の流れとなってイムノに迫る。
対するは、ガンブレードから放たれる特大出力の荷電粒子砲。蒼き閃光が、真正面からこの絶望を迎え撃った。
「――ッ!!」
ふたつの獰猛な力が、都市の空で互いの姿をしゃにむに食み合った。その交点では、灼熱の流れが凝縮されて、安定を知らぬ若い太陽の胚が、過剰なまでに膨らみ上がる。
その光球から放たれる熱波は、天を焦がし、地上に赤い半球状の余波を際限なく広げていく。アスファルトも高層ビルも、熱に触れた瞬間から形を失い、いずれ無残に消し飛んでいく。無人の街を満たすのは、ガラスというガラスが共振し、砕け散る甲高い悲鳴にも似た高周波だ。
蒼と金の半球が、熱量の規模をひたすら競うその境界では、凄まじいエネルギーの摩擦が、白波のような光の飛沫を絶えず撒き散らしている。
だが、その均衡は唐突に崩壊した。
「ぬぅっ……!」
不満の色を帯びたエイペックスの声と共に、彼の双子の砲口が、ついに過負荷の悲鳴を上げた。次の瞬間、砲門は溶けた金属片を撒き散らしながら先端から焼き切れ――黄金のエネルギーが逆流する。
蒼き閃光は、その反転する輝きさえも呑み込み、すべてを白で染め上げた。
火球の水面から、背を丸めた姿でひとつの影が弾き飛ばされる。ゴリラの怪人の――溶解した前面装甲、半ばまで吹き飛んだ腕。だが、ケロイド状の断面からはナノマシンの泡がその瞬間にも湧き上がり、おそろしく有機的なプロセスで欠損部を繕っていく。
微細な機械群が新たな内部構造を編み、クロームの装甲をそこに再現するのだ。
「想定以上のダメージ……兵装の完全再現までは時間がかかる。だが、私にはまだいくらでも“牙”があるとも!」
彼の意志を反映し、爆発の余波が収まらぬうちに、上空で旋回していた“牙”――自律飛行型の重火器群が、一斉に新たな標的を定めた。
編隊そのものが、ひとつの意思に導かれるかのようにひたむきな急降下の動きとなる。赤い照準レーザーの束が、生身に戻ったイムノの体表を定めきれず彷徨い、
次の瞬間、空を切り裂く無数の光弾が、あらゆる角度から彼女めがけて殺到した。
「まずいっ…!もう弾が…!」
絶望的な弾幕を前に、イムノは咄嗟に決断する。ガンブレードに装填したのは、この戦いの余りもの――ソーダ味のソイル。銃口から解き放たれたのは、
弾丸ではない。すべてを凍てつかせる超低温の氷霧だった。
「ソイルッ!」
イムノの上空に、ダイヤモンドダストのように煌めく極低温の防御幕が広がる。殺到した光弾は氷のプリズムに接触した瞬間、相次いで砕け散り、互いを撃ち落とす死の乱反射を始めた。網の目のように虚空を走る光線が、後続のドローン群を巻き込み、壮麗な連鎖爆発を引き起こした。
イムノは、上空の氷霧を、身を隠す盾としたときには駆け出している。初動の数歩は、次弾の装填を兼ねた慎重なもの。
そして――次の瞬間、彼女はまるで地球を指で弾いたかのように、その身を極超音速の域へと射出した。
景色が歪み、音が後ろに取り残される。ただひと筋のピンクの光条と化した彼女は、地上で激しい格闘戦を再開しているエイペックスとスヌープキャット、その中心へと一直線に突き進んでいった。
だが、その超高速の接近を、エイペックスの広角センサーが見逃すはずはなかった。視界の端に存在感を増す、ピンクの光条を脅威度最高のターゲットとして捕捉する。
しかし、彼の意識の半分は、なおも眼前の、ユキヒョウの獣人へと注がれていた。スヌープキャットの猛攻に、エイペックスは同じ激しさで拳足を叩き合わせていく。そして――彼女が怒りのフックを放ち、その拳が自身の顔面を捉える、その刹那。
――ガコンッ!
予兆は一切なかった。
唐突なロック解除音と共に、エイペックスの首が胴体から射出された。
「「えっ!?」」
スヌープキャットの拳が虚空をかすめ、彼女とイムノ、2人の口から純然たる驚きの声が漏れる。
その目前で、首を失ったはずの胴体は、かえって冷徹な精度でパンチのラッシュへ転じていた。
一方、基部に備わった小型スラスターを噴かして飛び上がった頭部は、空中で一瞬にして体勢を立て直す。そして、その紅蓮の眼は、極超音速で接近してくるイムノの姿を、完璧に捕捉していた。
「喰らうがいいッ!」
エイペックスの光学センサーから、2条の光線が解き放たれる。イムノは咄嗟にガンブレードを盾として突き出すが、光線はその表面をなぞるように流れ、防ぎきれなかった光が、肩や脚を執拗に、そして正確に焼きつけていく。
その力は直接的な破壊をもたらすものではない。体内に染み込み、やがては精神構造さえ変容させる「強制進化」の力だ。
回避不能の閃光に、イムノの体は完全に制御を失う。突き刺さる光に腿を突き飛ばされるかのようにして、凄まじい勢いで回転しながら地面に激突した。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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